「タ」行の巻
ダインバーント;
ロデロンの薔薇園の四人娘の一人。一応、最年長の姉ということになっているらしい。グリム・ガスタムは、これの種族名として適用されることがある。その人型の姿は離宮内や赤の城、後宮内でも度々確認されているが、誰も不思議には思わないらしい。文字通り第一級の貴婦人の姿であり犯しがたい気品に満ちている。が、時々見せる茶目っ気がひどく人間臭い味付けをもたらしているのも事実である。
トゥレマルク(ゼノワの夏の離宮)の南館(南翼)一階西端に自室を持つ。これを黙認しているゼノワの真意は測り難い。しかしこの部屋へ通常の人間が近付くことは不可能なのである。その隠蔽効果の作動主体が何なのか未だに特定できていない。もちろん、ダインバーント本人である可能性が一番高いのであるが、ゼノワ自身、またはトゥレマルク自体の機能である可能性も排除できない。テュスラ・オッシナ(メイファーラー・クレサント)とは非常に親しい茶飲み友達の間柄であるが、この二人の交渉には、いわく、ある名状し難い、ただならぬ気配があるのである、(ただし、私にとっては、まるで専門外なのであるが・・・)
エリクレアは、秘密の愛称であり、離宮内でこれを知る者は今のところテュスラのみである。
ダリドー伯;
辺境伯の一人。ギドンを目の仇にしているが、その実態は盗賊騎士団とさほど変わらず、同族嫌悪の気味がある。ただし、その率いるところの騎馬軍団はかなり優秀である。
その主城ブフリール・ダルガスには、かなり優秀な図書室がある。
ダリマン;
サイキスの一人。ヨナルクによって生み出されたらしい。その正体は不明。その三次元的形態は誰にも確認されていない。非常に気紛れな変移・憑依形態をとる。どこにでもおり、どこにもいない、というところか?これの存在を認識できる人間はひじょうに限られる。
チュリス;
虫売りの少年だが、ひょんなことからグロムハイン家の執事見習となる。両世界首都に名高い出世譚である。弟ナグリスも同家に仕えている。
『糸』の使い手。
この糸と、例のムカデ人間の使う糸には、文字通り、何らかの繋がりがあるとの説も存在する。
この糸の複雑怪奇極まる錯綜体を一刀両断に断ち切ることができるものこそ、この物語の真の主人公である、との噂・・・、これが、剣の物語である、という噂・・・ まあ、いろいろあるわけである。
チラン・カスム;
北方ムカデ人間の王。真に魔王と呼ばれるにふさわしい存在。もちろん、この人間界における次元の話であるが・・・ 後、リュドミン・パラと融合する・・・、
アトゥーラに対する執心はまったくもって尋常ではない。
中央山塊下の黒小人族の地下帝国を壊滅寸前までに追い込んだムカデ人間族の王族の最後の一人であり、アトゥーラの無意識の力能の行使により辛うじて死地を脱出、北方へと逃れた。この辺りの機微はなかなかに察知し難い。
テネブラ・マルホーン;
バランクレー街屈指の老舗だが、裏の商売─即ち密輸の方もお盛ん。奉行所とのこねもしっかりしていて抜き打ちの手入れなんぞも怖くない。
また、大門政庁の副官エミーダ・ベッサラとは秘密裏に協力関係にある。すなわち、水郷地方を舞台とした大掛かりな抜荷の算段はほぼこの男の裁量による。
テュスラ;
サイキスの一人。ヨナルクによって生み出されたらしい。その正体は不明だが、現在は一人の寡婦の体を借りている。とりあえず黒の娘達の第二席に納まっているのが不思議といえば不思議である。その宿主メイファーラー夫人については別項を立てる必要がある。
もちろん、この第三現象界において三次元形態を保持する為に宿主の身体が絶対に必要であるという訳ではない。但し、宿主の積極的な同意の下に憑依活動が可能な場合、様々な利点が生ずることは事実である。
ドゥーナ;
森林蜜蜂の一種。働き蜂である。
ドゥーナ・カンシスタ・ポラヤーマーナナァ、 長ったらしいがこれが正式の名前らしい。
女王ユーサリパンに使える最高級の女官。
以下、先の欄外注を再録するが、曰く、
「正確には、女王ユーサリパンの最側近サークル「ドゥーレンアサイラム」全12席中の第8席、
非常に高位の女官なのである。当然採蜜等(外勤)或は建築等(内勤)の義務はない」
上の内勤には、当然、子育て、も含まれる。
アトゥーラとの直接的接触(不本意なものではあったが)は、当然この女にもある本質的変化をもたらす。
のちに、劇的な境涯の転変(肉体の変化を含む)を味わうことになるが、それは愛人(運、不運を問わず)たち、全てをも巻き込む特異な大渦巻きにも比すべき奇怪な現象なのである。
トゥリアンカル;
第一公女メギア・ドルカニの直属護衛団-第一親衛隊の通称。時に甚だ突飛な行動をとるメギアであれば、その心労は並大抵のものではない。よって実力第一主義、かつ、選りすぐりの術者たちが集まっている。全て女性。最年少8歳から91歳の高齢まで、大変な集団なのである。
ドォムル・レェスカー;
皇太后宮外局・書記官房長官
冷徹で鳴るが何故かテュスラとは気が合うようだ、もっとも表向きはツンケンしているので、
これは所謂、ツンデレというヤツか? いや、デレたとこなど誰も見たことはないのだが・・・
ドスル少尉;
若手法服貴族の一人だが、趣味で夜警隊に入った変り者。
ドナドナ;
人形師、傀儡師として世界を遍歴しているが、その正体は不明。同日同時刻に全く異なる場所で目撃、確認されている事実が多数あり、その複数性を指摘する向きもあるが私は疑わしいと思う。
トバエ・レンシュリエル;
メギア・ドルカニの第二副官。その親衛隊トゥリアンカルの隊長を兼ねる。第一副官シレイラ・アスコーンとは、所謂犬猿の仲、と見える。
ドラコ・ドラコ;
中の海(熱湖)に生息しているらしい超巨大生物。その全体を見極めた者は未だかつてない。かつてこれを観察して、星の意識の具現化したものと見なした科学者がいたが、私は疑わしいと思う。全ての生命の母であるという説、暗黒の銀河系間空間を遊弋する宇宙鯨の一種であり、その一族の最後の一頭である、との説もある。ただし、いかなる証明も存在しない。単なる空想の産物との見方もある。超銀河団をも包摂する意識のリンクの結節点、と呼んだ者もいる。「光の関節」と呼ばれたこともあるらしい。しかし、これは誤認である。
本体の移動がいささか困難であることから、無数の同位体を隣接する無数の世界に放っている、この世界へは、確認しえた限りでは、約三体、すべて人間型である、もちろん、みかけだけのことであるが、これを実際検証できたものはいない、まあ、当然である、
判明している名前は三つ、
オルホノウ・カザーン(クレプシ家のオルホノウとは、別人なのかどうか、調査中)
カレアナ・デヴィスターラ
アナンナ・アニャーン
彼女達三人は夫々独立項を立てる価値がある
ドランケン;
トゥレマルク西岸壁下に住んでいる船番。非常に醜く、唖である。庭男との関係には何かただならぬものがあるが詳細は不明とするしかない、
トリクトゥ・ミュウア・ネフェルルス;
トリクトゥア・ミュオウェル・ネフェルルス、とも。
猫女。フェズ家を主宰する長身の美女。その実体は、アグライア(猫)である。
ドリーズ卿夫人;
大変な美人。非常に頭の回転が早く自分でもそのことを知っている。
トリスタン;
ダインバーントに仕える家具職人兼小間使い兼その他もろもろ。
その正体は、森林大山猫である、という説がある。
トゥリアンカルの非正規潜入工作員である、という疑惑? 噂? がある。
ドリュムフォーンズ;
ヨナルクの使用する宝剣。先史時代より存在しているらしい。その正体は一種の魔神であるが、非常に強力な魔法障壁を併用できない限り制御することは不可能なのである。貴重な遺物であるにもかかわらずヨナルクはかなりぞんざいに取り扱っている。
ドルナ・ゴンケルム;
北の大門の門主。五星公の一。ビルナとは非常に特異な二重存在の関係にある。
翼ある人間・・・ 鳥人類とも分類される、その起源、同族の有無、生態の真実は神秘のヴェールの彼方にある。
その超絶の美を誇る天翔る翼は、見る者の欲望に応じて変幻自在に変態するらしい、ひとつとして同じ証言がない。
北の大門は、正確には! ただ一本のひょろ長い塔なのだが、どこにも出入り口が無く、約100スパンの高さまで全くのノッペラボーである。そこから上方の壁面には無数の大小様々な巣穴が穿たれ、現生鳥類のほぼ全てが思い思いに営巣している様は大変な圧巻である。(そのそれぞれが、その種族の鳥の王なのである) この塔の材質は不明だが、非常に美しい緑色、否、翡翠色であり、それ故か、これを北の大門と呼ぶ者は誰もいず、ただ、エメラルドタワーとのみ通称されている。このタワーの最上層にごく質素な、しかし至極快適な半球形の住居があり、ここにこのゴンケルム姉妹が住む。無論、普通の人間には、出入りすることは全く不可能である。しかし、姉妹の神秘的な美しさに目が眩み、ここに夜這いをかけようとした男がいたことは特記すべきだろう。ドルナは普段ドルーと呼ばれることを好んでいるが理由は定かでない。
これを鳥のイデアの塔と呼ぶ者もあることを付記しておく。
ここに住まう鳥たちの食料が一体何であるのか・・・
もちろん、肉食性の猛禽も小鳥たちを襲って食べたりはしないのである。否、この問題は避けて通るべきであろうか。
・・・ ・・・ ・・・
食料といえば、姉妹二人が日常何を食べているのか、これは当然気になるところである。これは先の問題ともデリケートに関連してくることである。
ドロスコ・デナムハイン;
バイメダリオン分隊長。グエンドーとは好敵手であるが、非常に仲がよい。
ドロステワ・アグラ・ドルカニ;
ドルカニ公の第一夫人。メギアとステアマケイアの母。




