38.幸運
そして、僕とルシナは森でひたすらラビットを狩り続けた。
依頼の内容は、森に出現するゴールデンラビットを倒し、ドロップする金の毛皮を集めること。
しかし、そのゴールデンラビットは希少な魔物で、近年では1度も目撃されていないそうだ。
「ラビットはたくさん湧いてくるんだが、肝心のゴールデンラビットが見当たらないな……」
「そうですね……私、次から次へと湧くラビットに嫌気が差してきましたよ……」
「よし、ここは時短してみるか」
「え? 時短ですか?」
僕は先ほどラビットから奪ったスキル『跳躍』を使うと、高く飛ぶ。
そして、空から森全体を見渡すと、金色のラビットが身を潜めていた。
よし、後は逃げられないように接近するだけだ。
僕はスキル『敏捷』を使い、急降下すると、ゴールデンラビットを殴る。
「ギャアアアアアアアアア!」
気絶したゴールデンラビットを倒すと、金の毛皮がドロップした。
僕はティナのもとに駆けつけると、金の毛皮を渡す。
「え、もう見つけたの⁉ あなたって噂通り規格外なのね……」
「そうか? 普通に倒しただけだけどな……」
「普通って、ゴールデンラビットは10年に1度しか市場に出回らない超レアな魔物よ! 最強冒険者として有名なあなたならもしかすると見つけてくれると思って依頼したけど……実際に見られるなんて涙が出るくらい感動ものよ……」
「そうなのか……ちょっと、その兎からスキルを盗ませてもらえるか?」
「え?」
僕がスキル『窃盗』を使うと、天の声がする。
『ゴールデンラビットからスキル『幸運』を獲得しました』
「スキル『幸運』? 聞いたことないスキルだが使ってみるか」
僕は『幸運』を使うと、周囲から高い鳴き声が聞こえる。
すると、ゴールデンラビットの大群が湧いてきた。
なるほど。
どうやらスキル『幸運』は、レアアイテムをドロップする魔物を大量に湧かせる効果があるようだ。
「よし、ティナ! この100匹以上いるゴールデンラビットを倒してさらに金の毛皮を納品するから、待っていてくれよ……ティナ?」
ティナは口をぽかーん、と開けて驚いていた。
そして、ティナは急いで駆け寄ってくる。
「どうしたんだティナ? もしかして、100匹じゃ足りなかったか? もう1回『幸運』を使って、さらにゴールデンラビットを増やしてもいいが……」
「1匹でも十分すぎるわよ! 本当、セリンは規格外の冒険者ね……。よし、決めたわセリン!」
「うん? 決めた?」
「私は今日からあなたたちと行動を共にするわ。セリンの魅力、もっと知りたくなっちゃった」
満面の笑顔で言うティナ。
「え⁉︎ いいのか? ティナほどの実力者がパーティに入ってくれたら、僕たちも安心して難易度の高いクエストに挑めるから助かるよ」
「駄目ですよ! セリンさん!」
ルシナは僕とティナの間に割って入ると、僕の腕に胸を寄せて言う。
「ティナさんは、セリンさんを性的に食べようとしています! ほら、あれは聖剣使いの視線じゃありません! 獲物を狙う野獣の視線です!」
「あ、あなたねえ! 私はセリンの強さに興味を惹かれただけよ! まあ、確かにセリンは他の男の子より頼りになるし、結婚相手には理想的で素敵な男性だと思うけど……」
「ほら、やっぱり私のライバルになったじゃないですか! 絶対、セリンさんは誰にも渡しませんからね! 剣姫と崇められているティナさんにももちろん渡しません!」
「面倒な女エルフね……」
ぐぬぬ……と、睨み合うルシナとティナ。
うう……二人の視線が怖すぎるよ!
こうして、剣姫ティナは『永久の輝石』に加入したのだった。
「面白い!」
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