33.納得
「フル村やタケ村の皆さんには申し訳ないですが、今回の戦いで村は魔王軍に制圧されたとして、今から外壁に魔王軍の軍旗を立てます……。もちろん、旗を立てるだけで魔王軍によって直接支配されるわけではないので、今まで通り普通に暮らしていただいて構いません! 僕のわがままでこんなことになってしまい、本当に申し訳ございませんでした!」
「すまないのじゃ!」
「「……」」
フル村の役場にて。
僕とダクドラは、ダークドラゴン領近隣にある村の村長たちの前で、頭を下げていた。
殴られる覚悟はできていた。
自分たちが生まれ育った村に魔王軍の旗が立つなんて、許しがたいほど屈辱的なものだろう。
ましてや、ダクドラたちは魔王軍として村人たちに長年恐怖を与えていたんだ。
そんな魔物の一族を守りたいから、魔王軍の支配下に入って欲しいだなんて、納得できるはずがない。
もっと、誠意を見せないと納得してくれないだろう。
僕は頭を床につけて土下座する。
すると、村人たちから驚きの声が上がった。
「セリン殿、顔を上げてください! 私たちは、村がダークドラゴンの支配下になることに大賛成ですぞ!」
「え……?」
僕は思わず首をかしげた。
すると、村長たちはうるうると、涙を流し始める。
「もちろん、ダークドラゴンは私たちの村を何百年にも渡って苦しめました。親族を殺された村人もいます。しかし、私たちはセリン殿に感謝しているのです! 先ほど、セリン殿とダークドラゴンが仲良く話されている姿を見て、こう思いました! 人間と魔物は手を取り合って生きていくことができると! 全ての魔物が決して心の底から悪い魔物ではないのだと!」
「皆さん……」
「それに、セリン殿は最強冒険者として名高い英雄です! そんなセリン殿の頼みであれば、断ることなんてできませんし、喜んで引き受けますよ! なあ、皆!」
「「うおおおおおおおお!」」
役場の前には、大勢の村人たちが集まっていた。
鳴り止まない、僕たちに対する大きな歓声。
そして、中には僕を見て、感動しているのか尻もちをついて号泣している人もいた。
「そんな……大げさですよ……」
なんて心優しい人たちなんだ……。
僕は思わず涙を流すと、感謝を込めて再び頭を下げるのだった。
ああ……僕は本当に優しい人たちに恵まれているなあ!
「面白い!」
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