11話 インド、破壊
インドの郊外に倒れる駆動丸。しかし、その顔は清々しかった。
「は、はは……、負けちまった。」
駆動丸は自分の死を悟った。
死ぬ直前は、痛みを紛らわすために快楽物質が大量に分泌されるらしい。快楽なんてものはみじんも感じないが、負けても清々しいのはきっとそのせいだ。そろそろ天国に行くんだろう、と駆動丸は思った。
「……?」
しかし、意識は遠のいていくどころか、どんどん現実味を帯びていく。
そして、気づいた。自分の身体に一切怪我がないことに。
「なんでだ……? あれだけの大技をくらったんだ。即死でもおかしくない。」
感じる痛みは、地面に叩きつけられたときに背中に走った微細な痛みのみ。それ以外は、どこにも怪我がない。
「高田健志が放つ神の気は、邪悪なものにしか効かないのさ。」
困惑する駆動丸の元に、高田健志が現れる。
「……なるほど、完敗だ。」
駆動丸は天を仰ぐ。
神が慈悲をくれた、とは、駆動丸は考えない。
駆動丸は高田健志に対して、優しく拳を突き出した。
「どうやらお前の言ってることは本当らしい。偽物がいるらしいな、頑張って倒してこい。……そしてそのあと、もう一度俺と戦え。俺はお前を神だなんて思わない。ライバルだ。次は必ず勝つ!」
「おう、また倒してやる!」
高田健志と駆動丸は互いに拳を打ちつけた。高田健志に、人間界で初めて『ライバル』という存在ができた。
……そのときだった。
インドの都市から大音量の爆音が聞こえた。
「ッ!」
高田健志は都市の方を見る。すると、邪悪なオーラに満ち溢れているのを感じた。
「ま、まさか……!」
高田健志は嫌な予感がした。そして、全速力で都市へと戻った。
「おまおじーーーーッッ!!」
高田健志は、人間界で初めてできた友達である、おまおじの名を叫んだ。
そしてすぐに都市に着いた。
しかしそこに残っていたのは都市ではなく、途方もなく続く巨大なクレーターだった。
そして上空に浮かんでいる黒い影。
自分と同じ姿形、見紛うはずがない。
「ダーク、高田健志っ……!」
ダーク高田健志が、インドを跡形もなく破壊してしまったのだ。
ついに、この二人が相対する。
高田健志とダーク高田健志。
二人とも、全く同じ顔立ちだ。違うのは、ダーク高田建志は漆黒のローブを身に纏っていること。そして、邪悪な神の気に満ちていること。
「やぁ、本物よ。お前のせいでインドは消滅したぞ。」
声も全く同じである。高田健志の怒りが、爆発した。
「よ、よくも……! よくもインドを……よくもおまおじをーーーーッッ!!!」