24.信頼関係
「いらっしゃいませ! 私はダルア不動産のダルアと申します。当店では選りすぐりの物件を用意しておりますので、ぜひご覧ください」
「ありがとうございます……では、お言葉に甘えて」
少し小太りな体型のダルアさんは、大量の物件を紹介してくれた。
防犯対策の優れた一軒家に、新築のおしゃれなアパート。
しかし、どれもいまいち決め手にかける物件だった。
「もう少し安くてギルドから立地のいい物件はないですか?」
「当店でお見せできる物件としましては、今までにお見せした物件たちが1番お得かと……」
「そうですか……」
僕が悩んでいると、ルシナが不服そうに口を尖らせている。
そうだ!
可愛いルシナが間に入ってくれたら、ダルアさんも頬が緩んで安くしてくれるかもしれない!
僕はいいアイデアを思いつくと、小声でルシナに話す。
「ルシナ……暇だったら、ダルアさんを説得してくれないか? 今紹介された物件を少し値切って欲しいんだ」
「絶対、嫌です!」
ルシナはぷん! と、顔を背けて言った。
なぜか怒り心頭なようだ……。
すると、ダルアさんが驚いた声を上げる。
「セ、セリンさんのポケットから今落ちた物。そ、それは……王家のハンカチじゃないですか⁉」
「あ、そうですね……馬車でモルカ様のハンカチを拾ったんですが、すっかり返すのを忘れていました」
僕が落ちたモルカ様のハンカチを拾うと、ダルアさんはパン、と僕の腕を掴んでくる。
すると、ダルアさんの目がキラリ、と輝いた。
「数々のご無礼をしてしまい、申し訳ございませんでした!」
「⁉」
そして、僕に深々と頭を下げて謝ると言う。
「セリン様が、まさか第一王女のモルカ様と親交のあるお方とは存じませんでした! セリン様、私に任せてください! ダルア不動産で提供できる最高級物件を特別低価格でご提供いたしますので!」
「はあ……」
大方、ダルアさんは王家との繋がりが欲しいのだろう。
王家と繋がりがあれば、多額の融資を得られるし、それを基盤として事業を大きく展開させることができる。
よって、モルカ様と仲がいい僕はうってつけの存在なのだ。
まあ、僕にとってはいい物件を紹介してくれるし、ラッキーな話だね!
そして、ダルア不動産で最高級の物件を格安契約した1週間後のこと。
僕は客が100人は入れるであろう広いリビングに1人ぽつん、と過ごしていた。
外観も内装も豪華な装飾がされており、10人以上の使用人つき。
国王の居城に負けず劣らずの大きな豪邸だ。
ちなみに、家が広すぎて空き部屋が多かったことから、ルシナも一緒に住むことになった。
ルシナは最初、「セリンさんと一緒に住めるなんて幸せです!」と、満面の笑みではしゃいでいたが、使用人さんによって、今は識字能力を鍛える勉強をさせられている。
ダルアさんのご厚意は嬉しいけど……なんだか寂しい気持ちになるな。
子供の時はたくさんお金を稼いで豪邸に住みたいとか思っていたけど、いざ住んでみるとこんなに悲しい気持ちになるなんて不思議なものだ……。
ルシナに会いたい!
僕はリビングのドアを開け、ルシナに会いに行こうとする。
すると、ゴツーン! と頭が痛んだ。
「いてて……ごめんなさい。家では走るものじゃないな……って、ルシナ!?」
「セリンさん! 私……セリンさんと顔を会わせる機会が減って嫌です!」
ルシナはそう言うと、涙を流していた。
「ああ。僕もそう思ったよ。引っ越そうか」
「はい……! セリンさんに会えない生活なんて私、耐えられません!」
こうして、僕とルシナは住み始めた豪邸をわずか1週間で出ていき、ギルドに近い簡素なアパートの1室で暮らし始めた。
豪邸の時と違い、ルシナの可愛い顔を四六時中見られることが、引っ越し先の決め手だ。
そして、朝。
「セリンさん! 朝食ができましたよ! 今日もセリンさんのために、丹精込めて作りましたからね!」
「ありがとうルシナ。今日も美味しいんだろうな……って、ええ⁉︎」
台所から料理を運んできたルシナは、また下着姿だった。
レース付きの水色の下着は、ルシナの細いボディラインを際立たせている。
うう……理性が飛びそうになる!
「ル、ルシナ⁉︎ お願いだから、リビングで服は脱がないでくれよな!」
「きゃっ⁉︎ ごめんなさい……でも、こうして私が見せるのはセリンさんにだけですからね!」
顔を赤くして、両腕で抱きしめるように身体を隠して言うルシナ。
はあ、これからも苦労しそうだな……。
でも、このルシナとの今の生活が、1番幸せに感じる僕だった。
「面白い!」
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