8話「子猫たち萌える」
かなり遅れてしまいました><
檻の中には真っ黒な毛をした子猫のような動物が五匹いた。
全員酷くやつれており、目がうつろだ。
子猫たちは全員固まって丸くなっている。が、目だけはこちらをしっかりと見ていた。
俺はヒアに檻を開けれないか聞いてみた。
「ヒア、この檻開けれないか?」
ヒアは獣の姿のままコクリと頷いた。
普通はあの馬車の中から、または商人らしき人物の中から探し出せば良いのだろうが、正直近寄りたくない。完全にトラウマだこりゃ。
ヒアは子猫五匹にしてはやたらとでかい檻の前に立った。
地面から頭まで二、五mほどあるヒアと同じくらいの高さの檻はヒアでさえも入れれそうなほどに大きかった。
そしてヒアは無造作に右前脚を振り上げると横になぎ払った。
鉄の棒を鉄の板で挟んだ、オーソドックスな檻の鉄の棒が一面消え去った。ちぎれた部分はまるで鋭利な刃物に斬られたかのようにすっぱりとしていた。
だが、子猫たちは動こうとしない。もう自由になれるというのに。
俺はなんとなしに檻に近づいた。
鉄の棒が消え去った面の手前に来るとしゃがみ込む。
「おいで~」
軽く指を曲げて掌を上にむけて、子猫たちを呼ぶ。
全身真っ黒な子猫たちは、そのまだ丸っこい三角の耳をピクッと動かした。
お、これはまた懐いてくれるかも……
ベロン
「うわぁ!」
俺は突然顔の右側が何かに舐めらたことに驚いて左に倒れこんだ。
俺はベトベトになった右側の頬を何も着ていない腕で拭ってそいつを見た。
「やっぱりお前かよ!」
ヒアは俺に怒鳴られたのに、嬉しそうに鳴くと倒れた俺をペロペロと舐めてくる。
全く……
俺は仰向けに倒れたまま、頭を少し上げてヒアを見る。
そして右手で顎を、左手で頭を撫でてやる。
ゴロゴロと喉を鳴らして気持ちよさそうに目を細めるヒア。あれ? こいつ黒豹とか言ってなかったっけ……? ま、いっか。
「ヒアはちょっと待っててな」
俺はひとしきり撫でたあと、起き上がってヒアに待てと命令した。
ヒアは両前脚を前に伸ばし、後ろ足は曲げて伏せの状態になった。犬か。
俺は改めて子猫たちの方を向いてしゃがむ。俺とヒアの様子を見たからか、あまり警戒せずに寄ってきた。
俺はジッと動かずに子猫たちが来るのを待つ。そうだ俺はナ〇シカだ! いや、主人公はナウ〇カって名前じゃなかった気がするが……
と、思いながら待つこと数秒。子猫たちが俺の差し出した右手の目の前に来た。
しばらくジッと子猫たちは俺の手を見ていたが、唐突に一匹が頭を近づけた。
「っ!」
そのとき鋭い痛みが指先から伝わった。
一匹の子猫は俺の指に噛みついていたのだ。しかも結構深く抉られてる……
でも、ここは我慢だ! あのナウシ〇だって我慢したら懐かれたじゃないか!
待つこと五秒ほど。
子猫はチラッと俺の方を見る。俺が優しく微笑んでやると(実際は脂汗ダラダラの苦悶に満ちた表情をしていたらしいが)子猫はそっと噛むのを止めてくれた。
そしてペロペロを結構深く抉られた傷口を舐めてくれたではないか!
さすが〇ウシカ効果。ジブ〇最高!
ひとしきり舐め終わると今度は違う子猫が俺の手に頭を近づけた。
「っ!」
それから俺はこの拷問を三回も受けて指五本にきっかりと傷跡を残されたのだった。
さて、なんかいろいろ飛んでたけどどうしようか。特に……
「うっ…………」
見るだけで吐きそうになる惨殺された死体たち。
なんか死体って言うと気持ち悪くなるから呼び名を決めよう。
あそこに転がってる四肢をもがれたのとか『ダルマン』とかよくない? …………よくない。
おふざけはおいといて真面目に考えよう。
これを放っておいたらどうなるか。
1、近くの城の衛兵に見つかる。
ここから城までは結構な距離があるけど、このライトグリーン一色の草原に赤色があったら目立つよね。
そしてそこにいる俺らが自然と犯人となり……
この場合は逃げればOKなんだけどね。でも俺の良心が痛む……それになんだかんだで見つかりそう。さっき門にいた兵士に目撃されてたし。
2、このまま魔物に食われる。
見渡す限り魔物はいないが、多分すぐにでも寄ってくるだろう。さっきヒアに聞いたら、…………くる、って嵐が来るのを予言する人みたいに言ってたから来るのだろう。
この場合俺は普通に逃げればOKなわけだ。ただ、魔物がいなかったり衛兵が先に見つけたらアウトだ。
3、燃やす。
まず火がない。
荷物があった馬車を調べたけど、飲み水と食料と宝石しか入っていなかった。
よってボツ。
4、自首する。
ありえない。ボツ(さっき良心が~、とかほざいてたくせに何を言うか、と自分で思ったよ)
…………なんか『放っておいたらどうなるか』から『どうするか』に議題が変わっていたな。
ま、それはともかくどうしようか。
しばらく考えた後結論は出た。
「やっぱり逃げるか」
俺は獣化しているヒアの背中に子猫を五匹とも抱えて飛び乗り、走らせる。もちろんミリーも乗っている。なぜか俺の腰に抱きついているが。
それにしても子猫は可愛いな~。
俺は颯爽と草原を走るヒアの背中で子猫を撫でながら思った。
今子猫たちは俺の膝の上に乗っている。ヒアの背中は驚くほど振動が少なく、幅も広いため胡坐をかいても落っこちる心配が少ないのだ。
だからミリーが俺の腰に抱きついて頬をスリスリする必要性は感じられないのだが……ま、可愛いから許すけど!
それにしても癒されるわ~。
子猫たちは俺が頭を撫でると俺の見上げて気持ちよさそう目を細める。
時々ゴロゴロと喉を鳴らして俺にスリスリするときなんて俺の中のなにかが弾けそうだった。
でも撫でているうちに気づいた生々しい傷跡を見た時はちょっと胸が痛んだ。可哀想に、これからは俺が育ててやるからな!
なんか捨て猫を拾ってきた子供みたいな感じで俺は和みに和んでいた。
「そういえばどこに向かっているんだ?」
俺がふと思い口に出すとヒアは減速して立ち止まるとなにかを言った。
いつもどおりミリーに通訳を頼む。
「え~っとね、『わからない。なんとなく進んでる』だって~」
「なにっ!?」
俺の突然の大声にビクッとなってしまう子猫たち。ごめんよ~。
ってそりゃそうか。俺どこに行くとか何も言っていないしな。ヒアもここらへんの地理なんてわからないだろうし。
てかここどこだ?
辺りはいつの間にか暗くなってきており、オレンジ色の夕日はもう見えない。
周りには鬱蒼とした木々が並び、視界が狭い。
風が吹くと、木々はざわざわと騒ぎ出し雰囲気をかもしだしている。
鼻から入る冷たい空気がブルッと俺の体を震わせる。
くそ、子猫に夢中で辺りの変化に気づかなかったか。これが萌えの恐ろしさ……
と、そのときギュッと腰を締められた。
「勇太……なんか怖い……」
ミリーの怯えた声が聞こえてくる。
そっか、ミリーは猫の時暗闇にいるのが死ぬほど嫌だったしな。夜にコンビニに行こうと電気を消したらありえないほどの声で叫んだんだよな。猫なのに。
そんなことを思ってミリーへと振り向くと、あまり恐がっている表情はしていなかった。
「ミリー、怖いって言ってるけどあまり怖そうに見えないぞ」
俺がそう言うとミリーは俺を見上げ、
「勇太がいるから少しは大丈夫なんだよ!」
と元気に言った。
チクショウ……なんか今のでノックダウンしそうだった。
ちなみに今のミリーの状態は、オットセイのように上半身を反って俺の腰に抱きついている状態だ。
その状態で見上げられると…………ウホッ!
…………ゴホン。さて本当にどうしようか。
能天気な性格のせいか、本当になにも考えていなかった。危機的状況に追い込まれないと俺の脳は働いてくれないのだ!
まあ、あの商隊からぬすん……頂戴したおかげで食料と飲み水は数日分くらいならあるから大丈夫だろう。
……なんかフラグが立った気がする。
よ、よし! まずはどこかで野宿しよう! 今夜はもう寝たい。あんなことがあったし。
それから俺たちはすぐに降りてヒアに寄り添って寝た。火がなかったけど、暖かかった。
全然続きが思い浮かばず四苦八苦してたら二週間以上間が開いてしまいましたσ(^_^;)アセアセ...
相も変わらずまた続きが思い浮かばないですが暖かい目で見守っていてくださいm(_ _)m
こっちは進まないけど、新しく書いているほうは結構進んでいます。
まだ投稿していませんが、投稿したときはよろしくお願いしますm(_ _)m