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40.寄付

 僕とティナは、夜道を歩いていた。


 すると、古めいた二階建ての建物が見える。


「セリン、着いたわよ」


「ここって、孤児院か?」


「そうよ。幼い頃に両親を亡くした私が生まれ育った場所。どうしても、セリンに来て欲しかったの」


 ティナはそう言うと、僕に孤児院を案内してくれた。


 途中、話しかけてくる子供たちに、満面の笑みで応えるティナは、剣姫として魔物を討伐する姿からかけ離れた優しさを感じた。


 本当、優しい人なんだな。


 すると、シスターさんがティナに寄ってきた。


「ティナちゃん、今日はどうしたんだい? それに、隣の男の子は……ああ! 彼氏かい! うう……ティナちゃんに彼氏ができるなんて感動ものよ……」


「か、彼氏じゃないわよ! もちろん、セリンみたいなかっこいい男の子と付き合えたら泣くほど嬉しいけど……そんなことより!」


 顔を赤くしたティナは鞄から大量のお金を出すと、シスターさんに渡した。


「ティナちゃん、気持ちはありがたいけど、毎回来る度にこんなに渡さなくていいのよ? 私たちはつつましく生活できていればいいんだから……」


「遠慮しないで。私は剣姫よ。こんなお金くらい魔王軍を倒してたら何回でも稼げるんだから心配しないでよ」


「そうかい……ありがとね……」


 シスターは深々と頭を下げると、去っていった。


「ティナ、いいのか? 見たところ5000万G以上あったが、そんな大金、気軽に稼げる額じゃないだろ」


「セリン、私はね、この孤児院で暮らす子供たちが、自分の進みたい進路に進めるようにしてあげたいの。だから、お金に困った不自由な生活なんて絶対にさせたくないし、この子たちが毎日笑顔になるために、私は冒険者として頑張れているの」


 ティナはそう言うと、僕の手を両手でとって言う。


「それに、ギルドでセリンが皆にお酒を振る舞った時に思ったの。この人は、皆の笑顔のためなら自分を犠牲にできる素晴らしい心の持ち主だって。だから、知って欲しかった。私もセリンと一緒で、皆を幸せにするために、魔王軍と戦っていることをね」


 な、なんていい子なんだ……。


 僕は思わず涙を流していた。


 だって、危険を顧みずに魔王軍と戦って、さらには稼いだお金を孤児院の子供たちの幸せを心から願うために使っているんだ!


 いい子すぎて涙が止まらないよ!


 よし!


「シスターさん! ちょっと待ってください!」


「はい……?」


 僕はスキル『敏捷』を使うと、風の速さでギルドに戻り、僕の鞄をとる。


 そして、孤児院へ戻ると、シスターさんに鞄を手渡した。


「これは……た、大量のお金じゃないかい⁉︎」


「シスターさん、僕からも寄付させていただきます。どうか、このお金で皆に美味しい物でも食べてください」


「で、でも……」


 シスターさんが戸惑っていると、ティナは僕に詰め寄って言った。


「い、いいのよセリン⁉︎ あなたは好きな物を買うなり、ギルドメンバーとお酒を飲んだり楽しむためにお金を使えばいいじゃない! わざわざ貯金を切り崩してまで見ず知らずの相手に同情する必要なんてないのよ?」


「ティナの優しさに感動したから渡したんだ」


「え、私……?」


「ああ。孤児院の子供たちの成長を思いやって寄付するなんて、魔王軍を倒すことしか考えていなかった勇者パーティ時代の僕じゃ思いつかないほど立派な社会貢献活動だ。そんなすごいことができるティナを見て、僕もティナみたいに人のために尽くしたい。そう思ったんだ」


 僕がそう言うと、ティナは顔を真っ赤にしていた。


「セリンったら、どこまでいい男なのよ! かっこよすぎて……ますます好きになっちゃうじゃない……」

 

 好きだなんて大げさだな。

 

 すると、シスターさんは号泣しながら言う。


「ティナちゃん! 今のうちにセリン殿を落としなさい! こんな誰よりも人を想える素敵な男性、世界中を探しても見つけられないよ!」


 お、落とす⁉︎


 確かに、ティナのような誰もが憧れる女の子と付き合えたら、涙が出るくらい嬉しいが、僕みたいな冴えない男と付き合うなんてティナが嫌がるだろう。


ああ……勘違いして告白して、ティナにフラれる様子が思い浮かんできて涙が出てきた……。


「ちょ、ちょっとセリン!? なんで寄付したあなたが泣いてるのよ!?」


「いや、ごめん……悲しいことを思い付いてちょっとな……」


「まさか、寄付をするだけでなく、ここで暮らす子供たちの生活や背景を想像して泣いているというの!? もう……セリンはどこまで優しい子なのよ!」


「60年生きた中でこんな慈悲深い男性を見たのは初めてよ……子供たちにもセリンさんの素晴らしさを説いてお礼を言わせないとね! 急いで呼んでくるよ!」


 こうして、僕は孤児院のシスターさんや子供たちに泣きながら感謝されるのだった。


 どうしてこうなった……。

「面白い!」


「続きが早く読みたい!」


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