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1.嫁取りの占い -マニエス視点-

 新作、始めました!

 王道のラブロマンスを、どうぞお楽しみください♪



 巨大な青い炎の中に、(かす)かに何かが浮かび上がる。

 それは次第に輪郭がハッキリとしていき、最終的には誰が見ても明らかな紋章の姿となった。

 威嚇しているサソリが盾に描かれた、スコターディ家の紋章。


「成功したぞ!」

「スコターディ男爵家だ! 急げ!」


 青い炎に向かって一人両手を(かざ)していた僕は、初めて浮かび上がった紋章をフードの下から呆然と見つめていた。


 『嫁取りの占い』


 僕が今成功させたのが、これだ。


 この国で唯一であり、国王陛下お抱えとも言われている占い師一家であるソフォクレス伯爵家に生まれた僕は、今まで占い師として一人前とは認められていなかった。

 今年で二十歳になった僕は、当然成人ではある。けれど、成人しているかどうかと占い師として一人前かどうかは、また別問題だった。

 だけど。

 今この瞬間から、一人前だ。占い師として、国に認められたことになる。

 その条件が、『嫁取りの占い』を成功させることだったから。


「おめでとう、マニエス」


 父上が側にきて嬉しそうに声をかけてくださるけれど、正直僕はそれどころじゃなかった。

 炎の中に映る、紋章を見つめて。

 複雑な心の中を整理することだけで、いっぱいいっぱいだったから。


(まだ、成功しなくてもよかったのに……)


 決して口にはできないけれど、それが僕の本音だった。

 だって炎の中に初めて何かが浮かび上がったところを見た瞬間、愕然(がくぜん)としたんだから。


(一人前だと認められるのは、嬉しいけど。この方法は、好きじゃない)


 『嫁取りの占い』とは、その名の通り伴侶を探すためのものだ。

 ただし、自分自身の。


(どうして、他の人の占いじゃダメなんだろうか)


 普段は国や他の家のことばかり占っていて、自分を占うことなんて滅多にないのに。

 この最初の占いだけは。一人前だと認められるための占いだけは、自分のためのもの。

 でもだったら、それこそこんな公の場でやらなくてもいいと思う。


「結果は出た。まずはあちらにおわす陛下にご挨拶申し上げよう」

「……はい、父上」


 この『占いの間』には、陛下を初めとして国の重鎮しか入室することが許されていない。

 そして『嫁取りの占い』に僕が挑戦するのは、これが初めてじゃなかった。


(ずっと……ずっと、失敗し続けてきたのに……)


 炎の中には何も浮かび上がらず、そのまま消えてしまっていたのに。落胆する周りとは裏腹に、毎回心の中で安堵(あんど)していたのに。

 今日ついに、成功してしまった。

 一人前になれたと、占い師として認められたと、手放しで喜ぶことができないのは。昔から僕は、この我が家の通過儀礼に納得がいっていないから。


(会ったこともない女性の、人生を変えてしまうのに)


 それなのにどうして、素直に喜ぶことができるんだろう?

 嬉しそうな周りの反応を、フードの下から観察している僕には。どうしても、理解できなかった。



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