「カ」行の巻
カイアス・ポレマンドーズ;
ゼノワの離宮、トゥレマルクの奥向きに仕える侍女集団─黒の娘達─の一員。お転婆。しかし、お転婆がすぎて薔薇迷宮へと没入。以後、その運命を誰も知らない。マゲローネとは親友である。
ガイ・グロムハイン;
バシュラ・フェズとは乳兄弟であるが、その性格は対照的。自分では変装の名手だと思っている。あらゆる階層、あらゆる年齢の女に対し平等無差別の愛を注ぐこと(極めて即物的かつ生理的意味合いを含む、という・・・)を誓っている・・・らしい。リューニスの弟。
その姉弟愛の真の位相を探ることは、今の私の手には余る。
ガッダ・アトゥーラ;
北部低地沼沢地方の方言では、ガッダは、邪眼を意味するが、その語源は不明である。無数にあるアトゥーラの仇名のひとつにすぎないが、有名になりすぎたようでもある。
無論、このヨナルクの命名行為が、非公式かつ私的なものであることは明白なのではあるが、その影響の大きさを鑑みれば、あるいは、この名こそ、この男が真に望んだ第一の名=名付け、であったのかもしれない。
カーノイ;
ヨナルクのアナグラム。単純である。しかし、この一見間抜けな思いつきのような変名は後に重大な結果を生む。
F修道団のカーノイには主に二つの異なる活動面がある、一つは遍歴そのものを目的とする無限遍歴修道僧として、もう一つは、石碑、石像の蒐集、研究家としての側面である。
F修道団の上位団体ガラン・クローム修道会の中枢を構成する主要団体の一つ、正規図書館には不定数の研究部門があるが、その内の一つ物神研究会(非常に閉鎖的な特権階級を形成しているサークルであるが)の主要メンバーとしてカーノイ・タントラムの名が挙がっていることは興味深い。カーノイ・ファンダン・グントラムなる名も挙がっている。
カランソット;
ロデロンの薔薇園の四人娘の一人。
一応、第三女ということになっているらしい。ドゥラ・エムスタードは、これの種族名として適用されることがある。
好んで男装の傭兵に身を窶し非常な長距離を出歩くのである。ロデロンを離れ、否、ワルトニアをさえ離れて遥か砂漠地方へまで遠出をするのはこの娘一人のみである。
何故そのような非常識な芸当が可能なのか、謎なのである。
ガルデンジーヴス;
西の大門の門主。この場合、モンスと読む。五星公の一。他の四人とは違い、名を持たない。というよりも、これが苗字なのか通り名なのかも定かでない。ガルデンジーヴスなる一語には絶大な威力が篭っているようだ。誰もガルデンとも、ジーヴスとも省略し発音しようなどとは思わない。どれほど面倒臭くても必ず「ガルデンジーヴス」と、ちゃんと発音するのである。
その妻、スワン・ガルデンジーヴスについては別項が立てられている。
西の大門政庁における実務責任者、ガルデンジーヴスの実質的副官、
ジェム・ジェム・コード・インスについては、別項が必要、また、その配下の二人、
ターナ・ドルゴイスティーン
エミーダ・ベッサラ
についても、いずれ別項を立てる
7つある支門をそれぞれ支配する各門長について
北から順に
第一門:ゴレモク・・・
第二門:ザハラン・・・
第三門:ピラトゥーサ・・・
第四門:マイマンサ
第五門:バトラン・
第六門:タチアナ・・・
第七門:リューモラン・
門長の権能について
カワカマス;
偉大なベオリグ・バスマンの転生術との関連が疑われる不可思議極まる存在。
或は非在。
サイキスなどの次元間生命体とも明らかに相違する。
最も遠い、遥かなる超越的視点にのみ関われば、これは、イヨルカの転生とも連関している可能性がある。星の光を飲む存在として、辛うじて追跡されうるがこれは微妙極まる仕事であって、そもそも不可能に近い難事である。
そして、この存在が意識を持つという事実は、この森羅万象と意識との根源的な関係についてある特殊な鍵を提供する。しかし、ベオリグ・バスマンによる極限的な追究によっても遂に捕らえきることができなかった幻のお魚である、なのである。
ヨナルクを捕え運んだ例の井戸が、バスマンの創造物、その身体の一部、などであった、などという珍妙な説がある。
ギドン・オルケン;
狼伯爵。グービ・オルケン辺境伯。黒の森南西部、ベラン高原一帯を領有すると自称する。
その巨大な剣ゲイルギッシュの抜き撃ちは神速をもって聞こえ、その間合いを測りきったものは未だかつて存在しない。その剣の影を見たものすらいない。いや、唯一人を除いては、と言うべきか。
非常に気ままで豪快な性格ではあるが、女に関しては妙に細心。放浪を好み、数十箇所におよぶ自領の城塞、砦などを転々とし、一箇所には滅多に長く留まらない。
のち、名目的に辺境伯領を返還し、(ゴーリヨン・ファドフロクス、或いは、
バラトンガー ゴウメントゥリアー)北部方面遊撃軍団司令官を拝命、軍団長となる。ただし、実質は何も変わっていないのである。
グエンドー・バガガンス;
グービ・オルケン辺境伯領を根城とする交易商人、と自称するがその実態はギドン麾下にある山賊騎士団バイメダリオンの分隊長。
クサンドル・メイファーラー;
テュスラ・オッシナの宿主。寡婦である。ある日、サイキスの一人と特異な契約を結ぶ。その本来の肉体の所在は秘密となっておる。→ メイファーラー・クレサント
これが本名、真名である。なにゆえ、かかる、二重の名称を持っているのであるか、追求すべき事柄ではある、
現在の肉体がテュスラとの分有同位体である可能性・・・
その力能の超絶的な威力については、不可解な点が存在する。テュスラの本体が分離・離脱している状態においても発揮されるその能力の実体、起源、限界等については謎が多い。
グラーム・ドルカニ;
青の王、ム・パラク・キャムメリダルの実の弟であり、代々、湖の騎士を名乗る。通称ドルカニ公。中の海─熱湖の中央部、ほぼ三分の一を領有する。
その奥方ドロステワ・アグラ・ドルカニについては別項を立てる必要がある。
その娘第一公女メギア・ドルカニ、第二公女ステアマケイア・ドルカニについても同様。
クルワソワ・ワルトランディス;
ゼノワの夫。永遠の夫、というべきか、いな、これは先走り過ぎのようである、南海諸島ユーフラステヴィシア出身。若くして病死。この二人の結婚の「真相」については実に様々な諸説・珍説が入り乱れており、およそ確定は困難というべきか、
しかし、この、若い二人の、不可思議極まる交渉過程、複雑怪奇微妙極まる心理戦の有様には無限の興味をそそられるのである、
グレ・シーアム;
赤の城の武器庫長。からくり蒐集狂として名高い。
グレイゼル・キャムメリダル;
青の王第三王子。絵に画いたような騎士。光の騎士、銀甲の騎士とも。本人はいたって謙虚である。念願かない中世期そのままの遍歴の騎士となり黒の森に侵入するがほどなくバイメダリオンの一支隊と交戦、これを撃破するも、ひどく上機嫌なギドンの追撃にかかり激闘の末、捕虜となる。重傷を負うが、賓客扱いにて黒の森真奥部のギドンの廃城─サガン城─に長逗留。そのころ行儀見習兼下働きの下女として同城下にあったアトゥーラの看護を受ける。
グレイゼルの水際立った騎士ぶりは迫害の日々の中にあったアトゥーラに圧倒的な印象を与えるがこれこそ長きに渡る不幸な、かつ不毛な─と私は言いたい、恋の始まりであった。なぜならば、この男は、こともあろうにアズレインを愛したのであり、しかもその行為のほとんどすべてがアトゥーラの目の前で何の情け容赦もなく行われたのである。
グレオファーン;
蜜蜂ドゥーナの秘密の愛人と目されている、一部識者の間(マニアックな連中)ではそこそこ有名な哲学者、絶対的懐疑主義者と訳されてもいるらしい。その正体は・・・
黒の娘達;
ゼノワの離宮、トゥレマルクの奥向きに仕える侍女集団。本来の定数は十二人であるが当時(アトゥーラ出生時)欠員が二名あり、十人がゼノワに仕えていた。その凡その名前と席次は次の通り。
タマーラ・クヴィッチェス・・・・・・・第一席:団長(女官長)
テュスラ・オッシナ・・・・・・・・・・第二席:副団長
ヘンデルツィリア・ミューリガンタス・・・第三席:納戸長 文庫長兼任
空席(前任:レギオローネ・ガラドドース・第四席:書記長(文庫長)
サーミン・ヘンゲロパールス・・・・・・第五席:第一班長(第七~九席支配)
バルカルス・ハルドレイニア・・・・・・第六席:第二班長(第十~十二席支配)
空席(前任:トースキス・レドイリーン・・第七席
ベイジサントム・アリサントゥワ・・・・・・第八席
トゥールドマスティン・エンケルバイン・・・第九席
カイアス・ポレマンドーズ・・・・・・・第十席
マゲローネ・プレトミアーネス・・・・・第十一席
チェルジ・グゥノウ・ピピアムダス・・・・・・・第十二席
この十人の下にさらに見習いの少女が四人
マグジーヌ・ドレスディン
ニケアス・アドレイアス
ポーリン・ニュインスティル・ルー
ララ・カベストン
この娘たちの出自は様々であるが多くは下層階級の出身であることは注目すべきである。
グロムハイン伯;
エメンノーズ・グロムハイン。宮内卿。リューニスとガイの父。色好み。
ゲイルギッシュ;
ギドン・オルケンの使用する巨大な剣。その正体は一種の魔神。
ケズル公爵;
トゥレマルク地下回廊の住人。原子物理学者。拡張主義者。この男がゼノワに説得され地下に隠れ住むようになった理由は定かでない。流体に関しては専門家。
ケデル少佐;
夜警隊分隊長。西町奉行配下。
四角四面の法文万能主義者。
鳴く小鳥を飼うのが趣味。
ゲラン・モーツィマ;
ジャタカ分塞農園主。代々この地を治める小領主であるが、伝来の館ジャタカ・フォーンスト城をドルカニ城西方分塞として接収され奇怪な塔の建設を強要される。しかし、塔の主として移り住んだステアマケイアには心よりの信服を寄せ、むしろ、無条件的な愛をもって仕えているといってもよい。
熱湖の三分の一を支配するドルカニ公の貿易公館総督を勤め有能であったが五十歳にして突然に引退し、以後長年ほったらかしであった領地の経営と悠々自適の生活に専念しようかという矢先のことであった。
妻デルフィン・モーツィマとの間に二男一女あり。夫婦仲は円満。やや独善的独りよがりの傾向あり。デルフィンは、かなり暢気な性格で、よくこの夫に仕えている。
一人娘であるケルアヌは、近隣の小地主の跡取り息子と結婚しているが、いろいろ悩みがあるらしく頻繁に実家を訪れお茶を飲んで帰るのである。
→ 嫁姑関係 息子と娘 不倫の噂
長男パッシート、次男ルジョルデンについても別項を立てる必要があるだろう。
ゲリダニ公;
大列侯会議の有力メンバーの一人。第一宮宰の地位に執着している。
ケルアヌ・モーツィマェ・マレドニカ・フォウルモニア;
モーツィマ家の娘。
五星公;
王都ルシャルクを囲む四つの主要門、事実上の大要塞を支配する謎めいた存在。その起源、王家への臣従の経緯、その真の意味、有史以前より不変のその姿形、全てが永遠の謎である。残る一つ、フェズ家の当主のみが純然たる人間種であり、その剣技のみにて、あらゆる力能を凌駕する。
北の門主:ドルナ・ゴンケルム=ビルナ・ゴンケルム
東の門主:バスコム・バルダヴィント
南の門主:パストウィート
西の門主:ガルデンジーブス
ムザラ・フェズ→バシュラ・フェズ
詳細は各項目を参照せよ。
【門に関する補説】
門・・・ 四つの門がある、これが重要である
各門の詳細、そして その本質、これが重要である
しかし、門は、まだもう一つある、これが重要である
しかし、門は、さらにまだあるかもしれない、これが重要である
有形の門と無形の門、この区別が重要である
無形の門とは何か、この答えが重要である
さて、門塞自体および門主自体に附属する権力・権能についても曖昧な点が多い、もちろん、門とは、純粋な機能であり、封建領主としてのあらゆる条件を備えているわけではない、すなわち、固有の領土を持たず、その権力の直接に及ぶ範囲は門塞内と城壁内、そして防御施設の敷地内(空堀・水堀・突出要塞、水上砲台等を含む)に限られる、だがその実質的な支配力は門の両側、内と外へと、無限に拡大し拡散する、
たとえば、ガルデンジーブス門塞は、首都ルシャルクの西半分、西町奉行の管轄区の上にも微妙にして強力な支配の網を投げかけている、なぜなら、昼間、街区へ流入する全ての存在は門塞自身と七つの支門を必ず通過するし、その認可と保証を受けねばならないからである、
(入市税、通過税、あらゆる物品税、特殊人頭税、等々の徴収および徴税・納税証明書=市内通行証・・・これらの携帯は市内での活動の絶対条件である)
市外へと流出・拡散する全ての存在にもまた、門塞の力は及んでいる、云々・・・
⇒五星会闘式
五星会闘式;
余りに長い、無為なる平和に倦んだ人間どもが編み出した究極の人工的全面戦争状態。
五星公たちがこれを受け入れ、承認し、自己の存在平面に取り入れたことは真に驚くべきことである。
通常、五星公の任意の一人が、任意の瞬間に、この「五星会闘式」を宣言するやいなや、
全ての各門塞は相互に全面的な戦闘状態に突入する。注目すべきは、この際、いかなる手段、計略、戦略戦術、非人間的、非道徳的を問わず、すべてが容認され実行されたという事実である。
ルーペンタリアの「五星会闘式全史」を繙けば、これによって生じた惨害は、文字通り想像を絶するもので王都全域が存亡の危機に直面したこと一度ならずであったこと明々白々なのである。
余りに無意味な破壊の集積を憂慮した王家そのものが再三中止を勧告し、また規模の縮小、期間の制限(無期限であった)、基本的道徳律の尊重、兵器の使用制限等々を提言するも悉く無視されてきたのである。また、その実行頻度も徐々に増大し、近くは3年に一度という有り様であった。遂に、ゼノワが強権を発動し、五星公としては例外的存在であるフェズの力能を前面に立て「式」そのものの改変を実行する。相互全面戦争の期間を5日間とし、決着無しとなれば、フェズの守護宣言下に入った任意の器物、または生命体(任意の人間が含まれる)の奪取を期限2日間として他の四星公に課す。四星公は単独でも、或いは協力しあってでもフェズに挑むが二日間を守りきれば勝負無しとして会闘式は即時解散、地水火風の一者がフェズを破ればその門塞が一年間の首座を得て全ての茶会の開催権限を握ることとなる。四門主の相互戦闘は、実質は西と東、ガルデンジーブスとバスコム・バルダヴィントの門塞同士の対決に北と南の両門主が援護につくという形を取る。風水どちらがどちらにつくかは、まったくの偶然に左右される。
直近30年間の内、6度開催され、全て勝負無し、フェズの守護完遂という結果に終わっているのは王都領民にとって幸いであった。市街の破壊、人命の損失は最小限に抑えられてきたからである。
コポル・ブランジート;
山師。交易商人。毛皮仲買人。どれも半分しか当たらない。その実態はバイメダリオン先遣分隊長。しかし、鼻が利くこと以外大して働かない。
五星会闘式について若干の補説をアプいたしました。20220414