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scene.03 よくあるゲームの話



 フェリシアとお茶を飲んでいる余裕がなくなった俺は、体調不良を言い訳に即座に彼女を部屋から追い出した。


「おおおおおおおちつけ俺!そもそも前世の記憶が蘇っちゃってるんだ、今更異世界転生だとかゲームの世界だとか、そんな些細な事で焦る事はない。それにまだそうと決まったわけじゃないじゃないか………もし仮に異世界転生だとして、だからなんだというんだ。前世の俺は日本生まれ日本育ちの生粋の日本人だ。日本人は異世界転生しがちな民族だからな。こういう展開になっても耐性がある。よかった、日本人が死んだら異世界転生する民族で……だ、大丈夫、俺は落ち着いている……」


 そうだ。ここがゲームの世界だと決まったわけではないし、そもそもあのゲームに幼少期の描写なんてなかった。少し偶然が重なったくらいで焦る必要はない。偶然に偶然が重なって死んでしまった俺が言うのだから間違いない。


 




 ゲーム『グランドフィナーレの向こう側』は男性向けPCゲームだ。


 ジャンルはギャルゲーとローグライクを組み合わせたようなものであり、日本人が大好きな中世ヨーロッパ風の剣と魔法とダンジョンが合わさった世界観で、ゲームの主な舞台となるのはラーガル王国と呼ばれる大陸の中心にある最古の王国だ。

 主人公はラーガル王国の田舎で生まれた少年だったが、ある日偶然、魔物に襲われている王女の一団を見つけて助力した所、お礼としてラーガル学園への入学を許可されて……と言う所から物語が始まる。



 ラーガル学園は15歳になると通う事が出来る教育機関だが、そこの生徒はその殆どが国内外の貴族で構成されており、平民が居たとしても優秀な魔術師であったり有名な冒険者であったりと既に世間から一目置かれているような者しか居ない。

 そんなラーガル学園に、王女の一団が魔物から襲われているところに助太刀に入っただけの何の取り柄もないただの平民である主人公は何も知らずに入学してしまうことになるわけだ。


 当然ながら何の実績もない主人公を……貴族ですらない主人公を快く思わない者は非常に多かったのだが、ただただ前向きに、直向に、出来ることを1つずつ全力でこなしていく主人公は次第に学園の人から受け入れられていき、ラーガル王国に襲い掛かってくる困難をヒロインと共に乗り越えていくという物語だ。そして……


 そんな学園生活の中で主人公と恋仲になるヒロインは5人居る。



1人目は、フェリシア=リンドヴルム

紫色の髪に紫色の瞳のいつも笑顔のおっとりヒロイン。

かつて龍殺しを成し遂げた英雄の末裔である彼女ではあるが、彼女自身は戦う事が好きではない。

王国の為、リンドヴルム家の為、小さな頃から自分の感情を殺して生きていた彼女はとても頭が良い。

頭が良すぎるために国を想い、家を想い、大嫌いな婚約者の隣にいつも笑顔で立っている

主人公と出会い、自分のことを少しずつ考えるようになる。



2人目は、マリア=カラドリア

青い髪に青い瞳の女性であり、カラドリア商会と呼ばれる国さえも逆らう事が出来ないほどの圧倒的な財力を持つ商会の孫娘。

彼女は金さえあれば何でも叶うと考えていたが、心の奥底ではカラドリア家の娘としてしか見られていないことが寂しくて寂しくて仕方が無く、その寂しさを埋める為に金で好みの男を漁ったりもしていた。

そんな中、貧乏な平民の癖にどれだけお金をチラつかせても全く動かない主人公が気になっていく。



3人目は、ケルシー=アトワラス

黒の髪に黒の瞳、グリフィア家が力をもってラーガル王国を支えてきたように、アトワラス家は古くから知力をもってラーガル王国を支えてきた政治の中心にいる名家だ。

黒が不吉とされるこの世界において黒髪黒目の彼女は呪子なのではないかと遠巻きに見られることが多く殆ど誰とも喋らない。一見すると超クールビューティーだが、本当はおしゃべりが大好きな女の子。髪の色を見ても何も思わない主人公とのお喋りが好きになっていく。



4人目は、アイリーン=ラタトシア

緑の髪に緑の瞳、遠国であるラタトシア王国からラーガル学園へとやってきた外国の姫であり一流の魔術師。

学園始まって以来の天才魔術師としてゲーム内ではかなり重宝した記憶がある………ダンジョンに連れ回したなぁ……主人公の魔術がある程度成長していないと攻略できないため、一周目では攻略が不可能。

とにかく喋らない。さらに中々ヘビィな過去を持っており警戒心が異様に高い。俺が最後に攻略したヒロインであり、ギャルゲーの難しさを教えてくれたヒロインでもある。




5人目が、リリアナ=フレスヴェルグ

赤い髪に赤い瞳の強気な女性であり、その昔没落したフレスヴェルグ家と呼ばれる貴族の血を引く者。

リリアナは平民ではあるが、優秀な冒険者として名を馳せていたこともあり学園へ招かれることになった。

アイリーン同様一周目のステータスではまず仲間にならないが、作中最強と言われているヒロインでもある。

とてつもなく攻撃的な性格が怖くて俺は攻略した事がないから詳細は全くわからない。



 そして……あと1人、俺は調べていないのでわからないのだが、もう1人隠しヒロイン?が居るとかいうのをちらりと聞いた記憶もある。それが誰なのかわからないので考えても仕方ないが……


 ちなみに、主人公の名前はわからない。

主人公の名前はプレイヤーが各自で入力するゲームだったので、決まった名前がないからだ。




 そして、非常に残念なことにこの俺オーランド=グリフィアは、最後の俺が攻略していなくて詳細がよくわからないリリアナ=フレスヴェルグ以外の全部のルートで必ず……確定で……100%で主人公の邪魔をしてくる。


 主人公が特定のルートに入るとその女性キャラとの間に割って入ってくるクソ程ストレスの溜まる悪役だ。

寝取られるような事はないが、グリフィア家の力があまりにも強大すぎるのでヒロインとの話の途中であっても普通に入ってきて適当な用事を作り出して主人公の恋路を邪魔してくる。


 ギャルゲーパートですら非常に鬱陶しいオーランドではあるが、更に鬱陶しいのがダンジョンパートと呼ばれるローグライクのダンジョンを攻略している時に現れて、頑張って収拾したアイテムを根こそぎ奪っていく事だ。


 もちろん撃退は可能なのだが、一周目のプレイデータで主人公が育ちきっていない序盤でのダンジョンではどう頑張ってもオーランドの強奪イベントからは逃れられない。

 この強奪イベントがランダムに発生するという所もストレス値を高める要因になっているだろう。



 しかし、そんな非常にむかつくお邪魔キャラであるオーランドも、ゲームの終盤にはいなくなる。





 何故なら、俺がクリアした4つのルートではオーランド=グリフィアはゲームクリア前に死んでいるからだ。

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[一言] 日本人が死んだら異世界転生する民族で ↑ そんな属性ねーよwww
[良い点] よかった、日本人が死んだら異世界転生する民族でって(笑)
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