18話 悪の元凶
花畑から離れ、やがては荒野に行き着いた。
高田健志は歩いている間に考えた。
誰が元凶なのか。
ダーク高田健志は言っていた。お前ならもう分かるはずだと。
人間界に舞い降りてから今までのことを思い出していた。
「……!」
正体に行き着いた。
ダーク高田健志を作り、世界を滅ぼした張本人。
それは一人しかいなかった。
張本人はまさに今、荒野に現れた。
「……やはりお前がそうなのか。ダーク高田健志を作り、世界を滅ぼし、俺を人間界へと呼び寄せた張本人。」
その男は、わざとらしく笑っていた。
「おまおじ……、お前が全ての元凶なんだな。」
そこには、インドで死んだはずのおまおじが立っていた。
おまおじの顔から笑いが消え、疑問の表情に変わる。
「……この場で大々的にネタバラシしてやろうと思ったのに、残念やで。あのロボットがゲロったか、いや、ありえない。」
おまおじは教祖服を脱ぎ捨て、ダーク高田健志と同じ、黒いローブ姿に変わった。
「どうやって分かったんや?」
おまおじは高田健志に聞く。
「……第一の違和感は、最初に見せてもらったビデオだ。」
「ビデオ? あぁ、あのテープか。」
ダーク高田健志が高らかに宣言をしていた、あの旅番組のビデオテープのことだ。
「あのビデオでは、ダーク高田健志が両手を掲げて宣言していた。つまり、ダーク高田健志本人はカメラを持っていない……そこで俺は疑問に思ったんだ。あのビデオは一体誰によって撮影されたのか。」
「ん、そんなモン、撮影スタッフかそこら辺にいたやつに撮らせたんやろ。」
おまおじの景色ばかりの反論に、高田健志は動じず答える。
「カメラは途中で一度倒れた。おそらく、スタッフも全員まとめて一瞬で殺されたんだ。それに、撮影された場所は人が一人もいないような険しい山道の中、通行人なんていなかったはずだ。」
「ふん、なら、神の気とやらを使って、念力でカメラ浮かせて撮ったんやろ。」
「実際に戦ったから分かる。『邪悪な神の気』は戦闘用に特化したものだ。念力が使えるような代物じゃない。」
つまり、ダーク高田健志には誰かしらの協力者がいた。ダーク高田健志の恐ろしさを地上波で伝えるために。
「……ほーん。で、それは『協力者』がいたってことは証明できるけど、それが俺ってことにはならんやろ。」
「お前が協力者だって証拠はもう一つある。……それは、ダーク高田健志の言葉だ。ダーク高田健志は俺に言った。『破壊してやる。インドの地で散った、お前の友達のように』と。無差別に殺戮するだけのダーク高田健志が、なぜお前のことを知っていたんだ? インドだって、一瞬で消し去ったはずだ。俺とおまおじの関係性を、ダーク高田健志が知っているわけはない。」
おまおじの眉がぴくっと動く。
「考えられるのは一つしかない。ダーク高田健志は最初から知っていたんだ。おまおじと俺が接近していることを。」
しばらく、張り詰めたような無言のときが流れる。荒野の風の音が、虚しく響く。
おまおじの小慣れた関西弁が沈黙を断ち切る。
「なるほど、正解や。さすがは神といったところやで、ホンマ。」
「まだ分からないことが一つだけある。」