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YUI~優衣~  作者: 丹
内緒話。
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番外編。蜜柑のクリスマス。

お久しぶりの番外編の蜜柑目線の、クリスマスです。

蜜柑、教師してるわ…うん。

クリスマスには、優しい恋人かのうと聖なる夜を…ケーキとツリーに囲まれ、甘い言葉を掛けられ、ギュッと朝まで離さない。そんな妄想を乙女の皆様なら一度はしたことはあるんじゃなかろうか。


何故…


何故にあたしは、こんな日も学校に居るのだろう。


教師だとしても、こんな失態は…許されない。


産休で休む、それでもある程度まで学校には通わなければならない。


目の前には、停学寸前の男子生徒もんだいじ教師あたしが対峙して、


「どうして、煙草なんて学校に持ってきたの?」


これは、あの髪の長い伝説的なドラマの再現かっ!!

と心の中でツッコミを入れながら、今の子は知らないネタだろうと口を噤む。

「更には、学校の校舎裏で吸うなんて…君は高校3年生なのよ?」

ふぅとため息を漏らす。だって、よりにもよって…旦那様かのうと過ごす結婚以来しんこん初めてのクリスマスにこんな厄介ごとを引き受けるだなんて…。


「…」

「何か理由わけがあるのよね?

貴方は成績優秀で模範的なぐらい優等生だわ。

ストレスがそうさせたのなら、先生が相談に乗るわよ?」

「蜜柑先生には分からねーよな。」

「どういうことなの?」


彼が何を言いたいか察してしまう自分は教師に果たして向いてるのか、向いていないのか。


それは数時間前に遡る。

~~~~~~~

「付き合って下さい!」

「ごめんね、あたしは結婚してるから」


校舎裏に呼び出され、何故か告白されたあたし。

それもこれで、5人目。

全員女生徒なのは、涙ぐましくなってくるぐらいだ。

「でも、先生は貴方の先生で居るから。」

「避けたりなんてしないで下さいね…?」


ほろほろと涙を零す女の子にハンカチを差し出すのも、もう5回じゃ済んでない。

お陰様で、あたしの陰のあだ名はハンカチ女王ひめ。女王と書いて姫と呼ぶ謎の通り名。


「もちろんよ」

「ありがとうございますっ!!また学校で会った時はお姉さまと呼びま」

「いいから!!それはいいから!!ほら、早く帰らないと危ないわよ?」


話を遮って優しく微笑むと、目の前の女子は目がハートのめろきゅんに変わって行きながら、「ありがとうございますっ!!」と去っていく。こんな感じで、あたしは一部の女子の「お姉さま」らしく、頭を抱える原因になってた。


おかしいな…学生の頃はそんなことなかったのに…。


あたしも帰ろうと踵を返すと、


「「あ」」


そこには、煙草セブンスターを吸う男子が居た。


~~~~~


「青山君が、何故あんな真似をしたの?」

「…ストレス溜まってたんだよ。


だって、先生が結婚しちまったから」

「ん?」

「今日もさ…何女子に告られてんだよ。危機感ないんじゃね?」


やっぱり、と思うと同時に、何だか目の前に居るのがやさぐれる当時の叶みたいで、クスと口元が歪んでしまう。あの頃も、何度も叶に、一人でホイホイ告白されに行くなって喧嘩になったっけ。


「何笑ってんだよ。」

「ううん、私も実は一度だけ煙草吸ったことあるのよ。」

「は??あんた、教師だろ」

「教師でも吸うわよ」


思わず青山君は吹き出して、涙目で笑いだす。

「マジかよ!先生、不良~」

「煩いわね」

そう、あたしは昔煙草の味を覚えた。

それは、


叶と大喧嘩して、


もう別れる!!と、


近くにあった煙草セブンスターを手に取り、


叶の前で吸った。



叶の心配する顔が見たくて、


案の定叶は、


「辞めろよ。子供に悪影響だろ!!」


と、あたしから煙草を奪う。


この人、あたしとの未来を考えていたんだ。

まだ優衣さんが好きだと思ったと言うと、

悲しそうな顔をして、


「俺はお前の全てを受け入れる。

だから、煙草は吸ってもいいけど…


俺との子供が生まれる可能性があるうちは辞めてほしい。


今だって…居るかもしれないだろ。」


それが、何だか嬉しくって、おまけに苦いキスは嫌だからお互い辞めようと言うことになった、

聖夜の夜に—…あたしと叶はそれから、お互いに前より分かり合うようになったんだった。


「あたしの旦那は、そういう人なの。

自分を苛めてるようで本当は分かってる。

俺なんていつ死んでもいいとか、

そういう面倒くさい被害妄想がないの。

あたしは、煙草吸う男嫌いなのよ。

いつ、死んでもいいとか、のたれ死んでもいいとか、

残された女の身にもなれないなら、


あたしは、青山君を恋人として見ることはないわ」


目の前に居る青山君は、はぁとため息をついて、

残りの煙草の箱もライターも全部私の前にあるテーブルに置いてから。


「分かったよ。

煙草もう吸ったりしない。


でもな、俺、また大人になったら、先生に告りに来るよ。


俺、先生の真面目で…冷たいように見えて優しいところ、気に入ってたから」


恥ずかしそうにあたしに微笑むと、イスに掛けてあったコートを羽織って、申し訳なさそうに「ごめんな」とドアを開けて出て行った。


「ちょっと酷なことしちゃったかしらね」


ふむと煙草を燃えるゴミ袋で包んでから、

携帯を見ると、ラインに一件メッセージが入ってた。


「愛してるよ。蜜柑。家に帰るの待ってる」


あたしも、ラインでメッセージを飛ばした。



「あたしも大好きよ。待っててね」


最悪だと思ってたクリスマス。

家に帰れば愛しい人。雪が降ってきて、あたしは空を眺めて幸せを噛み締める。

そして、青山君も…幸せなクリスマスを過ごせますように—…。



全ての人にメリークリスマス!!

蜜柑たまに書くといいキャラですね。教師の話また書いてみたいなぁ。

本編進めなくては…。

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