17.救出
洞窟に着くと、奥ではモルカ様が拘束されていた。
そして、その周りでは山賊が下衆な会話をしている。
「おいおい! 姫様はとびっきりの上玉じゃねえか! こいつを魔王に引き渡す前に、俺たちのストレス発散に付き合わせてやるか!」
「ああ。俺もこの頃溜まってるんだよなあ! こいつに俺のアレをぶち込んで、ヒイヒイ言わせてやるぜ!」
「や、やめてください……!」
なんてクズな連中なんだ。
人類を理不尽に苦しめる魔王軍に協力し、さらには女性を無理やり犯そうとするなんて許せない。
すると、山賊の1人はモルカ様の腰まで伸びたピンクの髪を掴み上げると、大きな胸を触ろうとする。
いけない!
早く止めないと!
「ググル、モルカ様を囲んでいるあの山賊たちを陽動して引きつけられるか?」
「ああ? なんでワシがそんな危険なことをしなくてはならねえんですか。それより、見てくださいよセリンさん! モルカ様の豊満な胸……髪を掴まれただけでぶるんぶるん揺れてるぞ?」
「早く! 後でモルカ様にググルの勇ましい活躍ぶりについて、たくさん伝えてあげるから!」
「王女のために命を懸けて助けに行くなんて流石は王国最強のセリンさんだ! 男ググル! セリン師匠に習ってこの姫様を襲う卑劣な山賊共をぶっ潰してやるぜぇえええええ!」
やはり、ググルってちょろいな……。
ググルが大声を上げて山賊の前に立つと、山賊たちはモルカ様から離れて剣を構え始めた。
助けるなら今だ!
僕はモルカ様の元へ駆け寄ると、スキル『筋力強化』を使い、モルカ様を拘束していた手錠を壊す。
「モルカ様、助けに来ました」
「まあ、セリン様じゃないですか! どうして、勇者パーティから追放されたのですか? わたくし、セリン様が勇者パーティを抜けたと聞いてから、心配でこうして毎日探していたのですよ?」
モルカ様はそう言うと、満面の笑みを浮かべた。
しかし、僕を毎日探していたなんて驚いたな……。
僕が勇者パーティを追放されなかったら、こうして山賊に捕まることもなかったと考えると、申し訳ない気持ちになる。
その時だった。
「おい、そこのガキ! 俺たちの捕虜に何してくれてんだ? 手錠を壊すなんて、ぶっ殺されてえみたいだな!」
「殺すのはやめておけ。このガキは奴隷商にでも引き渡して金にしたらいい」
「ハハッ! そりゃいいな! この汚えコボルトと一緒に半殺しにしてから金にしてやるぜ!」
気づけば、僕とモルカ様は山賊によって取り囲まれていた。
陽動していたはずのググルはというと、山賊の1人にボコボコにされている……。
王国騎士団はどうしてググルを倒せなかったんだろう……?
「さあガキ、その王女を渡せ。今なら半殺しで済ませてやる」
「断る」
僕は剣を構えると、モルカ様の前に立った。
「おいおい! ガキが一丁前に剣なんて構えてどうすんだ! グハハッ! お前、俺たちにぶっ殺されてえのか?」
「さあ、それはどうかな?」
「生意気なガキじゃねえか! 雑魚は雑魚らしく無様に俺たちに殺されとけばいいんだよ!」
「スキル『蜘蛛の巣』!」
僕は両手を突き出すと、蜘蛛の糸が真っ直ぐ放たれる。
そして、蜘蛛の糸はあっという間に山賊たちの身体を拘束していた。
「糸が絡んで動けねえ! お前ら助けてくれぇえええええ!」
「なんて粘着力だ……剣で斬っても糸が切れねえよ!」
すると、ググルが驚いた顔で駆け寄ってくる。
「セ、セリンさん! その圧倒的なスキルはどこで手に入れたんですかい?」
「ああ。ジミ村の宿場に泊まってた時、部屋に体長2メートルはある巨大な蜘蛛が大きな巣を張っていたから『窃盗』でスキルを奪って安全に処理したんだ。いや……このスキルが相手を簡単に拘束できるスキルだなんて思っていなかったから、嬉しいよ!」
「セ、セリンさん! その蜘蛛系の魔物! マキシマムスパイダーといって、ワシ達魔物ですら恐れるレアな魔物ですよ! まったく……相変わらずのチートぶりですね……」
ググルはガクガク肩を震わせながら、そう言った。
よくわからないけど、僕は運が良かったみたいだね。
その後、ルシナとベルクさんたち王国騎士団が駆けつけてきてくると、僕は拘束した山賊全員を引き渡した。
なんでも、この山賊たちは魔王軍の傘下組織らしく、度々貴族や王家の人間を狙い、襲撃して大金を得ていたそうだ。
まったく、私欲のために人類の敵である魔王軍につくなんて、世も末だな……。
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