31.和解
「い、痛いのじゃー! もう、セリンには逆らわないから許して欲しいのじゃぁあああああ!」
「な、なんかごめん……って、お前、ダークドラゴンか?」
「いかにもじゃ! 我は人間の姿にも変身できるスキルも持っていてのう。普段はこうして人間の姿で生活しているのじゃ!」
えっへん、と小さな胸を張るダークドラゴン。
赤の瞳に腰までかかった黒のツインテール。
そして、小麦肌の素肌は、ダークドラゴンの元気な様子を象徴しているようだった。
ダークドラゴンはニヤッ、と笑うと、僕の腕に抱きついてきた。
「セリンは強いのう……我が惚れ惚れするほどのスキルの持ち主じゃ。どうじゃ、セリン? お主が気を許すなら、我と付き合ってもよいぞ?」
「え⁉︎ 付き合うって……⁉︎」
「だから、我がセリンと付き合って、毎日ラブラブな関係になるということじゃ。セリンのような強い男なら、我の身体を好きにしてよいぞ♪」
甘い声で誘惑してくるダークドラゴン。
うう……さっきから小さな胸がぷにっと、僕の腕に当たっている。
小さい胸では興奮しないとだろうと侮っていたが、理性が飛びそうだ!
「セリンさん? さっきから何イチャイチャしているんですか? ダークドラゴンもセリンさんから離れてください! セリンさんは私のものですから!」
ギクッ、と背中に視線を感じると、ルシナが冷めた視線をこちらに送っていた。
そうだよな!
戦っていた相手と僕は何をしているんだ!
「なあダークドラゴン、王国への侵攻は今すぐにやめてくれないか? これ以上、無関係な人が死んでいくのは見てられないんだ」
僕がそう言うと、ダークドラゴンは神妙な面持ちで言う。
「我だって、人間を攻めたくないのじゃ……。だが、魔王の命に逆えば領土を奪われてしまう。そうなれば、我がドラゴン族は路頭に迷い、途方に暮れてしまうじゃろう……。ああ……此度の負けで何の功績も上げられなかった我たちには、厳しい制裁が待ち受けているじゃろうな……」
「ダークドラゴン……」
居場所がなくなる気持ちは、勇者パーティを追放された僕が痛いほどわかる。
人間とドラゴン族……皆が幸せになれる方法を探さないとな……。
そうか!
あの方法があるじゃないか!
「ダークドラゴン、わかったよ。今日の戦いは王国の敗北でいい。魔王軍の侵攻によって、ダークドラゴン領の近隣の村々を制圧したことにしよう」
「しかし、それでは……」
「だけど、魔王軍は僕に出会ってしまい、大打撃を受けてこれ以上の進軍は難しくなったと魔王に報告したらいいんだ。僕の名前を出せば、魔王も納得してくれるはずだ」
「そうか……セリンは魔王軍でも名高いあの狂犬ググル率いるコボルト領を支配した最強冒険者として恐られておる。セリンと戦ったと言えば、魔王様も納得してくれるじゃろう! セリンは賢いのう!」
ググルって狂犬ググルって言われていたのか⁉︎
そんなに強くは感じなかったけどなあ……。
なんにせよ、魔王軍の侵攻を止められて良かったね。
「ありがとな。ダークドラゴン。これで皆を守ることができるよ」
「面白い!」
「続きが早く読みたい!」
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