18話「子猫たちの存在……」
熊さんたちがどんどんと近づいてくる中、ヒアはどうやって蹴散らすのだろう、と思い俺はヒアに目をやる。
そしてヒアを見た俺は固まった。
ヒアは欠伸して寝ようとしていたのだ。
「あの~…………ヒアさん? おねむですか?」
俺の戸惑ったような声での問いにヒアは何も答えずに目を閉じた。
…………あるぇ? 大丈夫とか言ってなかったっけ? めちゃくちゃ余裕ぶっこいてるよね? 俺大丈夫なんだよね?
肩に頭を乗せて俺に体重を預けているミリーの存在も忘れて俺はヒアをポカーンと見る。その間にも熊さんたちは近づいているというのに。
「グルァア!?」
俺は放心状態に陥っていたが、突然の叫び声で現実に戻された。
叫び声の主はもちろん熊さん。いったい誰が……?
と、思ったところで熊さんの周りを何かが黒い残像を残して飛び回っているのが見えた。残像だけどね。
それは結構な数がいて、黒い残像が見えるたびに熊さんの体は切り裂かれ、少なくない血が流れる。
「グ、グルァ……」
そして一匹が倒れた。
ここで俺は熊さんを倒した者を目にできた。
「子猫?!」
倒れた熊さんの上には小さな五匹の子猫が堂々と立っていた。
え? マジで? あの子たちそんなに強かったの? てか今までラルルのインパクトが強くて存在忘れてたよ。…………テヘッ。
残りの熊さんたちは仲間が一匹やられたことで足を止める。うわぁ、この距離であの大きさの熊にこの数。めっさ威圧感パネェッス。
子猫たちはドヤッとして(雰囲気的に)またも黒い残像を残して跳んだ。おー、あれなら攻撃を受けたとき、残念それは残像だ、みたいなのできるかも?!
黒い残像はそれぞれ一匹ずつ相手をするようだ。五匹の熊さんから血が流れ始めた。
しかし、熊さんはまだ四匹いる。
攻撃を受けていない熊さんたちは少し迷ったような雰囲気をかもし出したが、俺らを狙うことにしたようだ。ドスドスと走ってくる。ギャー! 振動とか尻に伝わってるって! プルプルしてるって!
「んみゃ~…………うるにゃいにゃ~…………」
「あ、ミリーちゃん起きたですか?」
俺の肩に涎の後をつけて起き上がったミリーは猫のように手の甲で目元をこする。こいつ無意識に、にゃ、をつけてるな。起きてるときはずっと我慢してたのか? 俺が言うなって言ったから。別につけてもいいって言ってあげようかな?
ラルルは起きたミリーに気づいて声をかける。この子はミリーのことをちゃんづけで呼ぶんだな。てかミリーのこと呼んだの初めてじゃね?
って意識が逸れた! しっかりしろ、俺!
……いや、でもこいつら全然危機だと思ってないし……俺がおかしいのか? いやいや、あんなでかい熊のあんな鋭い爪に切り裂けられたらひとたまりもないだろ。普通に死ねるだろ。
うん、俺は正常。大丈夫。この二人の頭がちょっとトんでるだけ。
俺はいつものことながらパニクってる頭を目を瞑りながら無理やり冷やす。
…………よし、ちゃんと考えられるぞ。んで、熊さんたちは…………
俺が落ち着いたところで目を開き、熊さんたちを視界におさめようとした。
しかし、俺の目に映るのは血をダラダラと流しながらやたらめったらに腕を振り回す熊さん五匹のみ。
あれ? こっちに来てた四匹はいずこへ?
と、振り返って後ろを見たところで固まった。
「…………ヒアさん。見事な仕事っぷりです」
そこには、四匹の熊さんを四肢でそれぞれ踏みつけ、悠々と立つヒアがいた。熊さんの首は全て綺麗になくなっており、近くに転がっていた。ほかに傷もないことから首を一瞬でスパッといったのだろう。相変わらずハイスペックだなぁ。
「そろそろ終わるのです」
胡坐をかく俺の上にすっぽりと納まっているラルルが子猫たちの戦いがそろそろ終わることを教えてくれる。あ~、可愛いな~。
言われたので子猫たちの様子を見てみれば、確かにもう終わりそうだ。熊さんたちの振り回す手に力はなく、酔っ払いのおっさんのようだ。足元には血溜まりができている。
そしてとうとう限界がきたのか一匹が倒れた。
それにつられるようにまた一匹、一匹、と倒れていく。
それぞれの熊さんの上にはしっかりと四本の足で立ち、強者の風格を携えた子猫たちの姿があった。一番最初に倒れた熊さんの上にいる子はどことなく誇らしそうに。それ以外はどことなく悔しそうに。
…………とりあえず危機は去ったんだな。
「ふぅ~…………」
俺の心の中のやり取りでは全く緊張感がないように思えるが、実際はかなり精神的にくるものがあった。
強張っていた全身の力も抜け、息が自然と吐き出される。
「どうしたの、ユウタ?」
「どうしたのですか、お兄ちゃん?」
そんな疲れた様子の俺にミリーとラルルが心配そうな顔で聞いてくる。幸せ者だなぁ、俺。こんな美少女・美幼女に心配されるなんてなぁ。
俺はいたって元気だという顔を作り、
「なんでもねぇ。さ、家作りの続きしようぜ。俺も暇だし手伝うわ」
「りょうか~い」
「はいです!」
俺が笑顔に戻ったことでミリーたちも笑顔になってくれた。こんな俺の笑顔で笑ってくれるならいくらでも笑えるな。
そして俺は、よいしょ、と立ち上がろうとする。が、
「おっと、お前らか」
俺が立ち上がろうとしたら、足元に子猫たちが集まっていた。あぶねぇあぶねぇ、踏むとこだったわ。
子猫たちはそれぞれ、どうだ、といわんばかりに胸を張って尻尾をクネクネと動かしている。可愛い豹耳も小さくピクピクと動く。
俺は子猫たちの頭をそれぞれ撫でてあげた。
「よ~しよしよし、よくやってくれたなぁ。お疲れ様。休んでていいからな~」
顎のあたりを撫でてやるとゴロゴロと鳴く。ちょ、それは猫だろ。
俺は心の中で苦笑しながら撫でているとヒアの鳴き声がすぐ横から聞こえた。
そっちを見ると、ヒアがなにかを訴えている目で俺を見ていた。
「ん? どしたの?」
俺が子猫を撫でながらそう聞くと、ヒアが立ったまま頭だけを下げてきた。
ん? …………そうか、ヒアも可愛いとこあるなぁ。
俺は子猫たちを撫でるのをやめ、立ち上がりヒアの頭と顎を撫でてやった。
ヒアも気持ちよさそうに目を細めてゴロゴロと喉を鳴らす。かわええのぅ。
【ヒアの人化を許可しますか?】
「ん?」
ここで久しぶりのヒアの人化がきた。どうしたんだ?
わからんのでとりあえず許可する。てかいちいち許可すんの面倒だな。
【これからはヒアの判断で人化および獣化をさせますか?】
「なんでもありだな、おい…………」
俺があんなことを思ったところでなんとも便利なものが出てきた。当然Yesだ。
すると、ヒアの体を黒い靄が包み込んだ。いつも通りだな。
ラルルは初めて見るので、え? え? なになに?! と大慌てである。そんな様子も見ていて微笑ましい。
「……頭撫でて」
そして出てくるヒア。Tシャツ一枚の姿です。
あ、ちゃんとヒアの服も買ってあるから取り出さないとな。
俺はミリーに頼んでヒアの服を持ってきてもらった。
はーい、と言って走って服を持ってくるミリー。
目の前の出来事に固まるラルル。
やがてラルルは叫んだ。
「なにこれぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!!!!!」
ラルルの心からの叫びは森中に響いたそうだ。
最近子猫たちを忘れがちですwww
次の投稿は一時間後です!
よっろしくぅっ!
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