表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2章 事故と課題

???「キ...ツキ」

女の子の...声?


???「ナツキ...ナツキ」

私の名前を...呼んでる?


???「ナツキ...ナツキ!!」

ふっと目を開けると、そこは...


???「ナツキ!今救急車呼んだから!!!頑張って!!!」

また...あの夢?でも、少し違う...今までの夢よりも、現実味があって...私であって、私じゃないみたい...


???「ナツキ...ねえ...いやだよ...私一人にしないで...お願い...目を覚ましてよ...死なないで... お願い...お願いだから...目を覚ましてよ......ナツキ...」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

なつき「...」

目を開けると、真っ白な天井が辺り一面に広がっていた。


なつき(ここは...どこ?颯ッ?!)

一緒にいたはずの颯真に呼びかけようとし、体を起こそうとした瞬間、鈍い痛みが走った。


なつき(...そっか、私、事故に遭って...)

動かしたところからじわじわと痛みが走る。何とか頭をあげて周りを見ると、身体には点滴がたくさんついており、人工呼吸器が取り付けられていた。しゃべろうとしても声が出なかった理由はこれだった。そっと体勢をもとに戻した。頭も...無理に動かしたせいか、痛い...。


ひかり「なつき!?目が覚めたの!?」

颯真「なつき...なつき!?目が覚めたのか!?」

なつき(おかあ...さん?颯...真?)

声が出せないため、返事をするようにまばたきをした。


ひかり「あぁ...よかった...」

颯真「よかった...!すぐ先生呼んできます!!」


そう言うと、颯真はすぐに病院の先生を呼んできてくれた。


病院の先生「よかった、目が覚めたんですね。」

病院の先生に対しても、返事をするようにまばたきをした。そんな反応をすると病院の先生はニコッと笑って、私の隣に座った。名前は...日高先生。とっても優しいまなざしで、どこかお母さんと雰囲気が似ている気がした。また一緒に警察も事情聴取のためか、一緒に入ってきた。


先生と警察は、今に至るまでの経緯と私の容体について説明してくれた。


事故の原因だが、車を運転していた70代のドライバーによるアクセルとブレーキの踏み間違いによる信号無視だった。これに関してはすでに犯人も逮捕されているらしい。


私は事故から1週間眠っていたらしい。私が車にはねられた際に、胸部から地面に叩きつけられ、その際、肺に軽い損傷、頭は3針縫う傷、足の骨と肋骨を複雑骨折していたらしい。ここに運び込まれたときは意識不明の重体で、特に肺の傷がもう少し酷ければ死んでいたかもしれないと伝えられた。先生が言うには1週間で意識が戻ったのは奇跡に近いらしい。


日高先生「この速さなら今後次第だけど、リハビリ含めても3か月後の夏休み明けには学校に復帰できそうだね。ただ、1週間は最低でも絶対安静ね。絶対に動いちゃだめよ。」

ひかり「よかった...ほんとによかった...ありがとうございます...」

日高先生「...なつきちゃん、無事でよかったね、ひかり。」(ボソッ

ひかり「ありがとう...」(ボソッ


正直、死んでもおかしくなかった。私がクレープを食べたいと言い出さなければ、こんな事故は起きなかったかもしれない。こんなに家族を...周りのみんなを悲しませなかったかもしれない。そう考えると、心が苦しかった。


その後、警察からしばらく事情聴取が行われることとなり、私とお母さん、颯真、日高先生含めた5人が残った。そして、事故当時の状況についていろいろと話した。小1時間話した後、警察と颯真、日高先生は病室を後にした。


颯真「それじゃあ、僕はこれで...」

日高先生「何かあったらすぐに呼んでくださいね。」

ひかり「うん。いつもありがとうね、颯真君。日高先生も、ありがとうございます。」

颯真「いえ、それでは失礼します。」


気を使ったのか、颯真と日高先生は足早に病室から去って行った。私とお母さんの2人の空間になった。沈黙の中、お母さんがそっと口を開いた。


ひかり「あの日...なつきが事故に遭ったって、颯真君から連絡が来たの。私は最初、何かの冗談かとも思った。...........いいえ、信じたくなかったの。だって、信じたらなつきが、二度と私たちの前に帰ってこないかもしれないって...そう思ってしまいそうだったから。」

そう言葉を綴るお母さんの声は...震えていた。


ひかり「本当に怖かった。何度も何度も神様に願った。私たちの娘を救って、って。ずっと、ずっと。何度も、何度も。だから、今こうして生きていてくれていることが、何よりもうれしい。私たちの娘が生きている。それだけで本当にうれしいの。」

一つ一つがとても苦しそうだった。言葉が...私の胸に突き刺さるようで。辛い...。


ひかり「...本当に...本当に...夢じゃないよね...!!」

お母さんが泣いている...まるで、子どものように...


ひかり「遅れちゃったけど...」

私を見て...そしてそっと...私に言った。


ひかり「おかえりなさい...なつき!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―2か月後 病室―


颯真「小野~、いるか~?」

なつき「あ、中川。うん、いるよ。」


事故か2か月が経った。1週間経ったあたりで人工呼吸器が外され、先生と相談しながらゆっくりとリハビリを始めた。そこから1ヶ月半ほど、普段通りの生活ができるよう、足の骨が治ってからは最低限普通に歩けるようにリハビリを続けている。


颯真「今日もリハビリか。」

なつき「うん。1ヶ月近く歩いてなかったから、まだ車いすがないとまともに移動できないけどね...。あ、でも、トイレは自分で行けるようになったよ!」

颯真「それ、男のおれに言うか普通...」

なつき「それ言ったら、男なのに毎日お見舞いに来てるじゃん、中川。私の友達より来てる回数多いけど?」

颯真「たしかに。」

なつき「...私なんか気にせず、中川は自分の時間を自由に使えばいいんだよ?」


学校が夏休みに入り、颯真は毎日病院に顔を出している。そう、毎日なのだ。自分の時間を削ってまで、私のお見舞いに来ている。朝から面会時間ギリギリまで、ずっと。私に縛られずにもっと自由に時間を使ってほしいのに、そのやさしさに甘えてしまっている私もいる。だから、もうお見舞いに来なくてもいいよ、そう言おうとした瞬間、颯真が口を開いた。


颯真「...いや、おれがこうしてたいんだ。その方が、小野も安心できるんだろ?さっきからにやにやしてるぞ。」

なつき「ッ!///ソンナコトナイモン...」

颯真「おーい、片言になってますよー小野さーん。」


顔に出すぎていたみたいだ。恥ずかしい...

でも、このやさしさに、今だけは甘えよう。正直、一人は怖いから、隣に誰かいてくれるだけで安心できる。


颯真「そういえば、1ヶ月後ってちょうど夏休みが終わるころだけど、小野、先生が遅れてもいいからあの授業のレポートは書いてほしいって言ってたぞ。何なら先生が一緒にやりたいって。」

なつき「...先生、普通事故に遭った本人にそんな内容やらせる?...」

颯真「逆だろ。事故に遭ったからこそ、怖さが分かるから当事者だからこそやってほしいんだろ。でも、強制もしないって。事故に遭ったストレスも相当なものだろうから、余裕があるならでいいって言ってた。」

なつき「ふーん...」


正直あんまりやりたいとは思わない。でも、私自身が事故に遭って、その怖さ、辛さを知った。当事者にしかわからないものもある。だからこそ、先生は私に宿題をやってほしいんだろう。少し悩んだが...


なつき「まあ、うん、やろう。先生の意図も分かるし、なによりリハビリ終わったら暇だし!中川も一緒にやるよ!!」

颯真「俺も一緒にやるのかよ...まあ、多分先生の言う当事者って俺も含まれてるんだろうしな...まあ、やるか。」

そんなこんなで、夏の宿題実施が決まった。


なつき「とりあえず、これから2週間はリハビリに専念するから、しばらくは暇な時間にいろいろ資料だけでも読み漁ろうかな。」

颯真「なら、先生呼んでやるのは学校が始まる2週間前からか。分かった。リハビリ、がんばれよ、小野。俺もそれまでは全力でサポートするからさ。」

なつき「!うん!ありがと!頑張るね、私!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―2週間後 病室―


なつき「っ!!んっ!!!はぁ...」

あれから2週間が経過し、リハビリも順調で手すりを使えばある程度歩けるようになるぐらいには回復した。

なつき「やっと、ゴール...」

手すりにつかまりながら10mほど歩いただけで、すぐにゼーハーゼーハーと息切れを起こしてしまうほど、体力もなくなってしまった。


颯真「だいぶ歩けるようになってきてるな。」

日高先生「リハビリも順調だし、基礎体力と足の筋力をちゃんと上げていけばあと1ヶ月もあれば最低限日常生活の中で歩けるようになるよ。」

なつき「そ...そうです...か...」

息を切らしながら、運ばれてきた車いすに乗り自分の病室へと向かった。


病室に戻り、ベッドで横になる。


なつき「まだ歩くとすごい脱力感、っていうのかな、足が私の体重を支えられるだけの筋力がなくてストン、って落ちる感覚になるんだよね...」

颯真「本で調べたけど、人の筋力って1週間休むだけで元の筋力に戻すまでに2倍の期間を要するんだと。」

なつき「へぇ~。じゃあ後最低でも2週間近くはこの調子なのかなぁ~...学校に戻るまでに、がんばらないと...」

そんな会話を交わしていると、横にいた日高先生が口を開いた。


日高先生「そういえばなつきちゃんと颯真君。今日、学校の先生が来るんだよね。よかったら私も会っていいかな?」

颯真「え?日高先生がですか?」

日高先生「うん!私も話してみたくって!今日なつきちゃんのお母さん、どうしても外せない用事で来れないって聞いてるから、代わりに私に会ってほしいって言われたの。」

なつき「ん?あれ?日高先生、私のお母さんとそんなに仲良かったんですか?」

日高先生「ん?...え、まさか...なつきちゃん、知らないの?」

なつき「?」

私が知らない反応をした瞬間、日高先生は「まじか...」みたいな表情でたたずんでいた。ちょっとした間があった後、日高先生は口を開いた。


日高先生「私の旧姓は小暮零花、なつきちゃんのお母さんひかりの双子の妹だよ!」

なつき/颯真「...え?えぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」

なつき「え、お母さんの、妹?!」

日高先生「ははは...確かにひかり、実家になかなか帰ってこないから。知らないのも無理はないか...」

ビックリした。確かに、私がお母さんに実家に帰るのは正月ぐらいで、それ以外はほとんど行くことがなかった。聞くと、零花さんは正月病院が忙しいらしく、なかなか家に帰れないらしい。それで、私と会うことは全くと言っていいほどなかったらしい。


日高先生「でも、ひかり、まさか私と姉妹だってことも伝えてなかったとは...」

なつき「でも、なんで教えてくれなかったんだろう?」

日高先生「いや、多分ひかり、そこまで考えてない...普通に知ってるもんだと思い込んでる可能性が高い…」

なつき「あぁ...お母さんなら、ありえそう...」

日高先生「ずっとなつきちゃんが日高先生、日高先生って言ってくるから、仕事中だから気を使ってくれてるんだなって思ってたのに...知らなかったなんて...」

なつき「なんか...ごめんなさい...」

日高先生「いや、なつきちゃんは悪くないよ...ひかりが悪い...」

颯真「ま、まあまあ、お二人とも。この後先生と会うんですから、テンション戻さないと...」

そんな話をしていると、横から声が聞こえた。


先生「ここがなつきさんの病室で合ってます...か?」

なつき/颯真/日高先生「あ...」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―病室―


先生「この様子なら、もう事故の傷はだいぶ回復してるのね。」

なつき「はいぃ...あのぉ...」

先生「さっきのは気にしなくていいよ。特に話の内容は聞こえなかったから。なんかテンションが随分と落ち込んではいたけど...」

なつき「あ、はい...」

日高先生「...お恥ずかしいところを見せてしまい、申し訳ありませんでした...」

先生「いえいえ、お気になさらず。」

あまりにも気まずい...タイミングがタイミングだったため、私も零花さんもすごく申し訳なく感じてしまっている。


颯真「と、とりあえず先生。今日は小野さんの課題についての話でしたよね...」

先生「そうね。なつきさん、夏休みの課題はやれそう?」

颯真、ナイス!明らかに話の論点をずらしてくれたおかげで、少し気が楽になった。


なつき「は、はい。今のところリハビリも順調なので、時間外でやる余裕はあります。」

先生「分かった。じゃあ今日からゆっくりでいいので始めましょうか。ちなみに調べる事故について見当はついてるの?」

なつき「あ、はい。事故に遭う直前に、この事故について調べようと思って...」

私は事前に準備していた事故の資料を先生に手渡した。


先生「この事故は...」

そう言うと、先生は顔をしかめた。...ほんの一瞬だったけど。すぐに元の表情に戻り、先生は口を開いた。


先生「うん。題材には十分かな。」

なつき「よかったです。それで先生、どんな感じでレポートにまとめればいいですか?」

先生「授業で配った資料にも書いてあったけど、事故の様子、どんな事故だったか、事故のその後についてまとめて、そこにあなたの感想・所感についてまとめたものを提出してくれればいいよ。」

なつき「分かりました。」

先生「颯真君も、この宿題はまだやってないんだよね。」

颯真「あ...はい。」

先生「じゃあ、二人で1つのレポートを作って提出してもらってもいいかな?」

颯真「二人で、ですか?」

先生「ええ。二人がこの事故についてどう思ったか、ゆっくりでいい。しっかりまとめてほしいの。」

颯真「二人でやる理由はなんですか?」

先生「それは、やっていくうちにわかると思います。」

先生の2人で1つのレポートを作るという意図が分からず一瞬困惑したが、二人で作業を進め始めた。


日高先生「先生、ちょっとよろしいでしょうか。少し二人でお話ししたいことが...」

先生「分かりました。」

日高先生「ちょっと私と先生は話すことがあるから席外すね。また何かあったら読んでね!」

二人は少し話があると病室から出ていってしまった。


日高先生「...先生、単刀直入にお聞きします。あの宿題は、今の彼女たちにやらせる必要がありましたか?」

先生「日高先生、私はこの宿題は今の彼女たちこそやるべきだと思っています。」

日高先生「...私は、今の彼女たちにやらせる必要はないと思いますが...」

先生「...生徒には、今のうちに知っておいてほしいんです。失うことの怖さを...」

日高先生「それってどういう...」

先生「...あなたなら、分かるはずだよ、“零花”。」

日高先生「!?どうして私の名前を...まさかあなた!?」

今回の話はちょっと複雑だったかもしれません。

作者に医療知識がほとんどないため、現実ではありえない展開になっていると思いますが、そこはフィクションということで見逃していただければと思います;つД`)


さて、今回の話では、新たな登場人物として主人公なつきの母ひかりの妹日高零花が登場しました。

過去作を読んでいる方は少し驚かれたかもしれませんが、ひかりと零花は双子という設定は過去作の時点で決まっていました。この設定、過去作で出したかったんですけどね笑。


話は変わりますが、タイトルでも強調されている「事故」と「課題」

「事故」は分かりやすいと思いますが、今回の第2章では基本的に1章の事故と学校の宿題のテーマが事故のフォーカスしています。


では、「課題」は?まず最初に思いつくのは学校の課題についてでしょう。じゃあ他は?と言うと、なつきのリハビリですね。2章終了時点で、なつきは歩行できるようにしたいという課題が生まれています。このように、2章は課題にもフォーカスしています。


ちなみに、課題はもう1つあります(-ω-)/

ちょっとしたヒントですが、なつきも颯真も2人ともこの課題を持っています。

第3章にこうご期待!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ