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17話「のんびりと」

カンッ、カンッ、カンッ


 森に木を打つ音が響き渡る。

 ラルルが家を建てると言って木を圧し折りまくった後、器用にもナイフで木を木槌の形に削り変えた。今はそれを使って家を建てている最中だ。

 俺とミリーはヒアがスパッと切った切り株に腰掛けてラルルの嬉々とした表情を眺めていた。いや、ミリーはチラチラとこちらを見ているが。

 俺はなんとなしに空を見上げてみた。

 青い空。

 本当に真っ青だ。藍色とまではいかないが、それに近い青色で空は塗りつぶされている。

 空を見上げながら俺はふと思った。

 

 あ~、うん、あれだ。ガチでノープランできたし、なにをやればいいのかわかんねぇや。とりあえず家作って静かに暮らそうと思ったけどそれってつまんなくね? なんか面白いことやりてぇな~…………

 

 そんな感じで俺はボケーっとどこまでも青い空を見上げていた。







 どれほどボケーっとしていただろう。心なしか空に、いや俺の周りの空気がわずかに靄がかかったかのように淀んでいる気がした。

 なんだろうと視線を切り株の隣で伏せの体勢で寝ていたヒアへ移すと、静かに閉ざされていた瞼はわずかに開かれており、その奥からは鋭い眼光を覗かせていた。怖くて一瞬ビクッとなり涙ぐんでしまったのは内緒だ。

 ツンとなる鼻をなんとか押さえて、いつの間にか俺の肩に頭を預けているミリーを見やる。そこには、相変わらず俺にくっついて幸せそうにする反面目だけは警戒の色を見せているミリーの姿があった。大きな猫耳がピクピクしててかわえぇのぅ。

 つい俺はミリーが警戒しているにもかかわらずそのピクピク動く猫耳を触ってしまった。


「にゃっ! ……ふにゃぁ…………」


 俺の手が綺麗な三角形をしている猫耳の頂点に触れると、ミリーは驚いたような声を上げた。お前素だと、にゃ、って言うのな。…………グッド。

 俺も急に叫ばれて驚いたが、猫耳ごと頭を撫でてあげるとすぐに大人しくなって体重全てを俺に預けるようにしなだれかかってきた。()いいいやつめ。

 しかし、俺はミリーとヒアが警戒してたのを思い出し、撫でる手を引っ込めた。ミリーよ、そんな残念そうな顔をするな。あとでたっぷりと可愛がってやるから。ぐへへ。

 

 とりあえず表面上だけは真面目にしようとキリッとした顔を作る。顎にピストルの形を作った手を添えたら決まるかな? …………ヒアよ、そんな哀れむような目で見ないでくれ。お前めっちゃ警戒してたやん。なんで俺を見るときだけそんな哀れむような目になんだよ。…………泣くぞ?

 いろいろ残念なことをしているとヒアに精神をボコボコにされた。俺の鋼の涙腺要塞が玩具のごとく崩壊させられてゆく~。

 

 っと、茶番は終わりにして。

 俺は改めて真面目な顔になりミリーに尋ねた。

 

「なぁ、ミリー。なんとなぁく変な空気やん? なんかあったの? てかあるの?」

「うん、なんかね魔物に囲まれてるみたいだよ。詳しいことはわからないけどヒアが警戒してるからそうだと思う」


 真剣に尋ねるとやはり真剣に返してくれたミリー。先ほどまでの蕩けた表情はどこへやら。

 ミリーは視線をラルルへ送ると続けた。


「それにあんな木を倒したり、カンカン音を鳴らしてたらたくさん来るに決まってるよ? 今はヒアのおかげで踏ん切りがつかないようだけど、数が揃ったら襲われちゃうかも」


 俺もつられてラルルを見る。

 …………本当に楽しそうに木槌を振るってるなぁ。あ、ニヤッてした。まさか俺とのあんなことやそんなことを妄想してるわけじゃ……あんなこと言ってたしありえるな。

 …………じゃなくて!


「ラルル! すぐにこっちに来い!」


 今俺らが囲まれてるってことはラルルも標的に入ってるってことだ。多分。

 俺らはラルルが作業しているところから十mほど離れている。

 もし素早い動物がラルルを襲ったらヒアでも間に合わないかもしれない。間に合うとしても、助けに行けば俺が危うい。戦闘力皆無なので……チート欲しかったなぁ。

 

 ラルルは状況がわかってないのか不思議そうな顔を浮かべた。が、すぐに木槌片手にこちらへと来てくれた。素直な子で怪しい人に連れ去られないか心配です!

 そんなことを思っていた次の瞬間。


「グルォォォォォオオオオオ!!!!!!!!!!」


 耳をつんざくような鳴き声が森を揺らした。

 俺は慌てて両手で両耳を塞ぐ。くっそ、うるせぇよコノヤロー。

 鳴き声がやむと、俺は周りを見渡す。あ、ミリーさん気絶してる。耳敏感だしね。それでも俺の腕を離さないとは……愛されてるなぁ。

 少しほっこりしていると、いろんなところから二m以上ある熊がゾロゾロと出てきた。大熊行列かよ。…………これはいかん(ネタ的な意味で)

 その数は、一、二、三…………十か。

 …………やばくね? 見た目かなり強そうだし。いや、もしかしたらこいつらはただの獣かもしれん。よくあるじゃん? 獣と魔物には埋められない差があるんだー! みたいな?


「グルァ!」


 俺のそのわずかな希望は熊が腕を振るって圧し折った木と同じように折れた。

 え? おまいら全員魔物なん? ヤバスヤバス、パニック列車発射オーライ!

 とりあえずこの状況が大丈夫なのか確認するためヒアさんの顔色を伺う。すっかり姉御になったな、ヒア。お前がいるからなんとか全裸にならなくてすむよ…………俺の頭は末期かな? パニックのせいだよな?

 それはともかく、ヒアさんの表情は……………………うん、わからん。

 いや、普通に考えて猫にそんな感情豊かな表情作れないでしょ! てか普通に聞けよ! 言葉通じるんだからさ!

 自分のこんなピンチな状況でも健在な馬鹿さ加減に辟易しながらヒアに尋ねる。


「ヒア、大丈夫?」


 もちろん、大丈夫? の前に、俺の命は、が入る。え? ミリーたち? 余計なお世話。

 そしてヒアはもちろんだ、とでも言うように首を縦に振る。相変わらずでかいですなぁ。

 

「お兄ちゃ~ん! どうしますか? 殺っちゃいますか?」


 ヒアが大丈夫だ、と言ってくれたので安堵しているといつのまにか胡坐をかいている俺に乗っかっているラルルが物騒なことを言い出した。いや、この世界では普通なのか。でもなぁ、純真無垢なラルルが、ヤっちゃう? ていうとこう、ゾクゾクと…………え? 字が違う? 知るかそんなもん!

 俺はラルルの短く顎のラインで切りそろえられたピンクの髪を撫でながら言った。


「ヒアが大丈夫っていってるから別にいいわ」

「了解なのです!」


 俺の上で振り返るとラルルはニパッと笑って敬礼した。…………可愛いは正義だな。

 

 さて、当の熊さんたちはというと、俺らの余裕っぷり? に圧倒されてた。

 こんだけの仲間を集めたのに黒豹どころか、人間の俺すらビビらなかったからかな? おい、俺を普通のやつと同じと思うなよ! こうみえて肝っ玉だけはでかいからな! …………もう一つの方も大きけれゲフン。

 俺がパニック状態から戻ってもしばらく熊さんたちは固まっていた。どんだけプライド傷つけられたんだろう?

 

 しばらくすると、ようやく動き始めた。

 舐められてるな、でもそんなの関係ねぇ! とでも言ってるのような気迫だ。……あ~、日本のあの芸人さんを思い出すな。面白かったな~。………………生きてるかなぁ。

 俺が日本の頃のことを思い出している間にも熊さんたちは近づいてくる。すっげぇ迫力だな。ヒアのいることで生まれる安心感がなかったらちびってたわ。

 さぁて、ヒアはどうするのか…………な?

 俺はどんどん近寄ってくる熊さんたちをどうやってさばくのか気になりヒアに目をやる。だってこの数じゃん。もしかしたら魔法的なのを使うかもしれんじゃん!

 しかし、ヒアを見た俺は固まってしまった。


 次の投稿は1月29日の午後7時です。

 よろしくね~

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