18.2人の美女
「セリン様! 助けていただきありがとうございますわ!」
「モルカ様、無事でよかったです」
僕が王国騎士団に捕まえた山賊を引き渡していると、ルシナとモルカ様が駆け寄ってきた。
そして、モルカ様は満面の笑みで言う。
「さあ、セリン様、助けてくれたお礼を込めてわたくしからは大量の謝礼金を用意しますわ! それから、セリン様がリーダーを務める『永久の輝石』の活躍も王国でお聞きしていましたわ。そちらへの出資もいたしますので、思う存分冒険者生活を楽しんでくださいな!」
「ありがとうモルカ様。でも、出資するって……勇者パーティから僕たちのパーティに出資先を変えるってことですよね? 僕たちのパーティはまだ実績が少ないですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まっていますわ! 勇者パーティ唯一の良心であるセリン様を追放するなんて、グレイクは大馬鹿ですもの! パーティの資金管理に、ポーションや聖水などのアイテム管理、魔王領攻略の際は必ずセリンさんが敵拠点を偵察してから臨むなど、勇者パーティが円滑に魔王軍を攻略していたのは全てセリンさんのおかげでしたのに! 今すぐあの馬鹿な男たちを呼んで、説教してやりたいところですわ!」
「いいんです。モルカ様。その気持ちだけでありがたいです。それに、僕は今のパーティに満足してますから」
「セリン様……」
僕のために全力で怒ってくれるなんて、モルカ様は本当に優しい人だ。
その気持ちだけで、感動して涙が出てくる。
すると、ルシナが僕の腕に腕を絡ませてきた。
そして、モルカ様ににこっ、と微笑んで言う。
「セリンさんは、たとえ姫様が相手だとしても渡しませんから!」
ル、ルシナ⁉︎
いきなり何を言っているんだ⁉︎
そして、ルシナとモルカ様の視線がぶつかると、激しい火花が散り始めた。
うう……2人ともなぜか満面の笑顔なのが怖いな……。
「セリン様? あなたの隣にぴったり密着している美少女エルフは誰なのかしら? まさか、わたくしが知らない間に親密な関係になっていませんわよねえ? 浮気ですか?」
僕が全力で首を左右に振ると、モルカ様は大きな胸を張って得意げな顔になる。
「セ、セリンさんは私のものなんですからね! ほら、こんなに肌を寄せて密着できるのは私とセリンさんの親密な関係だからですよ!」
「わたくしはまだセリン様に抱きついたことがないのに! 今すぐ抱きつくのはやめなさい! この泥棒エルフ!」
「ルシナとモルカ様……あんまり騒ぐと王国騎士団さんたちの迷惑になるから……」
「「誰のせいだと思っているんですか!」」
なんで僕が怒られるんだ……。
その後、モルカ様の執事が駆けつけて止めてくれるまで、ルシナとモルカ様はずっと僕の両腕から離れなかった。
どうしてこうなったんだ……。
「面白い!」
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