3話 襲撃者
高田健志は驚異的なスピードで、スナイパーの元に一瞬でたどり着いた。
荒野の岩陰に隠れていたスナイパーは、みすぼらしいボロを来た若い男だった。高田健志はなぜ撃たれたのかがわからなかった。
「なあ、お前。」
高田健志は、怯える男に歩み寄る。
「ひぃい! ち、近寄るなっ!」
男は至近距離から再び銃の引き金を弾こうとした。しかし、高田健志の神秘的な力には敵わない。
高田健志がピンと指を弾くと、銃は一瞬で水浸しになり、弾丸は発射されなくなった。
「う、うわぁああ!」
男は何度も引き金を弾くが、銃はうんともすんとも言わない。高田健志はできるだけ柔和な笑顔を浮かべて
「なあ、この世界で何が起こってるのか、教えてくれないか?」
と男に問う。しかし
「だ、黙れッ! お前、高田健志だろ! 世界が滅んだのは、お前のせいなんだろ!」
男は腰を抜かしながら、高田健志に対して声を荒げた。どうやら噂は本当のようだ。高田健志の偽物が世界を滅ぼしているらしい。
高田健志はどうやってこの男から情報を聞き出そうか、悩んだ。そのとき。
「た、高田健志様……!」
と、言う男がもう一人現れた。
その男も同じくボロを着ているのだが、どうやら何かの宗教の教祖のような格好をしている。
「お前は……?」
「あなたは、本物の高田健志様ですね? 私は信じて待っておりました。私は高田健志教の教祖、おま田おじ太郎でございます。」
高田健志は驚く。こんな荒廃した世界にも、まだ自分の信者がいたということに。同時にちょうどよかった、ならばこのおじ太郎という者に情勢を聞こうではないか、と考えついた。
「あぁ……肖像画にそっくりだ……。偽物もそっくりでしたが、あなたは本物よりも本物だ……!」
おじ太郎は感激し、涙を流している。
「なあ、今の世界の状況について聞かせてくれないか?」
「はい。どうぞ、私どもの村へ来てください。」
おじ太郎との会話は実にスムーズに進んだ。信者がいてくれるととても都合がいい。
「待て、おじ太郎!」
高田健志とおじ太郎が村へ行こうと歩き出すと、すぐそばで腰を抜かしていた男が、高田健志に飛びかかってきた。
「なな湖さん、何を!?」
「悪いが、この高田健志という男をみすみす逃すわけにはいかねぇ……! 先輩のカタキ、取らせてもらうぜッ!」
なな湖と呼ばれたその男は、手に手榴弾を持っていた。ピンはもう抜いてある。
「ッ!?」
高田健志は驚いた。高田健志は思考を巡らす。
このとき、高田健志の中には、なな湖に対する哀れみの感情が生まれていた。
なな湖の、自分に対する疑いを晴らしてやりたかった。そして、何としても高田健志が偽物を打ち倒すという決意を見せてやりたかった。
ここで取る行動は、一つしかない。
高田健志は実行に移した。