9話「家を作るためには?」
大変お待たせしました><
最近もう一つの小説を書くことに嵌ってしまいまして……
暖かな日差しを顔に受け、意識が沼の底から這い上がってきた。
眠たいけど、さすがにこんなところで無駄に寝るもんじゃないしな。
意識が幾分戻ってきたところで気づいた。
さっきから頬がペロペロと舐められている。
子猫たちが起こそうとしてくれてるのかな?
そう思ってゆっくり目を開ける。
そして目の前に飛び込んできたのは………………ミリーだった。
「なにやっとんねん!」
「ふみゃ!」
エセ関西弁で突っ込み、ミリーの頭をチョップする。
ミリーは変な鳴き声を上げながら頭を抑えた。
「みゅー……勇太のいじわる」
「人の顔を舐めといてよくそんなことが言えるな! 子猫ならまだしもお前はアウトだ!」
頬を膨らませたミリーをしかる。
そんなことをしていたら完全に意識は覚醒した。
俺の叫び声に反応して子猫たちものそのそと起き上がる。ヒアは子猫たちを起こさないようにとずっとジッとしていたようだ。
子猫たちは起きると胡坐をかいて座る俺の腿などに乗って頭を擦りつけてくる。
ヒアも子猫たちがいなくなり、こちらにきたので、俺は腿に乗っている子猫を撫でながら話しだす。
「さて、これからどうする?」
「勇太、ざっくりいったね」
うん、ごめん……
ミリーに言われ、俺は素直に謝る。
コホンと咳払い一つして言い直す。
「言い換えるね。これから住みかとか食料とかどうする?」
すると今度はヒアが鳴いた。話すときくらい人化して話せばいいのに。
なんて思っていると、もう一度鳴いた。そしてミリーが通訳。
「えっとね、『人間の状態だと上手く力が出せないから危険なの』だって」
「俺の心を読むなよ」
静かに突っ込んだあと、俺は続きを催促する。
「確かね、『住みかは森でも十分出来るし、食料なら森の果物とか生き物を食べればいい』だって」
確かってお前……
俺はそう思いながら嘆息する。
ここで暮らすってちょっと不便だろ。
いや、ちょっとどころじゃないわ。
トイレとかさ。トイレは今のところ茂みで済ませている。大の方はキレがよくて拭かなくても良い感じだ(汚い)
あとは、ほら衛生面的にもあまりよくないしさ?
そうなるとやはりどこかの村とか町とかさっきみたいな城下町とか……
村と城はなぜか追い出されたからダメだな。村では石を投げられ、城では衛兵を呼ばれて散々だったし。てかこの調子だと町も無理か。
「はぁ……本当にここで暮らすしかないのかな?」
俺は大きなため息をついてうなだれた。
子猫たちが俺を慰めようとうなだれて下がった顔を舐めようとしてくれている。もう! こいつら可愛すぎ!
毛がそこまであるわけじゃないのでモフモフは出来ないが、抱きしめる。
「それじゃ、ここに家をつくろー!」
俺が観念したと思ったミリーは立ち上がって右拳を空に突きあげる。立ち上がったときにブラウン色の髪がふさーっと風になびく。
全く、こいつはいつでもテンション高いよな…………って家?
俺は確認のためにたずねた。
「家を作るって言ったか?」
ミリーは俺を見るとニコッと天使のような微笑を浮かべて答えた。体が天使じゃないが。むしろ女神だが。
「そうだよ! だってここに住むんでしょ? じゃあこれからいろいろ作らないとね!」
そう言ってミリーは、やるぞー! と意気込んで走り回る。ガキか。でも、ばいんばいんはばいんばいんしている。
まあ、確かに住むなら家を作らないといけないがな……
正直言って無理だろ。俺に建築の技術なんて皆無だし、そもそも道具がないだろ。……ヒアなら木をへし折るくらい出来そうだが……
じゃなくて、今は馬鹿を止めなければ。
「おい、ミリー……」
と言いかけたところで遮るようにヒアが鳴いた。
ミリーもその言葉に耳を傾けて動きを止めた。
そしてそれを聞くと、へぇ~、と言ってニコニコしだした。
俺は何がなんだか分からないので聞くことにした。
「何を言っていたんだ?」
「あのね、ヒアがね、『家を作るならドワーフのところに行ったらどう? 冒険者がドワーフの技術力はすごいって言ってたから』って言ってたの。だからそのドワーフって人のところに行こ!」
ミリーはそう言い放つと座っている俺の腕に抱きついて立ち上がらせようとする。
「おい! 子猫たちが……」
と下を見たら腿に乗っていた二匹の子猫は俺の服に爪を引っ掛けてぶら下がっていた。…………この必死な感じがたまらんな。
俺は鬼畜なわけでもないのでちゃんと子猫を服からはがして地面に降ろした。
ちなみにミリーは俺が子猫を降ろす間は離れていたが、降ろし終わった瞬間にまた抱きついてきた。おま、お前が抱きつくといろいろ危ないんだよ! 主に俺が歩きづらくなる(意味深)
と、そんなことでもたもたしているとヒアがさっきよりも少し大きな声で鳴いた。
「『早くして』だって」
言われなくても分かります、はいすいませんでした。
なんとなく怖かった俺はヒアに謝りました。いや、あんなでかい肉食獣に睨まれたら謝っちゃうでしょ。
「ま、とりあえず行きますか」
なんかいろいろ大変そうだけどなんとかなるでしょ。ドワーフには嫌われたくないな…………家が作れなくなるし。
俺はそんなことを考えながらミリーと子猫たちを一匹一匹ヒアに乗せていった。ヒアは乗るときにはなにも言わずとも伏せてくれるのでありがたい。てか、隣でミリーが、初めての共同作業……とか言ってた気がするが気のせいだと思う。猫がなんで共同作業とか知ってんだよって理由で。
そして最後に俺たちが乗って出発する。なんかヒアが乗り物みたいな言い方だな。実際そんな感じだけど。
座っている順番は一番後ろにミリー。若干息が荒くなっている気が……
次にミリーに抱きつかれている俺。ちょ、ミリーさん、俺の背中であなたのものが大変なことになってますよ!
そんで俺の股の間には子猫たちが振り落とされないようにヒアの背中の毛に爪を立てている。でもヒアの毛が硬いからか、なかなか引っ掛からない。…………だから俺のズボンに爪を立てるのは止めてくれ。特に真ん中はアウト。死んじゃう。ナニが。
上がこんなカオスな状況になっているにも関わらず相変わらずの速さで走るヒア。背筋をまっすぐにすると風圧で飛ばされかねないので少し前屈みになっている。多分今の俺の髪型は風でオールバックになっているだろう。
目も開けているとすぐにカラカラになりそうなので細めている。細めた視界に映る景色はどんどん変わっていく。木々がものすごい速さで視界の端へと移動する。これ、列車かなにかの間違いかな?
しばらくすると急に視界が真っ白に染まった。
しかし、それは一瞬のことですぐに視界は戻ってきた。
どうやら森の外に出たようだ。
俺はヒアに、少しペースを落として、と大声で言った。
大声で言ったからか、ちゃんと聞こえていたようで速度が緩まる。動き続けて入るが。
徐々に体が受ける抵抗も少なくなっていき、体を伸ばせるようになってきた。
それに合わせて目を開けていく。そして現れた光景は……
「……崖じゃん……」
目の前にはゴツゴツとした岩がいくつもあり、まるで取っ掛かりのように崖にくっついていた。
ヒアはここにきてなにをしようというのだろうか?
そう思い左右に視線を巡らす。さすがにここが目的名わけが……
「……とりあえず左右に変わった所は見られないね……」
え? 嘘? ここ登るの?
こんなところ登るのなんて仙人とかじゃないと無理だろ。背中に重さ五十キロの甲羅を背負った仙人とか。
と、いろいろ恐怖を感じているとヒアがまた速度を上げ始めた。
「え? 待ってよ、まだ心の準備ぬあああぁぁぁぁあ!!!! 壁が! |壁が迫ってくるぅぅぅぅぅうううう!!!!!!!!」
俺は情けなくも大声で喚き散らした。
ミリーは後ろで、あはははは勇太怖がり~、などと暢気に言っている。このやろう!
そして壁まで残り数mといったところで体がヒアに押し付けられる様に力が加わった。
え? と思い見渡すとなぜか森が俺より下にあった。
子猫たちが爪をがっちりと立てて腿が痛いが、それよりもこの状況に頭が追いついていない。
俺が呆然としていると一瞬の浮遊感を感じ、また体が下に叩きつけられるような感覚を感じた。
ああ、あまり認めたくはないけどこれはあれなんだな…………
「俺は今仙人になってるのかな……」
俺の呟きは強い風によってかき消され誰にも聞こえることはなかった。
お気に入りに入れて読んでくださっている方ありがとうございます!
こんな感じで遅々として進みませんが、頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
次は一週間以内に出せるようにしたいですな。