4話 高田健志の決断
高田健志は、なな湖という男から手榴弾を奪い取る。
「あぁっ……!」
なな湖はこの瞬間、絶望した。自分が命を賭して、高田健志を地獄へ送ってやろうと思ったのに。こうもあっさりと手榴弾を取られてしまうとは。自分の命はここであっさり終わってしまうんだ、と悲しんだ。
しかし高田健志は、その手榴弾を投げ捨てはしなかった。
「……?」
なな湖は困惑する。爆発が起きない。
また濡らされてしまったのか。いや、手榴弾はちょっとやそっと濡れた程度で爆発は防げない。
ふと、なな湖は上を向いてみる。すると、高田健志は今にもその手榴弾を飲み込もうとしていた。
「なっ、何をしてるんだ!?」
思わずなな湖も声をあげる。高田健志は手榴弾を飲み込む。手榴弾は胃袋に到達したところで、激しく爆発した。
高田健志の腹から、雷のような音が鳴る。
しかし彼の腹がちぎれるようなことはなかった。
なな湖もおじ太郎も、何が起きたのか分からず、困惑した。すると数秒後に
「ガフ……ッ!」
と、高田健志は苦しそうに吐血し、その場に倒れる。
「お、おい!」
目の前で宿敵が倒れたなな湖は、どうすればいいか分からなかった。両手を上げて喜ぶことも、なぜか彼にはできなかった。高田健志が神だから? そのような神聖な感情とも、また異なる。もっと複雑だった。
高田健志は、そんななな湖の顔を見つめる。
「ハ、ハハ……、人間の世界だと、俺も弱くなるみたいだな……!」
と言って、高田健志は倒れた。
なな湖は、衝動的に動いた。まず、少し遠くにいるおま田おじ太郎を呼んだ。
「おじ太郎! この人、村に運ぶぞ!」
「えぇ? なな湖さん、高田健志様を恨んでおられるのでは……?」
おじ太郎は信仰心こそあれど、なな湖の心情をまず心配した。しかしなな湖は目を瞑り動かない高田健志を見て
「……やっぱり確かめたいんだ。この人が本当に俺の先輩を殺したのか。……いいから運ぶぞ!」
なな湖とおじ太郎は二人で高田健志を村に連れていった。