打算な妥協
ちなみに優衣と叶のご飯は、優衣が作ってる設定です。優衣は料理上手♪
毎日欠かすことなく、登校している。
相手は勿論、蜜柑。
最近、いや厳密に言うと、優衣がおかしい。蜜柑はいつも通りだが、
優衣の事なんてどうでもいいはずなのに、何故か気になる。自分らしくもない。
私は毎日欠かすことなく、登校してるわ。
相手は私の恋人、叶。
香川さんがどういう性格かは、本当は叶は分かってない。
叶は優しいから気にしてしまうのかも知れない。
2人同時に考え事をしてると、自然と単語帳に目が行く。
よくあることだから、お互い気にしてない。
中間テストが始まるので、みんな勉強に必死だ。
テストも多いので、そこそこ勉強はしなくてはならない。
あれから、一緒に住んでる俺たち(優衣と)であるが、優衣が楽しそうにテレビを観てるのに、
何か優衣が辛そうに見える。お風呂や寝室にも入ってこなくなったし、ご飯はテレビを観ながらだから自然と会話もない。
お互いの存在が当たり前になりつつある。
「ねぇ…」
TVを見ていた優衣は何かを決めたようにこっちを見つめてきて思わず、息が止まった。
「蜜柑の事、どれくらい好きなの?」
付き合ってるみたいな言い方だ。俺は現に蜜柑と付き合ってて、優衣を少しも気にしては居ない。
親戚の女の子とも違うし、妹でもない。ただの他人が一緒に住んでる。
珍しく何か分からないものが心を過ぎったので、イラッとしてこう言ってしまう。
「俺と蜜柑が付き合ってるのは普通だろう?何で彼女でもないヤツに聴かれなくちゃいけねーんだよ」
素っ気なく突き放して、箸を進めた。
優衣は…。
「どうして、付き合ってない人と暮らしてくれるの?」
今まで狼娘だとか、馬鹿だとか思ってた少女が「女」の目線で見てきた。
不意に心を見透かされた気がした。
たどたどしく話す少女の優衣じゃないように…。
「じゃあ、お前は俺に何かしてくれるの?
蜜柑に勝てるもんがあるのかよ?へらへら笑ってるだけのくせによ」
そう言うと、箸を置いて、下を向く優衣が居た。
自分で不味いことを言ってるのは自覚してる、ただこいつも女なんだなと思ったらつい…。
「じゃあ、蜜柑よりも成績が良かったら…」
「そんなわけねーだろ」
残ったご飯をかっかっとかき集めて、飲み込んで、言葉を遮った。
多分こいつは俺に惚れてる。確信めいた物を感じてしまう。
だからこそ、側に置くわけに行かない。
一緒に楽しく住んでいた方のことが間違いなのだろう。
「や、約束して!私が勝ったら2人きりで出かけ…よ?」
「わーった、勝てたらな」
嬉しそうに頬を染める優衣が、優衣の部屋(元々両親の部屋)にお皿を洗って、戻ってく。
ついつい妥協してしまった事を知ったら、蜜柑は多分いい顔はしないだろう、でもこれで諦めてくれるだろう。
父親が娘を手放すみたいに、俺も勉強しよう。万が一でも優衣に負けないように…。
そうして、一週間、優衣は書き置きを置くようになった。
「元気…?私は朝早く起きた…ので、勉強してます。ご飯は作って置きました」とか、
「先にお風呂入った、よ。」とか、「先に寝ます」とか、「今日は先に行きます」とか、
何だか愛おしい気がしてクスクスと笑ってしまう。
自分でも分からない感情が、優衣に対して芽生えてるような気がした。
たった一週間なのに、蜜柑の家に泊まったりすることもあったし、優衣は意外と生活能力がぐんぐん上がってくようで…
今ではたどたどしく話す優衣が嘘みたいにクラスに溶け込んでいた。
蜜柑は毎日迎えに着て、髪型を変えてみたとか、今日のお弁当はどうだとか、いつもと変わらない「優衣の居ない生活」に戻っていた。蜜柑は、相変わらず勉強も頑張ってるんだろうなぁと思い。
「蜜柑も勉強捗ってるかな?僕も頑張るよ」
「ふふっ、私たち首位争いで忙しい物ねぇ。そういえば、考えてくれた?私と…
結婚してくれるって」
何かが変わり始める季節だった。
お話の展開がぐいーんと進みました~。いかがでしたか?




