幸せのケーキの日。
ぐふ、甘い。甘いです。優衣目線です。
「香川さん頑張って♪」
ウキウキした足取りで蜜柑さんは私のもとから去っていく。
妊婦さんはミルクティー控えめに…とか、ぶつからないでね~とか言えるかと思いきや、今、目の前に居る玲を直視するのすら恥ずかしい。
カランカランと喫茶店のドアを引き、出て行ってしまった。
「「あ…」」
玲は蜜柑さんの居た椅子に座ると、こっちを見ないようにしていたのが分かる。私は、恥ずかしくなり、小さく縮こまって穴にでも入りたい。
「優衣、手出して」
「はい?」
ゆっくり優衣が右手を玲の方にそっと出すと、
薬指に何かカツンと固い物が通る。
その手をぎゅうっと両手で握ったので一瞬過ぎて見えなかった。
「玲、これ…」
「優衣、俺ね、ずっと怖かった。優衣が俺なんかに振り向くなんて全然考えてなかったんだ。幸せすぎて怖かった。
俺が優衣を嫌いになることは一生ないし、
こんな恰好つけの男だから愛して貰える自信が持てずにうじうじするかもしれない。優衣を抱いたとき、何で俺なんかが優衣を抱けるのかずっと罪悪感があって、優衣に裏切られるのがとても怖かった。
そんな風になるぐらいなら、親しくならなければよかったと弱気になったこともあって、
怖くて優衣を抱けなくなった。
愛してる。
愛してるから、嫌われるのが怖くなって、猜疑心や好奇心だけの感情じゃないかって疑うようになったんだ。
そんな俺でいいのなら、その指輪の答えを3か月の間で出してほしい」
玲が嵌めたのは、右手の薬指の指輪。
ルビーやサファイヤが煌めく指輪に、嬉しくて…
「何で、左手の薬指じゃないの…玲のばかぁ…」
涙が拭おうとした手の甲を伝う。必死にあふれ出る涙を止められない。
「え、まだ親との約束果たしてないし」
「玲の…ばぁか、バーカ!真面目なところも、律儀なところも、
優衣だって愛してるんだからぁ。
もう叶なんてどうでもいいもん。
玲だけが…好きなんだもん!」
わー!!と喫茶店中のお客と店員の拍手に包まれる。
気が付いたら、私と玲は喫茶店でちょっとした騒ぎになっていた。
「は、恥ずかしい…」
「優衣、俺もだよ」
目が合う。くすくすと二人で笑いあってしまう。
「え、なにこのケーキ??」
「ご婚約のお祝いのケーキです」
「「えええっ」」
ケーキまで出てきたー!!!と思いつつ、優衣と玲はその日を「幸せのケーキの日だね!」と一緒に端から食べ始めた。
ていうか、優衣恥ずかしいよ。
でも、とっても幸せだよ!!!
…ふ、お前ら幸せになれよ!…そんな風にさせておくかは、作者の気分次第だがな!!(をい)玲パパ、優衣パパ、花音ちゃんは、諦めてないと思うよ(^^)




