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scene.35 ある日の森の中



 初めての魔物討伐

大丈夫とは思うがやっぱりちょっと怖いからグレゴリー先生について来てもらうことにした俺は、マリアに見つかる前に出発する事を決めていた。夜のうちに準備をして日が昇る前に屋敷を飛び出したんだけど…



「おほほほ!さあ行きますわよオーリー!」


 馬に跨り勢いよく屋敷の正門を飛び出そうとした俺の目に飛び込んできたのは、腕を組み高笑いするマリアと、その横でじっと立っているマデリンの姿だった。

 なんで居るんだよこいつ……まだ4時前だぞ?どうやってこの時間を突き止めたんだ?


「ずいぶん早起きだなマリア……」


「私、朝は強いんですのよ!」


 それは何となくわからんでもない。マリアは朝0.1秒くらいで起きて笑ってそうな印象あるし。


「で?ホントはなんでこの時間がわかったんだ?」


「あちらの家を買い取らせてもらったのですわ!」


 グリフィアの屋敷の近くにあるこれまたでかい屋敷を指差し堂々と喋る女がいた。もちろんマリアだ。

 どうやらこいつはただの馬鹿だったようだ。


「そうかい……金で無理矢理追い出したんじゃないだろうな?」


 マリアが馬鹿なのは構わんが、俺が時間を教えなかったせいでご近所さんが泣いたとなれば放置できん。一度怒って家を元の住民に返させよう。そんで今日は付いて来るなと言おう、そうしよう。


「い、いやですわオーリー……そのような熱いまなざしで見詰めないでくださいまし……」


 見詰めてるんじゃなくて睨んでんだよ、アホか。


「えっと……あちらの住民は間違いなく喜んでくださいましたわ!仮住まいも用意してあんな家が何軒も建てられるだけのお金をお渡ししましたもの!おほほほほ!」


「……わかったよ。マリアは嘘言わないもんな……でも付いてきても邪魔すんなよ?」


 マリアは嘘を付く必要がない生き物だ。それはゲーム時代からそうだった。

 思ったことを口にして全てを手に入れる。彼女が白と言えば翌日には黒が白になるのだから嘘にはならない。

 

「もちろんですわ!」


 元気よく頷くマリアは程ほどに放置し……


「よし。待たせたなグレゴリー、行くぞ」


「畏まりました」


 チョビ髭メガネ紳士ことグレゴリー先生に声をかけ、馬で駆け出した。



 ◇ ◇ ◇



 王都から少し離れると少しずつ家が減っていき、職人や農家が増え始めた。

 ラーガル王都はよくあるファンタジー世界のような城壁に囲まれた都市ではない。ラーガル城こそ堅牢な城壁に囲まれているが、それも城下町から下町までで、下町から郊外までは特に壁のようなものはない。

 街を出ればすぐに田畑が広がっているし、都市部を出たあともポツポツと農家や牧場主のものらしき民家をみかける。

 石畳で舗装されているのは流石に下町までだが、郊外の道もそこそこ綺麗に舗装されていた。


 そしてそんな郊外を馬を休ませながらさらに3時間ほど進むと、ようやく開拓の進んでいない森や平野部に到着した。



「ま、この辺か?」


 周りを見渡しながら誰に言うでもなく呟いたつもりだったが、


「オーランド様であれば問題ないかと」


 グレゴリーからの了承も出た。

 と言う事で、ここで魔物を探して狩ろう!


「オーリーは何をするのかしら?」


「わかりかねます」


 ボソボソと話しているマリアとマデリンを無視して、馬を木に繋いで魔物を探す事にしたのだが……



「魔物ってあまりウロウロしてないんだな」


 雑木林を見つけたので何かいないかと歩き始めてしばらく経ったが、魔物は何も見つからない。

リリィみたいな考えなしの奴が<長耳兎(チューピッシュオア)>やら<丘狼(ランドヴォルフ)>やらを討伐しまくったと言うものだから、てっきりもっとそこら辺に溢れかえっているだと思ったんだけど…

 

「この辺りの魔物は縄張り意識も強く、互いに入り込んできた獲物を奪い合おうと牽制し合っているものが多いのでございます」


「なるほど。縄張りか」


 よくわからんが、魔物の中で誰が俺達を襲うか揉めているのか?

 ゲームの初級ダンジョンに出てくるような兎や犬っころが大した縄張り意識だな。



 そうして、もはや碌に整地された道もないような雑木林をさらにしばらく進んだところで………



「お待ち下さい。気配を感じます」

「お嬢様、私の傍を離れられないように」


 グレゴリーとマデリンがほぼ同時に反応を示した。


 なになになに?気配ってなに!?漫画とかアニメでみるあれだよな?

『むむむ!敵の気配を感じる!』とか言って、死角にいる暗殺者に気付いて先制攻撃したり、屋根裏の忍者に刀を刺したりするあれだよな?

 グレゴリー先生!俺、気配なんてわかりません!


「方角はわかるか?」


「左右におります。片方は………」


「私が対処します。グレゴリー殿はもう片方を」

 

 こいつら、息をするように連携してんな………

 やっぱり経験値の高い人間は応用力が違うようだ。


「任されました、と言いたい所ですが、こちらはオーランド様が対処いたします。私はカラドリア様にお怪我が無いように周囲を固めます」


 そりゃな!その為に来たんだし、ようやく見つけた魔物だ。まさか魔物を探すのがこんなにも大変だったとはな。帰ったらリリィの奴をもう少し褒めてやろう。


「了解した。オーランド様であれば問題はないと存じますが、お気をつけください」


 魔物に狙われてるってのに、こう言う時マリアは何も言わないし何も聞かないんだな。邪魔はしないって意味をよく理解してる


「任せておけ。兎か犬かわからないが俺の剣の錆にしてくれる!」


 魔物との戦闘童貞………捨てさせてもらう!!


「兎?いえ、ここにいるのは――」


 マデリンが何かを言いかけた瞬間、俺の目の前の茂みと、マデリンの方向にある茂みから同時に音がした。


 こい!魔物め!!!


「フルルル………」


 そうして目の前の茂みを鼻息を鳴らしながら掻き分けて出てきたのは…



「こ、こんにちは………」



「ガルルルルルグルル」  



 大きな大きな、クマさんだった。



 なるほど…………なんでだ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 例えRPGでレベル1だったとしても、 魔法に関しては中盤以上レベル、更に伝説級の装備 これで熊にどうやって苦戦しろというのか
[一言] 予定調和でオチの読める話が今のところ続いているのが原因かもですね。 まあそれが定番と言うべきものですが。 ただ、主人公のとる行動が「原作キャラに会うためにしてるとしか思えない」のは問題かなぁ…
[良い点] 一部だけでは物足りない! [気になる点] 二部まで書かれているのであれば、ぜひ読ましてください。 [一言] 仮に打ち切りにするならかけ足でも良いから、きりがいい所とかではなく、物語を完結さ…
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