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73.元S級冒険者、冒険者を否定する

後ほど、修整するはずです。


7/18修整しました。

大幅?だと思いますので、もっかい読んでほしいです。すいません。

「ほんじゃ、行きますか」


 3人仲良く手を繋ぎ、地下へ転移した。


 バードンの執務室や従業員控室、エントランスホールが無茶苦茶になってから、バードンはちまちまと片付けを行ったものの、修繕はできなかった。一般流通する家具を魔法で修繕することはもちろん可能。しかし、ここにあるのはダンジョン製。


 道具や工具、武器などの魔力の籠もった物は修繕が出来ない。単に製作者と魔力が違うからなのだが、そういった面倒な構造にしているのは、商売のためである。


 メンテナンスや修理は自店でやってもらいたい、そんな理由からそうなっているのだが、ダンジョンがそんな事を考えているはずもなく、便利な魔法で作り出しただけなのだ。


 修理できなきゃ買うしかないか、と思いリンに相談したところ、ユーリに代われと言われ、バードンはその段から外された。


 数日経てば、何故か全てが元通り。深夜に折れた受付の前に座っていたウネツ曰く、独りでに直ったとか。


 ダンジョンを知っているバードンに言わせればそんな気前のいい事をするわけがないのだ。つまり、ユーリがお願いしたに違いない。


 地下に着くと、魔物たちは一列に並んでいた。その先にはユーリが剣を持ち立っている。


「じゃあいくよー『フレイム』」


 刀身を炎が包みプスプスと細い黒煙が立ち昇る。


「熱っっっい!あちちちちち。『解除!』」


 持つことが出来なくなった剣を落とし、魔法を解くと煤で黒くなった刀身が寂しげに現れる。ユーリはしゃがみ込み指先でツンツンとその剣を触り、隣で腕組みする火の妖精、ダンジョンのジョンへ顔を向けた。


「なんで出来ないのかな」


「ボクに聞かないでよー。バードン君の方が詳しいと思うよー。聞いてみなよ」


「えー、お父さんに聞いたら怒りそうだもん。なんでそんなこと聞くんだ!冒険者は駄目だぞ!って」


「あー、ユーリちゃん、後ろ後ろ」


 ダンジョンであるジョンは、このダンジョンにいる全てのものの動きを把握している。転移しようが高速で移動しようが感じるし見えるのだ。

 一切バードンの方を見ないジョンだが、バードン達が来たことぐらいは知っていた。


 だが、ユーリは後方に父親がいるとは露ほども思っていなかった。恐る恐る後ろを振り返ると、額に手を当て、大きなため息をつくバードンがいた。


「冒険者か?」


「え?いや違うよ違う違う」


「冒険者になるつもりなのか?」


「んーいや、これはそのーあれだよ。護身だよ」


「……そうか。一応言っとく。冒険者は絶対駄目だ」


「……」


 違うと言ったはずのユーリは、その言葉を聞いても何も答えなかった。バードンも分かっている。両親が冒険者で、宿には沢山の冒険者達がやってくる。昔に比べれば素行が良く学歴もある冒険者達だ。未だに冒険者の地位は低いが、それでも昔よりはずっといい。


 そんな場所で育てば、冒険者が将来の夢になるのも分かるのだが、バードン一貫している。

 冒険者だけは駄目だとユーリが小さな頃から言い続けている。


 そんな親子と魔物達の中に交じるオタク気質の2人は堪らない。


 整列している種族の違う魔物達を見るだけでも、混乱するのに、肝心のバードンとユーリは絶賛親子の喧嘩中。軽快に走ってくるピクフォヴォスに驚き、バードンの影に隠れるのも無理はない。


「あー、バードン君!ボク言ったよね!ユーリちゃんの邪魔したら駄目だよ!」


 バードンはあからさまに嫌な顔をしながら、ジョンを見る。見た目も声も愛嬌のあるジョンにこんな顔を向けるのはバードンとハズレボンビーの面々ぐらいだろう。


「お前は引っ込んでろ。ユーリ、ちゃんと話して無かったな。ダンジョンと何か契約したのか?」


 ユーリは目を泳がせ、魔物達に助けを求める。だが、所詮は魔物。話せる者もいるが、知能は決して高くない。唯一助け舟を出してくれそうなダンジョンのジョンはと言えば、バードンの言葉で意気消沈。


 必要な事を必要な時にやったユーリだから、責められるいわれはないが、ここまでオロオロとするのはバードンが魔物を嫌い冒険者という稼業を誇っていないからだ。

 だから嘘をつこうかと悩みながら過ごしてきたユーリだったが、ここまで見られては隠すことなど出来ないと腹をくくる。


 父のためにやったのであって、この機に乗じて冒険者になるための特訓中であることは伏せようと。


「んーとー、うん。お父さんが死んじゃうと思ったから」


「そうか。どんな契約をしたんだ?」


「……毎日遊びに来てって言われた」


「他には?」


「それだけだよ」


「遊びって何してるんだ?この剣、本物か」


 バードンは落ちている剣を拾い上げた。確かな重みがあり、煤けているが両刃は鋭利に研がれている。

 遊びと言う割に随分と本格的な剣に、ユーリが持っている服の中では動きやすいものを着込み、買った覚えのない防具を装備している。


 遊びではなく、彼女なりに本気で特訓しているのだろう。バードンに隠すところを見れば、後ろめたさがあるようで、キツく叱ろうという思いも多少は和らぐが、それでもキチンと言わなければならない。

 黙り込むユーリを見やり、足元に拾い上げた剣を放る。


「本物だな。その装備もこの剣も。俺は買った覚えがないし、これのどこが遊びなんだ」


「……」


「冒険者だけは許さないからな」


 ユーリは何も言わず、足元の剣を見つめる。こうなる事は分かっていたのだから、隠していたのだ。こちらの言い分も聞かず、頭ごなしに否定されるから。

 何も言わないのは了承では無い。否定されても秘めたる夢はより一層大きくなっていた。絶対に認めさせてやるという冒険者への夢が。


 父がが成せなかった、母の魔力から生まれたと思われるダンジョン攻略、母を殺した魔人や魔物達の討伐。そして、バードン達を救ってくれた人々へお礼を言いに行く為に、冒険者が良いのだ。彼女なりに考えた、反抗期も相まった頑固な夢である。


 バードンは言い終えると魔物達に目を向ける。その首魁であるジョンは、ユーリが叱られているのを聞き、体の火を燃え上がらせ、威嚇するがバードンは気にした様子もない。


「対価が遊ぶだけなんてうまい話は無いだろ。他に何を要求したんだ?」


「教えないもーん」


「あの時一緒にいたのは、ミリスとアゼルか。2人に聞くさ。今日は質問があってきた」


「嫌だね!意地悪のバードンに教える事は無い!」


「ここの安全が脅かされてる。その為の質問なんだが答えないのか?」


「……フンッ!契約もあるから一応聞く!」


 バードンは後ろに隠れたウネツとケリーを前に押しやり、頷きで話せと促した。


 ただ腕組みする子供だが、身に宿す火や赤い角が魔物であることを思い出させる。愛おしくも恐ろしい魔物の前に立たされ、2人は怯えながらも言葉を捻り出した。


「あのー、魔力についてなんですが」


「魔力?それとこのダンジョンの危機とどう関係があるのかなー?それを教えてよ!」


「そ、それはね、ある人物がこの宿の魔力を調査していたのよ。だから、えーとだからー」


 ケリーもウネツもバードンの方へ振り返った。彼らでも何がこの宿にとって危険なのか分かるわけがない。流石にそれだけは説明してくれと、仏頂面のバードンへ目線で促した。


 その思いに気づいたのか、バードンは話し始める。


「あ、ごめんごめん。このダンジョンの調査の為に宿に潜り込んだ奴がいたんだ。どうやらこのダンジョンは格好の研究対象らしく、また州が動き出したり今度は国が動くかもしれないから、俺達も状況把握のためにここの事を知る必要があるんだよ」


「教えれば安全なの?」


「対策ができるかもしれないだろ」


「うーん、そーゆーことならまあいいけどー」


 どうも納得しにくい説明に嫌と答えるのは簡単だが、安定して魔力が手に入る今の状況を崩されるのも気に入らない。ダンジョンとて万能ではないのだ。ダンジョン内部でならできる対策は多いが、外部への対策となれば人間に頼らざるを得ない。このダンジョンの安全を約束したジョンとしては、その対策をやると言っているバードンに教えた方がいいのだろうと自分を納得させた。


「ケ、スカーレット、ウネツ質問してくれ」


 バードンは技術者2人へ場を譲った。

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