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7話「人殺し」

 気絶から回復した俺は改めてヒアに、服を抑えてくれ頼むから! と土下座までして頼んだおかげでちゃんと服を抑えて歩くようになった。

 結構な時間歩いているとようやく門が見えてきた。

 まあ、入り口は隣の少し大きめの扉っぽいけどね。

 俺らは歩いて近づいていく。

 膝を隠すくらいのコートを着て俺に抱きつくミリーと、秘部が見えるか見えないかのギリギリのラインを保っているヒア。そして上裸の俺。

 少々大きめの扉の前にいる門番さんは警戒心マックスで腰に差してある長剣を抜刀した。

 

「お前ら何者だ!」

「いやいや! 警戒心強すぎでしょ! 俺ら怪しいものじゃないですよ!」

「誤魔化すな! そんな格好をして怪しくないわけがない!」


 いつも思うけど人に、何者だ?! って聞いといて、怪しくないですよ、って言うと、嘘をつけ! っていうやつなんなの? 

 それならいっそのこと、そこの怪しいやつ何者だ?! って聞いてくれたほうがいいわ。

 と、門番さんを見てみる。

 鼻の下をだらしなく伸ばして構えも隙だらけになっている。おいおい訓練を受けている国の兵士じゃないのかよ。

 まあ、いいや。俺は作ってあった設定を門番に説明する。


「実は俺たち無の森で迷ってしまって……」

「嘘をつけ!」


 あらま、もうバレた。

 そして更に警戒心を高める兵士さん。

 もうだらしなく鼻を伸ばしたりしていな…………構えに隙がなくなった!

 と、思ったら兵士さんは急に大声で叫び始めた。


「至急応援よろしくお願いします! 門の前にて怪しげな三人組を見つけました。どこの者かも分からず……というかこいつは絶対入れてはなりません!」

 

 最後は完全に俺を見て言ったよね?

 てかそもそもどこの者かも分からずってお前聞いてないじゃん。

 俺は少しだけ距離をとり(バレないように少しずつ)万が一斬りかかって来たらヒアを獣化して逃げれるくらいの距離を作っておく。

 

 そしてしばらくしたら、開門! と大きな声がして高さ五mはあるかという城門が開き始めた。

 

「ヒア、獣化して逃げるぞ」

「……うん。分かった」


 俺たちは獣化したヒアの背に乗って王国を迂回して通り過ぎたのだった。

 





 俺たちはしばらくヒアの背中に乗り疾走していた。

 ある程度城壁から離れたところで速度を落とした。

 俺とミリーはヒアの背中に乗ったままだ。俺は少し考えていた。

 いくらなんでもあの対応は酷すぎないか? 確かに俺たちの服装を見れば怪しい。

 が、これは盗賊に襲われたからと解釈……出来ないか。

 盗賊に襲われたらこんな可愛い二人が見逃されたりするはずがないもんな。

 でも、さすがに身元も聞かずに、怪しいやつ、は酷くないか? しかも絶対俺を見て嫌悪していたし。

 

 俺が、あ~! と頭をくしゃくしゃとした時服の裾をクイッと引っ張られた。

 ヒアは獣化しているし、ミリーだろう。


「ミリーどうかしたか?」

「遠くにあるあれ……」


 ミリーはいつになく張りのない声で正面を指差した。

 ここは草原なので遠くまで良く見える。

 俺は目を凝らして見る。と次第にあれがなにか視認出来るようになってきた。

 一つの大きめの馬車に、その後ろには車輪がついた鉄と思われるもので作られた大きな檻があり、中に数匹の動物がいた。周りには護衛らしき人たちが数人いた。

 動物は全員子供なのか、小さくて可愛い。

 あれ? なんでこんなに見えるんだ? と思ったらヒアが俺に気を使ってスピードを上げていたようだ。こんなに乗り手に気を使えるってすごいな。

 動物たちの姿がはっきりしてくる。

 黒くて猫のような感じに見える。

 俺はヒアに、ストップ、と言う。

 ここは草原だし、いくら遠くてもヒアみたいに真っ黒なのがポツンとあれば気づかれる。

 多分向こうもヒアに気づいて戦闘準備でもしているだろう。

 だから俺は、あいつらを大きく迂回して、と言ってやり過ごすことにした。可哀想だが仕方ない。俺はどうすればいいのか分からない。力もないから力ずくも出来ない。

 だが、ヒアは首をこちらに向け、目もこちらを向け俺を見る。

 何を思ったのかヒアが鳴く。

 俺はミリーに通訳を求める。


「えっとね、降りてって言ってるよ」


 なぜだ? 

 という疑問はおいといて俺は地面に降り立つ。高かったからちょっと怖かった。

 と、俺とミリーが降りた瞬間ヒアの姿が‘ブレた’。

 

「え?」


 と間抜けな声を出していると悲鳴が聞こえてきた。

 悲鳴のほうへと視線を向けると護衛の人が血を噴出して今倒れるところだった。

 そのすぐ側には獣化したヒアの姿があった。

 え? 数秒でそこまで? いやそれ以前にヒアは人を…………

 俺が放心状態に陥っているとミリーが声をかけてくる。


「ほら、行くよ! 動物を助けなきゃ」


 そう言って俺の手を引く。

 俺はわけも分からずミリーについていく。


 距離は百mくらいだろうか。今俺は走っている。この距離をヒアは一瞬で移動したのか。すごいな。

 そして数十秒後、人が数人倒れている馬車の近くへとたどり着いた。

 俺はこの光景を見て絶句した。

 腹を鋭いもので引き裂かれたり、腕を肩口まで食いちぎられてたりして死んでいる人が何人もいた。残っている部分から護衛でついていた人と思われる。

 と、ヒアが俺の前に現れた。

 その黒い毛並みは足元のみ返り血でわずかに赤く染まっていた。

 俺はヒアから漂ってくる脳を打たれるような匂いと脳裏に焼き付いて離れない光景で嘔吐してしまう。

 ミリーが背中を撫でて、大丈夫?! と焦っていた。

 やばいこれはトラウマ確定だ。

 俺はこんな状況でもそんなことを考えていた。いや、こんな状況だからか?

 

「ミリー、大丈夫だ。それより早くここを離れたい。ヒアはその動物が入った檻を持ってきて……ぅぷ」


 俺は吐きそうになるのを必死に抑えながら喋った。

 そしてすぐさまその場を離れる。

 遮蔽物のない草原はすぐさまこの匂いをどこかへと持っていく。

 が、俺の脳と鼻は先ほどの匂いと光景がこびりついている。


 しばらくしてある程度離れた場所で落ち着きを取り戻した俺はヒアの持ってきた檻の中を見つめていた。






 うわ~、どんどん続きが書きにくくなっていく~……

 サブですが、ちゃんと完結できるように頑張ります!



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