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第3章 小さな変化と退院

―病室―


私と颯真は、先生に渡された課題プリントと、事故の資料とにらめっこしていた。


・事故詳細 20○○年12/24 17:23発生 ■■市◇◇町軽自動車と大型トラックが衝突。軽自動車に乗っていた20歳女性と大型トラックを運転していた40歳男性軽傷、軽自動車を運転していた20歳男性死亡。


・軽症者2名、死者1名


事故原因 大型トラック運転手の飲酒運転

過失運転致死傷罪により現行犯逮捕


動画サイトにニュース映像も残っていたため、当時の映像も見直した。


なつき「やっぱ、調べてみればみるほど悲しい事故...」

颯真「見ているだけなのに、苦しくなってくるな。」

なつき「うん...」

実際に起こった事故を見たわけでも、その時の人の気持ちは分からないはずなのに、当時の人の感情が流れ込んでくるかのように、とても胸が締め付けられる。


それと同時に少し引っかかった。なんで先生は、わざわざ二人でこの事故についてまとめろと言ったのか。最初は事故に遭った私のことを考えて二人でとも思った。でも、すでにある程度回復していると分かっているのに2人でやらせる理由はないはず...もしかして...


なつき「ねえ中川。私が事故に遭った時、どう思った?」

颯真「え...そうだな...」

颯真は少し深呼吸をした後、ゆっくりと口を開いた。


颯真「...怖かった...な。目の前で事故が起きたことが怖いんじゃない...お前が死ぬかもしれない...そう感じた時が一番怖かった。目の前で好きな奴が目の前で死にそうだってのに...何もできなかったことが苦しかった...」

なつき「あの...颯真...さん?好きな奴って...」

颯真「あ...」

なつき「...」

颯真「ああぁぁぁああ、やっちまったぁ!!」

颯真が私のことが...好き?いやいやいやいや...そんなこと、ない...よね?


なつき「ま、まあ、一旦それは置いておいて...」

颯真「...そ、そうだな」


颯真の話を聞いて、先生が私たちに2人でやってほしいといった意味が分かった。この事故は、私たちとそっくりだ。目の前で知り合いが亡くなるかもしれない...その怖さを、私たちは一度知った。


なつき「先生は、私たちに“失うこと”の怖さを知ってほしいんだと思う。事故のあったことを、怖い、辛いみたいに、簡単に終わらせてほしくないんだと思う...」

颯真「...なるほど。だから、今回の宿題なのか...先生はおれたちに考えてほしいんだろうな。大切なものを目の前で失うことの怖さを。裏面の+aはそういうことか。」

プリントの裏には、

【追加課題 自分の中で一番大切な人を思い浮かべてください。その人がもし目の前で事故に遭ったらどう思いますか?】と書いてある。


なつき「...大事なものについて考えてほしい、ってことなのかな」

学校の先生「そこまでもう分かったのね。」

なつき「先生!」

ふっと顔をあげると、入り口付近に先生と日高先生が戻ってきていた。


日高先生「ごめんね、先生連れ出しちゃって。」

颯真「全然大丈夫ですよ。」

学校の先生「やっぱり、二人は今回の課題の意図について気づいたね。」

颯真「正確には、小野がですけど。」

学校の先生「じゃあ、今回の課題レポート、2学期最初の私の授業で二人に発表してもらおうかな。」

なつき「発表、ですか?」

学校の先生「うん。本当は、今回の課題の意図をしっかり捉えてくれてたレポートの人に発表してもらう予定だったんだけど、ここまでわかってるなら、二人に発表してもらいたいな。」

なつき「中川、どうする?」

颯真「おれはいいぞ。なつきが決めろ。」

なつき「...じゃあ、やります。やらせてください。」

学校の先生「ありがとう。じゃあ、新学期、楽しみにしてます。」

なつき「え?先生、一緒にやるんじゃ...」

学校の先生「ここまでわかってるなら、私がいなくても大丈夫。期待して待ってるね。なつきさん、颯真君。」

そういって、先生は帰って行った。


なつき「帰っちゃった...」

颯真「あぁ...」

なつき「発表か~。なんかとんでもなく期待されちゃってるね。」

颯真「それだけ正確に先生の意図を読み解けたってことだろ。言われたからにはやるしかないぞ。」

なつき「そうだね。がんばろう!」

そうして残りの2週間、私たちはレポート作成に取り掛かった。


日高先生「なつきちゃん、颯真君...」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―退院日 病室―


なつき「零花先生、3か月間、ありがとうございました!」

日高先生「こちらこそ!また実家にも遊びに来てね、なつきちゃん!ね~ひかり。」

ひかり「は、はいぃ...」

なつき「あはは...」

零花さんのことを伝え忘れていたお母さんは、後日零花さんに怒られたらしい。それ以降、零花さんの前ではペコペコしていた。


颯真「小野、退院おめでとう。」

なつき「ありがとう、中川。」

颯真「退院までに何とか歩けるようにはなったな。」

なつき「まだ20分歩いたらばてちゃうけどね。」

退院までに最低限通学に困らない程度に歩けるようにはなったが、落ちた体力だけはすぐには戻らないためそれはこれから少しずつ戻していくしかないと零花先生に説明された。


なつき「こればっかりはゆっくりやるしかないね。」

颯真「そうだな。」

なつき「先生からの課題レポートもできたし、学校が楽しみだな~。」

ひかり「学校が楽しみなのはわかるけど、まずは一回家に帰るよ~。颯真君も送って行こうか?」

颯真「じゃあ、お言葉に甘えて。」

ひかり「じゃあ、3ヶ月ぶりの我が家に一緒に帰ろう!」

そういって、お母さんは車を取りに駐車場へ歩いて行った。


日高先生「じゃあ、二人とも無理はしないようにね!辛くなったら私のところに来るんだよ!」

なつき「はい!ありがとうございました、零花さん!」

颯真「ありがとうございました。」

日高先生「なんだかんだ久しぶりにひかりとも会えたし、実は今度ひかりの家近くに引っ越すことになったからまた定期的のこっちからも顔出すね!」

なつき「また実家に定期的に遊びに行きますね!おじいちゃんたちにも会いたいし!」

日高先生「お!じゃあ色々実家に来たときお出かけしよっか!もちろん颯真君も一緒にね!」

颯真「え?!俺もですか?!」

日高先生「当たり前だよ~。私たちの仲じゃないか~!もしかして、女二人に囲まれて出かけるのは恥ずかしいのかな?」

颯真「あ~もう、分かりました!行きますよ!」

日高先生「そ―こなくっちゃね!!」

なつき「...ふふっ。」

そんなやり取りを見ていて、くすっと笑ってしまった。


日高先生「なつきちゃん、なんで笑ってるの?」

なつき「いや、やっぱりお母さんと双子なんだなって。」

日高先生「?」

零花さんは少し首を傾げた後、それまでの空気とは一変して真剣な顔でこちらを向きなおした。


日高先生「なつきちゃん、颯真君。二人に伝えておきたいことがあるんだ。」

そういう零花さんの顔は、いつになく真剣だった。そして私たちは、衝撃の話を告げられた。


ひかり「二人とも乗った乗った!帰るよ~!」

車を取って戻ってきたお母さんが戻ってきた。


なつき「...うん!わかった!」

颯真「...」

なつき「とりあえず、一度この話は家に帰ってから話そう。もう一度真剣に考えよ。」

颯真「...そうだな。」

ひかり「どうしたの~。早く乗りな~2人とも。」

なつき「は~い。すぐ行く~。」

颯真「俺まで一緒に乗せてってもらってすみません。よろしくお願いします。」

ひかり「いやいや、ついでだしね。さて、帰ろっか!」

そう言いながら、家までの帰路を辿る。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―なつき宅―


なつき「ひっさしぶりの我が家だ~!!」

ひかり「ほらほら、まだ体力戻ってないんでしょ。車に30分乗ってただけでもちょっと疲れた顔してるんだから、まずはゆっくりお風呂に入って休む事!!」

なつき「は~い。」

颯真「乗せていただき、ありがとうございました。じゃあ、そのまま帰ります。」

ひかり「ふっふっふっ。颯真君、実は今日颯真君のお母さんと晩酌するの。だからよかったら泊っていかない?」

颯真「聞いてないですよ!?」

ひかり「だって、昨日決まったことだから!みんなでなつきの退院祝いをしようって!」

なつき「お母さん、用意周到だなぁ...」

ここまで計画していると、もはや呆れを通り越してすごいと感じる。


なつき「颯真、こうなったお母さんは止められないよ...」

颯真「...最近ずっと俺が折れてる気がする...」

ひかり「まあ、そういうことだから、颯真くんもうちに入るよ~!」

颯真「...わかりました。」

そう言いながら、私たちは家へと帰った。颯真はしぶしぶ私の家へと入った。


お久しぶりです!!

2ヶ月も間が空いてしまった...非常に申し訳ない...

6月中は私生活でやることがたくさんあったのでちょくちょくしか書く時間が取れず...


さて、今回の話ではなつきちゃんが退院するところまで来ました。実はこれで前章は終了となります。

物語の根幹にかかわるキャラクターはほとんど出そろいました。

・なつき

・颯真

・ひかり

・日高先生(零花)

・学校の先生

この5人がどう動いていくか、お楽しみに。


...今年中には頑張って完結できるようにしますね(-ω-)/

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