縮む距離感。
優衣の葛藤が優衣本来の賢さにリンクしてればなぁと思います。
カツカツ…
ヒールの靴が二次会の飲み会の場所と正反対に響く。
もう優衣、蜜柑の幸せそうな顔を真っ直ぐ見つめることが出来ない。
羨ましい。妬ましい。写真を撮った時は不思議とカメラのレンズは貴方に恋するように綺麗に叶を撮っていた。レンズ越しに観る貴方は誰よりも格好良くて。横にいる貴方の伴侶に、訳が分からない心をかき乱される。
叶を想って、このまま綺麗なドレスを纏ったまま、どこかへ行ってしまおうか…遠くに行きたい。二次会に出るつもりだった。叶さえ観ていれば「隣の本命彼女」を観なくて済むから。
貴方が結婚する前からずっと好きでした。
暗い夜空に星と満月が私を照らす。
上ばかり観ていると、足下を観ていなくてガクッと体が揺らいだ。
転ぶ!!そう思って、きゅっと目を瞑ると、温かで大きな腕に抱きかかえられた。
「危ないでしょ、どこ観てんだよ」
言い方が叶っぽい。でも、叶はこんな風に言わない。そう思って「ほぇ?」と私の顔を覆う影を見つめた。
玲は少し心配そうな、余裕のない瞳で私を見つめている。
「このままがいい?優衣」
「え」
「このままでいいけど、胸が当たって気持ちいいね」
そう言われて冷静に胸を観れば、支えるときに腕が胸に絡みつくような感じでちゃっかりとその腕には優衣の胸がすっぽり覆っていた。
「や、やめてよっ」
「どうしようかな~」
この人意地悪だ!!余裕のない顔から一転、さっきの表情は気のせいかと言うぐらい、ニコニコしている。
「沢山の女の子の触ってるでしょ!」
どんと突き飛ばして、逃げようかと思った瞬間、ふわりと留めていた大きなピンが落ちてしまう。あれは美容室の借り物だから落とすわけにはと思って、慌ててしゃがんで暗闇の中1人でピンを探し始める。
「優衣、俺、胸なんて興味ないよ」
玲もしゃがんで、ピンを探してくれるようだ。
「優衣が、優衣にしか興味ない。信じて」
きゅっと手を暖かいぬくもりで包まれる。
「おまじない」
そう言うと、さり気なく手に何かが握られた。
ピンを渡したかったのかな?と思い、手のひらを開くとやっぱりヘアピンが手のひらに乗っていた。
「叶の事を忘れますようにって、俺からの念込めとく」
「…」
「ここは笑うところだろ~」
明るい人懐っこい笑顔。最初の余裕のキスマークをつけたときの顔はどこに行ったのやら。この人社交的なんだなと素直に受け取ることが歪んでた優衣の蜜柑への嫉妬の事を少し和らげてくれた。
この人を好きになりたい。
何も知らないのに?
これから知ればいい。
そう思い、優衣は気が付いたら玲に抱きついていた。
「何すんの、優衣。意地悪しちゃうよ、そんな期待させられたら。」
「…」
「…あのね、本当に離してくれないかな」
きっと玲は困ってる。聞こえてくる心臓の音が優衣なのか玲なのか分からないぐらいの早鐘のように鳴っている。
「離さない」
「…じゃあ、もう君は俺の物だよね?」
「分かんない」
苦笑いして、ハァと玲は色っぽい吐息を耳に掛けて来た。
ビクッと体がビクンと動いたのを同時に、玲の手が左手が腰に回され、片方の手が優衣の頬に添えられた。
―このまま、忘れられれば。
そう思い、この流れを利用してやろうと思った。
玲の顔との距離が少しずつ縮んでく。優衣はこれからどうなるんだろう。
いやーんな展開にはなるんでしょうか?キャッ(コラw)叶目線で書くのは先延ばしにしました。




