表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/48

36.来訪者

「セリンさん、顔を出しすぎですよ! バレちゃいますよ!」


「すみません受付嬢さん……。でも、僕は心配で……」


 ギルドの待合室の外にて。


 僕は受付嬢さんと2人で聞き耳を立てていた。


 なぜなら、勇者パーティの僧侶カミナが、ルシナを訪ねてきたからだ。


 まさか、前にギルドに来たグレイクを追い返したから、カミナが復讐しに来たのだろうか。


 などと、僕が不安に感じていると、カミナがニコっ、と微笑んで言った。


「ルシナさん、本日は貴方を私たち勇者パーティへ勧誘するために参りました」


「か、勧誘ですか?」


「はい。貴方の冒険者としてのご活躍は勇者グレイクが認め、勧誘の命を下すほど素晴らしいものです。どうでしょう? 『永久の輝石』など何の社会貢献力のないパーティなど辞めてしまい、勇者パーティで国民に賞賛されながら、華々しく活動しませんか?」


 そうか。グレイクはルシナを欲しがっていたのか……。


 まあ、当たり前だよな……。


 ルシナはスキル『絶対防壁』で、大抵の魔物の攻撃を防げる優秀なタンクであり、魔物の状態異常攻撃をかき消せるとんでもスキル持ちだ。


 これだけのスキルがあって、欲しくないパーティがいるわけがない。


 それに、勇者パーティはカミナが言った通り、国民の注目を大いに集められるパーティだ。


 美少女のルシナには、残念だけど僕となんかより、もっと華々しい場所での活躍が似合っている。


 そう、わかっているけど……。


 なんだか、寂しいな……。


 僕が涙ぐんでいると、ルシナは笑って言った。


「お断りさせていただきます」


「え⁉︎ 嘘ですよね……。あの名高い勇者パーティですよ? 無能なセリンのパーティではできない、悪しき魔王から国民を守る正義の肩書きを持つパーティです。貴方もその一員になれるのにどうして断るのですか? ああ。わかりました!」


 カミナはそう言うと、テーブルに大量の金を置く。


「どうですルシナさん? 勇者パーティに入れば、冒険者程度では到底得ることのできない富を得ることができるのですよ。国王からのパーティへの出資金は1ヶ月に200万Gです。どうですか? それでも、まだ、入りたくないと断言できますか?」


「セ、セリンさん……私、長年受付嬢として働いていますけど、こんな多額のお金を一度に目にしたのは初めてですよ! これを見せられたらいくらルシナさんとはいえ、心を動かされてしまうんじゃ……」


 受付嬢さんの言葉に、僕は涙を流していた。


 そうだよな……。


 末永く国王から出資を受けられる勇者パーティと、ついこの前に結成した『永久の輝石』では、パーティとしての将来性が段違いだ。


 悔しいけど、こんな僕と一緒にいるより、グレイクたちといたほうが幸せな暮らしができるに決まっている……。


 すると、ルシナは視線を僕たちの方に向けて言った。


「受付嬢さん、私の荷物がロッカーにあるので取ってきてくれますか?」


「え⁉︎ バレてたんですか⁉︎ はい! お待ちください!」


 そして、ルシナは受付嬢さんから渡された鞄を開くと、カミナに見せつけた。


「な、なんなんですかこの大量のお金は……⁉︎ ざっと1000万G以上はあるじゃない⁉︎」


「これは全て、あなたたち勇者パーティが無能と見下していた、セリンさんによって稼いだお金です」


「はあ? あの雑魚セリンに、こんな大金を稼げる実力があるはずがありません。何かの間違いでは?」


「セリンさんはこのギルドで誰もが認める1番の実力者ですよ! 失礼なことを言うのはやめてください!」


 受付嬢さんが2人の間に割ってそう言うと、カミナは目を丸くして驚く。


 すると、ルシナは満面の笑みで言う。


「先日、お聞きした噂によると、勇者パーティは第一王女のモルカ様から出資を打ち切られたそうですね?」


「そ、それは……」


「そんな王族から見離されたパーティに、果たして未来はあると言えるのでしょうか? 知っていますかカミナさん。モルカ様の新たな出資先は私たちのパーティ……つまり、セリンさんですよ? 残念ですが、私はパーティ『永久の輝石』のルシナです! 絶対に貴方のパーティには入りませんので、お引き取りください!」


「くっ……」


 うう……なんて優しい子なんだ!


 ダメだ……ルシナの優しさに触れて涙が止まらないよ……。


「そうですか……理解していただけないようで残念です」


 カミナはテーブルをバン! と叩くと、去っていった。


 裏表の激しい人だな……。


「バレバレですよ。セリンさん、受付嬢さん」


「ルシナ……」


「もう、私があんな誘いに乗ると思ったんですか? 大好きなセリンさんを裏切るような真似をするわけないじゃないですか!」


 ルシナはそう言うと、僕の腕に抱きついてくる。


 僕はルシナの頭を撫でると、涙を流し続けるのだった。


 最初はパーティを追放されて辛かったけど、ルシナと出会って、冒険して仲を深めた今なら改めてこう思える。


 勇者パーティを追放されて本当に良かったな……。

「面白い!」


「続きが早く読みたい!」


と思いましたら


下記の☆☆☆☆☆から作品の応援をよろしくお願いいたします!


面白かったら☆5つ、つまらなければ☆1つなど、正直な感想で大丈夫です!


また、ブックマークもいただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] というか、なぜ勧誘出来ると思ったんだろう···。 王女や国からの援助打ち切り、グレイグの信用のなさ、もはやなんの権限もない勇者の肩書き、それらが全てマイナス評価なのに、勧誘出来ると思う方が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ