本当の優衣
優衣目線で進みます。優衣は、話が進むと、どんどん素顔が見えて来ます。
ああ、私…どうしたんだろう。
パパは小さな頃から、私をぎゅっと抱きしめて寝てくれた。
暖かくて柔らかくて…普通にお風呂だって入ってた。
昨日、初めて他の男の人と入って、何かが「パパ」と違う…と思った。
明らかに胸や足に行く目線。
パパは朗らかに「お前は母親似で可愛いなぁ。パパはこんな娘が持てて幸せだよ」と全体を見ていたのに対し、クラスの男の子や、叶は、顔や体を見て、何かを感じてるのは私だって分かってた。
パパが「叶」がいいと言ってくれたのは、それなりにじょせーけいけんがあるという事らしい。
自分でも意味がよく分からないのだけど。「まぁ、初めて付き合う相手には、それなりにいいんじゃないか?」と勧めて来て、
社長自ら仕事を放り投げて、勉強を教えてくれた。
パパが居て、ママは私を産んだとき、亡くなった。
パパはそれはもうメイドさんに「すごい溺愛っぷりですね…」と呆れるくらい構ってくれた。
同時に外に出すのを嫌がり、ママと同じようにならないよう、私は世間知らずで育った。
頭の中で変換は出来るし、勉強も出来るのだけど、どうも発する言葉や行動が…
パパに「お前の行動は難アリだなぁ」と心配されるくらい上手く喋れない。
と言うのも私は友人が殆どおらず、メイドさんに囲まれて生きてきた。
メイドさんとパパの前でしか上手く喋れない。
本当は狼娘で世間知らずだから、上手く喋れないと、勘違いされがちだけど…
私は本当は自分がそんな馬鹿じゃないことも知ってる。
私は本当は極度のあがり症で、知らない人と住むのも、学校へ行くのも怖くて今まで逃げて来た。
そんな時、猫と喧嘩をしている時に、叶と出会った。
叶は初めて「馬鹿」と言ってくれた。
私にとっては褒めちぎられ生きてきた身としては、とっても嬉しかった。
パパに顔が少し似てて、彼が私だけに「本音」を言ってくれてると感じて、
何かしてあげたくて、一緒の学校に入れれば…と頭をフル回転して勉学に勤しんだ。
保健体育の授業なんかは全く分からず、単語でとりあえず乗り越える事にした。
だっていくら説明されたって分からないんだもの。
蜜柑に会った時から、変なの。
私以外に見せる「女の子への愛情」。
何か自分が学校に入ったのが馬鹿じゃないと思うくらい、仲良い2人を見て、悔しかった。
国語の辞典で「嫉妬」って言葉を調べて、これは嫉妬なんだと思った。
ちくり、胸を刺す痛みから、じんわりまとわりつくように嫌な思い。
まるで、天気のよう。
私は蜜柑の前では、天気がざーっと雨になる。
「香川さん」
そう声をかけられ、振り返って見ると、甘い香水の良い香りと、手入れされてるであろう綺麗な長い髪が目に入った。
やだなぁと思った。
この人は私より、叶のことを知ってるんだ…と生まれて初めての気持ち。
「貴方が馬鹿じゃないことは私にだって分かる。貴方は失語症みたいなものよね、幼く見えるだけだわ」
「な、にいって…」
誤魔化してみても、蜜柑の鋭い「女の目線」は誤魔化せなかった。
「彼と寝たのよね?私だって寝たわ。貴方とは違う関係でね」
くすっと厭味の混じった笑みで笑われた。
それがどういう意味かよく分からないけど、とっても嫌だった。
「やめ…」と、止めに入るが、彼女の目は欺くことが出来ない。
「私は、貴方よりずっと前から彼が好きなの。彼の愚鈍で仮面を被って生きてるのは私も一緒だから。
彼に近づく女は本当はみんな大嫌いよ。貴方みたいに親でも使って置けば良かったわ。」
ふぅ、と目の前で色っぽくため息をつく蜜柑を見て、何だか叶が惹かれたのも分かってしまった。
綺麗、大人、艶やか、女性的。
自分と比べると、私は幼稚、子供、幼女、何て言葉が浮かぶ。
「私、彼に近づく女は嫌いって言ったわよね?とっとと去りなさい。家から出てって。」
キッと睨めば、びくっと蛇に睨まれたカエルのように息が出来なくなりそう。
その瞬間、キーンコーンカーンコーンと、始業のベルが鳴った。
「私、化学の授業だから。行かなきゃ。出て行くことよく考えておいてくれる?」
にっこり何を考えてるか分からない笑みで笑われ、馬鹿にされてる気がした。
「…私は…叶にとって…」
―相応しいのかな。
見知らぬ土地で、彼しか居ない自分…情けなくて涙が出てきたよ。
私、どうしたら蜜柑に勝てるのかな。
蜜柑もぶっちゃけちゃいましたね。そう言う子なんです。感想良かったらプリーズです!WEB拍手をどうしたら置けるのか、今まで作ったことのある元HPと勝手が違いすぎて分かりません(TT)