初夜。
優衣と玲の同棲話です。期待を裏切ると思うので覚悟して読んで下さい…。
「ふぅ…」
私は憂いを秘めたため息をついた。
引っ越しの手伝いに来た蜜柑さんと、叶と、玲の仕事仲間さん。
2LDKのアパートに無事に引っ越した時は、お互いに実家暮らしだったので、勝手が分からなくて、不動産やさんをはしごして、優衣は一緒の部屋が良かったのに、玲は別の部屋がいいと言う。
何でかな?とか、思ったけれど…
引っ越しが決まって、色んな人が手伝いに来てくれた。それは嬉しい。だから、二度繰り返した。
玲はとっても優しいし、何を不満なんだろう。
恋人らしく寝室は同じ部屋で、甘い一時を過ごしたいのに、引っ越し前にしたデートも全部お泊まりなしで、玲が何を考えてるのかが全く分からない。
その度に、優衣に優しい笑顔で、甘い砂糖菓子をかりっと囓ったみたいな甘いドキドキが私を満たすんだけど。
優衣はたまには珈琲だって飲みたいし、大人なんだからお酒だって呑みたい。遊園地、水族館、動物園、スーパー、お互いの実家。玲の清潔感が好きだけれども、たまに優衣にとっては、私を欲しいと言って欲しいと渇望しちゃうの。
「優衣」
「ひゃああっ!?」
「どうしたの?」
考え事をしていたら、引っ越しの段ボールは全部部屋に置いてあり、大きな家具はもう設置済み。そう言えば、周りに居た友人達が後はごゆっくり~と帰って行ったのも、ぼーっとして、覚えてなかった。
今夜は、一緒に棲んで最初の一日の初夜。
初夜という言葉にドギマギしつつ、
「玲、お願いがあるの…」
「ん?」
「キスして…くれない?」
最近、玲は、ずっとぎゅうっと帰りに抱きしめるだけでキスすらしてくれなかった。優衣、ずっと…本当はキスして欲しかった。抱いて欲しかった。
「何言ってるんだよ…」
顔を赤らめて、優衣が伸ばした手をきゅっと握った。
なので、合図なのかと思い、唇を差し出して目を瞑ってOKのサインを送る。その手をそっと離したと思えば、抱き寄せて、私は玲の背中をぎゅうっと握った。
でも、玲は、
「ごめん、俺、ちょっと疲れててさ」
ぱっと離れた。
「暫くはこういうの控えよう?」
「何で??優衣達、これが初めてじゃないじゃない」
苦虫を噛み潰したような苦悶の顔を浮かべて、何で今更躊躇するのか優衣には全く分からないんだ。
「俺は、今は優衣としたくないんだ。キスもその先も」
どういう事?目の前が真っ白になった。
「優衣、何かした?そんなに魅力無い?」
「そう言う訳じゃなくて…」
「優衣は、玲と常にそう言う事をしていたいぐらいなのに…」
じわりと、涙が目に貯まってくのが分かる。
悲しい。寂しい。一回知ってしまうと次がないと寂しくなる。
求められないと魅力がないと思ってしまう。
キスもないと愛されてる実感が沸かない。
「今日、優衣、もう…寝るから。明日、玲、仕事でしょ。
頑張ってね」
笑顔で武装した、つもりだった。
「泣かないで。」
「泣いてないっ!!!」
差し出された手のひらを私は思い切り叩いた。
焦る玲の顔を見られなかったし、見たくもなかった。
傷ついた顔してるんだろうな…と思いながら、立ち上がり背中を向けて優衣の部屋のドアを開けた。
どたどた、がちゃん、ばふっ。
鍵を閉めて、優衣は駆け足でベットに飛び込んで、泣きながらクッションを叩いた。
何で、どうして、分かってくれないの??
馬鹿!馬鹿!玲なんて知らないっ!!!
1人で寝る初夜は、最悪な物だった。
甘いのを期待してた方すいません。玲君にも事情があるのです…今後そちらも段々分かると思うのですが、温かく見守ってあげて下さい!!反応が怖いです。




