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神崎涼花の逆襲 〜えれくとろんあーく2〜  作者: てんまる99


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あんた、ナニしてたの?

用語解説:グローバルAiネットワーク

トリニティAiシステムにより格段に機能は進歩したが、計算量(主に学習計算)が爆発的に増大した。

その計算をネットワークを通じてグローバルAiが行うことで負荷分散が行われている。

それから一時間ほど経って、夏鈴の意識が戻ったと連絡が入った。

全員で病室へと急行する。


夏鈴はベッドに上半身を起こしていた。

まだ点滴のチューブなどが繋がっていて、痛々しい。


涼花が思わず声をかける。

「夏鈴!大丈夫? 私のこと、分かる?」

「あはは、大丈夫だよ涼花。まだちょっとぼうっとしてるけど、大丈夫」

「良かったぁ」

思わずベッドの夏鈴を抱きしめる。

つぶった目からはポロポロと大粒の涙が溢れた。

「もう、泣き虫だなぁ涼花は」

夏鈴も涼花を抱きしめた。

「だって、だって、あのままだったらどうしようとか考えて‥私のせいで‥ごめんなさい」

「私のほうこそ‥ごめん」

「夏鈴は被害者だもん、謝ることなんて‥」

「ううん、私、自分で何をしていたか分かってた。なのに自分を自分で止められなかった」

悔しそうに表情を歪める夏鈴。

「涼花が危ないって。そんなこと起こってほしく無いって思ってるのに、私はっ」

拳を強く握りしめる。

夏鈴もまた涙を零した。

それは自分を止められなかった事への自責の涙だった。


それを見て蒼井さんが声をかける。

「催眠術にかかったようなものです。自分でどうする事もできないのは、仕方ありません」

「でも、一体誰がこんな酷いこと」

明日香も悔しそうに言った。

人間をまるで道具のように扱う手段に心底腹が立っていた。


「夏鈴さん、犯人やきっかけになった事柄は分かりませんか?」

「えー、あ‥そういえば、しばらく前にVAのメンバー募集のサイトの応募して‥それから‥」

その話を聞いた涼花が驚いたように顔を上げた。

「え、夏鈴も応募したの?」

「あれ? 涼花も?」

「すみません、もう少し詳しく教えてもらえますか?」

蒼井さんがいつになく焦った様子で訊ねた。



夏鈴との面会後、涼花や明日香達は蒼井さんの主任室に集まっていた。

そこで涼花が応募したというサイトに関して話し合った。


「隠していてもスフィアさんには筒抜けでしょうから言いますが‥」

蒼井さんは苦々しい様子で語った。

「ブレインハッキングの被害者は夏鈴さんが初めてではありません」

「「「え?」」」

驚く一同。

スフィアだけが当然のように頷いた。

「それであの時、すぐ気が付いたのね」

「そうです~。もしや、これはって思って」

「既に何名かが、失踪しているらしいと、聞いています」

「で、その人達に共通なのがサイトということですか?」

涼花が訊ねる。

「何らかの募集サイトでアンケート様式のテストを受けたことまでは分かっています」

「そこに共有因子のテストが紛れ込ませてあった?」

「‥推測ですが」


共有因子というのはAiとの同調能力を決めるもの、と仮定されている。

通常の人間でレベル0.4程度とされ、スフィアの遺伝子提供者となった“東雲円花”で1.0となり、これは数十万人に一人程度の数値だという。

そして先ほどの検査で判明した涼花のレベルは5.3。

恐らく、人類史上最高値ではないかと蒼井さんは言った。


「でも、何の役にも立たないんでしょ?」

涼花は溜息をつきながら言った。

こんな、役に立たない事に夏鈴が巻き込まれたのが、納得いかない。

「日常生活では、そこまでの数値が必要な場面はないですからね」

「じゃあなんで?」

「日常以外の場面というものもあるんですよ。例えば軍事利用などです」

蒼井さんは苦々しげに言った。


Ai財団はグローバルAiの機能を平和目的に限り提供している。

だが、Aiを軍用に使おうとする者達も居るのは確かだった。

「グローバルAiに変わるサービスを構築しようとする動きは以前から有ったのですが‥」

「ここまで強引な事をする相手は?」

「財団は警察ではありませんので、ブレインハッキングの被害者救済にしか関与していません。ので、そこまでは‥」

「そうなんだ‥」

明日香は考え込む。


そして、

「ここからは、私達の出番って事ね」

意を決した様に言った。

「駄目です、明日香さんっ!」

蒼井さんが慌てて止めようとする。

「相手は平気で誘拐や傷害をする本物の犯罪組織、若しくはそれ以上です。危険すぎます。警察に任せて下さい」

「でもさ、それじゃ間に合わない」

明確な証拠と令状が無ければ警察は動けない。

被害者がそこにいる可能性、では駄目なのだ。

もちろん、地道な捜査の積み重ねで、いつかは真相にたどり着くかも知れない。

でもその時に、被害者の人達はどうなっているのだろう。

そして、今すぐに、膨大なグローバルネットワークの中からその情報を掬い上げる事が出来るのは‥。

「スフィアちゃん?」

「あと1時間で終わらせます、お姉さま」

先程の会話を聞いた時から既にスフィアは情報解析を始めていたらしい。


「明日香さん、駄目です! 相手は銃器を持っている可能性が高い」

断固反対する蒼井さん。それも当然だろう。

「んー、そっかぁ。まぁレーザーは難しいけど、拳銃とライフル位なら‥何とか」

明日香はとんでもない事を言い出した。

「いやいや、明日香さんが優秀なのは知っていますが‥至近ならともかく、何百メートルも先から狙撃されたら‥無理ですよね?」

さすがに呆れ気味の蒼井さん。

「試してみよ?」

明日香はまるでくじ引きでもする様な軽い口ぶりで、そう言った。


1時間後、地下から明日香と蒼井さんが戻って来た。

げっそりした表情の蒼井さんが漏らした。

「わ、私は研究対象を誤っていたのでしょうか‥」

「もー、やだな蒼井さん。そんな顔しないでよ」

対照的に普段通りの明日香。

「明日香さんをもっと調べたら凄い発見が‥」

「いやん、私の事調べるとか‥エッチ」

蒼井さんをからかう。

「い、いや、そう言う意味では‥いや‥」

再び悩む蒼井さん。

「安心して、危ないことはしないって約束するから」

明日香にフォローされている。


涼花が小声で明日香に話しかける。

「ちょっと明日香、あんた、あのイケメン主任と二人っきりでナニしてたのよ?」

「もう、言い方! ちょっと、レーザーが避けられるか試してみただけ」

「ば、危ないじゃない」

思わず涼花が声を上げる。

「違う違う、威力とか下げてあるオモチャみたいのだから」

「なんだ、驚かせないでよ。で、どのくらいだったの?」

「だいたい600mくらい?」

「は? 何の話? 結果はどうだった? って聞いてるの」

「あ、そっちか。もちろん全部避けたけど」

「全部、とは?」

「20発位だった。多分」

「‥蒼井さんに同情するわ」

「え、え、なんで?」

明日香は理由がわからず混乱している。

とりあえず、明日香は無意識にとんでもない事をすると、涼花は理解した。


と、明日香はポケットをまさぐると、アイマスクを取り出した。

「あ、そだ。これ返さなきゃ」

言うと、蒼井さんの所に行き、

「これ、返すね」

と手渡す。

「明日香、今のアイマスクって‥まさか‥」

涼花は戻ってきた明日香に聞いた。少し声が震えていた。


「ちょ、誤解しないでよ? 今のテストで使っただけで、蒼井さんと何か有った訳じゃ‥」

「そんな誤解してない! というか、誤解の方がマトモじゃないの」

どうも明日香はアイマスクした状態でレーザー20発を避けたらしい。

「やだ、どうして怒っているの?」

「怒ってない。まさか明日香、あなた親戚に神か悪魔かその両方が居たりしない?」

「もう、変なこと言わないでよ。私の親戚は全部普通の人間ですー」

頬を膨らませて明日香は答えた。


“アンタが普通の人間じゃなさすぎるのよっ!”

涼花は思ったが、口には出さなかった。


いかん、前作で書いた、明日香の人外ネタが現実に成りつつあるのでは‥

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