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01.パーティ追放

「セリン、お前を勇者パーティから追放する」


「え……?」


 魔王領の攻略中。


 僕は勇者グレイクに追放を言い渡された。


 突然のことに驚いていると、グレイクはニヤリと笑って言う。


「何驚いた顔をしているんだ? セリン、お前は何も役に立たねえクズじゃねえか! お前が有能だったらパーティに残してやる価値もあるかもしれねえが、お前は勇者パーティに所属してどんな功績を残してきた?」


「そ、それは……」


「言えねえだろうな。お前は俺たちの後方でちょこまか攻撃することしかできない無能だからな!」


 確かに、グレイクの言う通りだった。


 勇者パーティの一員としては、僕はグレイクのような圧倒的な攻撃力もないし、盾としてパーティを守れる騎士のように防御力に長けているわけではない。


 ましてや、魔術師のように後方から凄まじい魔法を食らわす火力も出せなかった僕は、パーティ内で役立たずの無能として浮いていた。


 思い返せば僕は、パーティの癌だったのかもな……。


 でも、僕は魔王を討伐するために、これまで命を張ってきたんだ!


 きっとグレイクにも、僕の魔王を倒したいという熱意は伝わっているはず!


「なあグレイク、今まで僕は勇者の君と共にたくさんの死地を乗り越えてきた。それが今更、役に立たないからパーティを抜けろだなんて、あまりにも冷たすぎる仕打ちじゃないか? それに、祝福の儀でレアスキル『窃盗』を与えられた僕を、真っ先に勧誘してくれたのはグレイク……君じゃないか!」


「レアスキル? おいおい、俺たちはお前のそのハッタリに騙されてイラついているんだぜ? なあみんな!」


 グレイクがそう言うと、パーティの女騎士と女魔術師が頷いて言う。


「レアスキル持ちだと嘘をついてまで勇者に媚びてパーティに入るなんて、どこまで救いようのないクズなんだ。それに、本当はスキルすら使えない無能だったなんて、呆れるばかりだ」


「そうねえ。あたしたちに憧れるのはわかるけど、無能の分際で調子に乗りすぎよね。ゴミクズセリン以外の私たちは皆、正真正銘の超レアスキル持ちなんだから♪」


「嘘はついていない! 僕はあの日、確かにレアスキルを受け取って……」


「うるせえよ雑魚野郎!」


 一瞬のこと。


 僕はグレイクに首を掴まれると、軽々と持ち上げられて絞められていた。

 

 抵抗しないと死んでしまうが、力が強すぎて抜け出せない。


 流石レアスキルの力だな……。


 僕のスキル『窃盗』なんかじゃ比べ物にならない圧倒的な力だ。


 そして、この力の差が、だんだんと自分の無力さを思い知らせているような気がして涙が出てきた。


「泣いているのか雑魚セリン? ブハハ! お前は本当に惨めで醜いクズ野郎だな!」


 僕はグレイクに投げ飛ばされた。


 すると、グレイクは侮蔑のこもった顔で言う。


「もういい。最初は元パーティメンバーのよしみで俺様が直々に殺してやろうと思ったが、雑魚すぎて殺す価値もねえ」


 グレイクはそう吐き捨てると、「行くぞ!」と背を向けた。

 

 他のパーティメンバーも僕に目を向けず、楽しそうな顔で帰路につく。


「僕の……勇者パーティで過ごしてきた日々は……全部無駄だったのかな……」


 そう考えると、僕は膝から崩れ落ちて泣くことしかできなかった。


 魔王軍から人類を守るために戦ってきた僕の決死の覚悟など、彼らにとっては迷惑なものだったのだ。


 すると、遠くから狼の遠吠えが聞こえた。


 そうだ。


 ここは魔王領。


 気を抜いたら魔物に襲われて殺される危険があるから早く逃げないと。


 僕は地面に置いていたカバンからスカーフを出そうとした。


 スカーフは、勇者パーティの一員として功績を上げた時に、国王からいただいたレアアイテムの1つだ。


 スカーフを着ることである程度の強さの魔物の視界から透明化し、姿を消せる効果がある。


 とりあえず、スカーフがあれば王国には帰れるだろう。


 しかし。


「え……アイテムが何もない……」


 僕のカバンの中にはアイテムが1つも入っていなかった。


 はは……なんて酷い仕打ちだ。


 おそらく、僕がグレイクに首を絞められていた時に、パーティメンバーに盗まれたのだろう。


 僕のアイテムを全て盗むなんて、皆は僕を心の底から嫌っていたんだな……。


 でも、これからどうしようか……。


 グレイク達と違って、無能な僕には凶暴な魔物の多い魔王領を抜け出せる実力はない。


 かといって、このまま魔王領にいても、野垂れ死んで魔物のエサになるだけだ。


 前途多難だな……。


 僕はため息をつくと、とりあえず剣を抜いて警戒しながら帰路につくことにした。


 すると、女の子の悲鳴が聞こえた。


 いけない!


 助けないと!


 僕は周りの草木をかきわけると、声がした先へ走り出した。

「面白い!」


「続きが早く読みたい!」


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