番外編☆二つのクッキー
番外編を書いてみました。二つのクッキーの話です。
番外編
「なぁ、蜜柑」
そう言って叶の手が優しく私の手に触れた。
放課後、一緒に帰る帰り道、温かな春。
初めて貴方と登下校したときは、周りの目線が気になった私だけれど、貴方が側に居てくれて嬉しいの。くすぐったい、幸せ。貴方のそう言ったときの相貌。手が指の間にするりと入り込み、私たちは恋人繋ぎと呼ばれる繋ぎ方をした。
「この後時間あるかな?」
「勿論よ」
私は貴方の照れた顔を観て、香川さんに勝った!!と密かに思うの。
同じ学校で私より綺麗な女なんて居ない。ショーケースに写る私たちを見て、恋人って良いわねと思う。
叶と手を繋ぎながら、そのまま近くの公園へ行って、私は手作りのお菓子を披露するの。
2人でゆっくりと椅子に座って雑談した後、
「叶、クッキー好き??」
「…え」
何で驚くのかしら。
ガサガサ、今日調理実習で作った可愛くピンクの包装紙に赤いリボン、本命丸出しなガーリーさは私とわざと外したアクセント。
「嬉しい…嬉しいなぁあ~」
「ウフフ」
声がひっくり返るほど嬉しいのね。
「ココアのクッキーかぁ、美味しそうだね」
あれ、ココア入れたかしら?と思ったんだけど、叶の目には涙が浮かんでいる。はいあーんと口に押し込んで(何この変換は!)バリバリごっくんと、食べて、叶の涙が止まった。
「あれ、美味しい…」
きょとーんとしている。
もう一枚頂戴と、何度もおかわりする叶を見て、嬉しかった。
私はクッキーで喉が渇いただろうと思って、「ジュース買ってくるわね」と席を外し、そう言えばと思い出す。
今日、香川さんが似たようなラッピングの袋を持っていたことを。
気のせいよね??
「蜜柑、居ない?」
叶の後を付けていて、優衣は抜け駆けという単語を携帯で調べた。
優衣は、この抜け駆けを使ってみようと思うの。
ずるいとか言われてもいいもん。いいもん。
たまたま、クラス合同で蜜柑の班はクッキーでうちの班もクッキーだった。蜜柑の班は、プレーン、優衣の班はココアクッキー。
蜜柑のラッピングが、優衣の買ったものと同じに気付いた時に、この計画を思いついた。
優衣のクッキーと蜜柑のクッキー入れ替えようと!!!
メッセージも付けて!と。深い意味はない。ただ…
「優衣のクッキーをそのまま渡す勇気ない…」
ぼそりと呟き、ずきりと心が傷む。感傷ってヤツだろうか。
あれから何度も恋愛小説を読んで、学んだ。けど、よく思うけど…ベットでこの2人は何をしてるのだろう?優衣には分からない。
そうこうしてるうちに、蜜柑が帰って着てしまった!!!
2人は美味しそうにクッキーを食べて、「ありがとう」と叶の唇が動いたのを見た時、それでいいや、クッキーを食べていてくれるだけで。そう思って、私は退散することにしたの。
「じゃあ、ゴミを捨ててくるわね」
「美味しかったよ」
蜜柑のクッキーもたまには美味いんだなと、本人には聞かせられないけれど、「ん?」と気付くメモ。
「叶、いつもありがとう。お礼にクッキー、ココアだよ」
ん?何かこの書き方、優衣みたいだな。
まぁいいか、蜜柑もこんなメモ書くんだな~と言ったら、蜜柑は不思議そうな顔をしたが、蜜柑は珍しく無邪気な顔で笑う。
「蜜柑のクッキーまずいよぉ」
先に叶との同居先に帰って着て、優衣は、もう蜜柑のクッキーは食べたくないと思う。
「バター、砂糖、塩、小麦粉…何でこんな味になるのぉ~。」
そう1人で部屋でクッキーを噛み締めた。神様、これって天罰ですか???
クッキーを破壊的に作る人は居ます!!!!