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神様のアトリエ

作者: 紅夏

そんな感じで、うん。

俺は見ていることしかできない。

ワクワクです。


僕は天使だ。


生まれてからかれこれ145億年と3日たつ。

天使に寿命は無いが天使の中でも長く生きている方だ。

こんなに長く生きているから、

僕は大体の物事は知っている。

人間界のこと魔界のこと天界のこと。

知識対決ならどんとこいだ。


だけど、そんな僕にも知らないことがある。


僕より生きている天使だって知らない。


僕達の生みの親である、神様のことだ。


神様について僕達天使は何も知らない。

本当に全く・・知らないのである。

なら神様がいないのかというと違うのだ。

何せ神様がいなければ僕達天使だけでなくこの世の全ての物が生まれていないのだから。

何故僕達が神様のことを知らないのかはわかっている。


誰一人神様について知ろうとしないからだ。


僕はそれを不思議に思った。

神様の教えの中に『知ることは素晴らしい』という物があるのに誰も知ろうとしない。

明らかに不自然だ。

僕は神様のことを知ろうと思った。

僕はまず天使が生まれた時にでてくる扉を調べることにした。

扉の前に立ち扉を押す。


「開かない」


扉は固く閉ざされている。

それに押していて気づいた。これは力でどうにかなるような扉ではないと。

「くそっ・・・」

いきなり手詰まってしまった。

神様について知ると言ったが神様に繋がるヒントはこの扉しかなかったのだ。

いきなり希望がなくなった、と思ったその時

ギィィィィ!

と鈍い音が頭に響く。

「うわっ!」

驚いて情けない声と共に近くの柱に身をかくす。

扉が開くと勢い良く天使が飛び出していった。

天使が出て行き少しの間をおいて、

ギィィ!

と鈍い音と共に扉が閉まり始めた。

僕は慌ててまだ開いている扉の前に立つ。

扉の中は真っ暗で何もない。

その暗さは恐怖も思わせる暗さだ。

僕は足が勝手に震えていることに気づき。


恐ろしいと思った。


しかし閉まる扉にはそんな事は関係なく。

扉は段々と閉まっていく。

まるで入って来るものを拒むように。

まるで入って来るものを威圧するように。

その姿は、むしろ神々しくも見えた。


僕は恐怖を噛み締め震える足を前に出す。

足が暗闇を踏んだ瞬間。体が落ちるようにバランスを崩し、

暗闇に堕ちた。

気を失うかと思った瞬間視界が開ける。

さっきの暗闇とは対象にそこには真っ白が広がっている。

その白に先は見えず、

無限に広がっている気もする。

周りを良くみると真っ白の世界には絵を描く道具がたくさんある。

もちろん紙だってある。

僕の知っている言葉で表すなら……ここはアトリエだ。


「君が最初の天使か」


!?

完全に不意をつかれて僕の体がはねる。

「えっ!?」

「驚かせてしまったかな?すまない。私は……そうだな……君の生みの親、だ」

振り返った僕の前にたつ老人はそう言った。

「あなたが……もしや!?」

「あぁ。私はお前達天使には、神と呼ばれているよ」


僕は今神の前にいる。


そう思った瞬間。

僕はひざまずいていた。

「お会いできて……光栄です」

僕は思わずそんなことを言ってしまった。

「そんなに固くなるな……おまえも私と同じ、生き物だ」

神様はそう言った。

「はっ……はい!」

僕は焦り、それ以上何も言えなくなってしまった。

そんな僕に神様は、

「どうした?何か聞きたいことはないのか」

と言ってきた。

僕はあまりすぐ考えが出るわけではなかったので、まずこの場所のことを聞く事にした。

「この場所……は、なんですか?」

「この場所は全ての始まりの場所。この世にあるものは全てここで生まれた」

神様は、うたうように言った。

とてつもなく驚いたが、他の疑問が浮かんだ。

「全て……あなたが創ったんですか?」

「いや、全て私が描いた。」

頭に浮かんだ疑問が取れなくなった。

「わからぬか。私が描いたものは扉を越える瞬間、絵という二次元を越え三次元へと姿を変える」

完全に想像の範囲を飛び越えられた。

神の偉大さを叩きつけられた気分だ。

「……………………」

「な~に、深く考える必要はない。私の絵を描く場所、いわばアトリエだ」

僕の立つこの場所はアトリエだ。でもただのアトリエではない。全ての命が生まれる、自分が思いつくアトリエとは次元が違う。あらゆる命を生んでつくってきたこの場所を、

「神様のアトリエ」

と、呼ぶ。


~~~~~~~~~~~~

「なぁ~」

「ん?」

「お前こんな話知ってるか?」

「なになに?」

「絵に命を吹き込む美術家のアトリエの名前」

「なにそれ?」

「神様のアトリエ!」

「なんだそれ……。どうでもよ」

「そうだよな。ゴメンゴメン」

僕はあの後神様に言われて人間界で暮らすことになった。

もちろん人間の姿で。

たまに思いだすあのアトリエの話を、僕は人に話す。

「なぁ、その話。オレにも教えてくれよ」

この世で神様と僕だけが、神様のアトリエの存在を知っている。


と、いうわけで、神様のアトリエでした~。

黒色猫さんの神様のアトリエも、見ていってくださいね~☆

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― 新着の感想 ―
[一言] 神様が“描いたもの”が具現化して、万物が産み出されたものですか……。 しかしながら、天使が地上で人間として生きていく理由が、気になったりならなかったりww  とかく、アトリエというもので、こ…
2010/12/06 12:37 退会済み
管理
[一言]  ほっほー。なるほど、そうきましたか。  私もその設定、つまり“神様が描く世界が現実のものとなる”的なのは考えていました。しかしなるほど、別に神様なんて誰も確認したことがないんですから、その…
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