15.ネックレス(ルシナ視点)
「ルシナは僕が守る!」
コボルトのググルが大量のナイフを投擲すると、すかさずセリンさんがスキル『窃盗』で、ググルのスキルを奪う。
な、なんてかっこいいのでしょう……。
私、見習い冒険者のルシナは恋をしていました。
それは、世界一かっこいい冒険者こと、セリンさんにです。
「だ、だって当然ですよ! セリンさんはどうしてこんなにかっこいいのでしょうか! 偽の薬商人を見破る慧眼に、悪を決して許さない正義の魂! こんな素敵な男性と出会えるなんて、私は幸運すぎますよ!」
ここはジミ村の宿部屋。
私は布団の中で一人悶えると、セリンさんの匂いを感じていました。
ふふっ……幸せです!
そして、思う存分セリンさんがいないうちに匂いを楽しむと、村の役場へ向かいます。
役場にて。
「セリン様ぁ、あたし達とジミ村に住んで一生イチャイチャするのはどうですかあ?」
「そうよセリン様! 私たち、あの処女エルフより夜のスキルは一流よ♪」
「はは……」
セリンさんの周りではいつものように村娘たちが誘惑していました。
くっ、処女エルフで悪かったですね!
でも、私のほうが100倍……いや、1000倍セリンさんを愛しているんですから!
しかし……。
セリンさんはまんざらでもない表情で村娘たちと話していました。
いくら鈍感とはいえ、腹が立ちます……。
私が頬を膨らませている間も、セリンさんは村娘たちと楽しげに会話をしていました。
許せませんね!
「セリンさん! 帰りの馬車を待たせているんですから、早く皆さんに挨拶してギルドに戻りますよ!」
「え……でも、せっかく、皆と仲良くなれたんだし、もう少し……」
「駄目です!」
私とセリンさんは挨拶すると、村人たちの歓声を浴びながら帰路につきます。
そして、馬車の中。
私が不機嫌そうにしていても、セリンさんは村人さんたちからいただいたアイテムを見て楽しんでいました。
どうしたら、セリンさんは振り向いてくれるのでしょうか……。
思わずため息をつくと、楽しそうなセリンさんが目に入りました。
くっ、無邪気な男の子の一面も素敵すぎますね……。
私の想いに鈍感なセリンさんに怒りが増すものの、セリンさんを見ているとどうしても好きという気持ちが溢れてくるのでした。
も、もう……どうにかなりそうです……。
すると、セリンさんが私に手を差し出してきました。
「そうだルシナ」
「はい……?」
「これあげるよ」
「これって、ネックレス……?」
セリンさんが渡したのは、赤いネックレスの魔道具でした。
「ああ、ジミ村を出る前に、村娘たちが身につけていたアクセサリーをルシナは羨ましそうに見てただろ? だから、買っておいたんだ」
羨ましそうにアクセサリーを見てた……?
ああ。
それは、私がセリンさんを嫉妬していたときに睨んでいたからですね……。
もう、セリンさんは相変わらずの鈍感っぷりで呆れるばかりです。
ですが……。
私がネックレスを身につけると、セリンさんが楽しそうに笑ってくれました。
「も、もう……大好きですよセリンさん!」
「⁉」
私はセリンさんの腕に抱きつきました。
だって、セリンさんは知らないでしょうが、私の暮らしていたエルフの森では、男性から女性にアクセサリーの贈り物をする時は、結婚を申し込むプロポーズの意味があるんですよ?
こんなの夢みたいで嬉しすぎます!
「ルシナ……馬車の運転手さんが見てるから恥ずかしいよ……」
「鈍感なセリンさんへの罰です! もう、死ぬまで離さないんですから!」
「は、恥ずかしいから勘弁してくれよ……」
こんなに優しくて誰よりもかっこいい人を、絶対に離すわけないじゃないですか!
この時、私は絶対にセリンさんを振り向かせると、強く覚悟を決めたのでした。
「面白い!」
「続きが早く読みたい!」
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