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scene.15 低すぎる運と内緒の話



  名前:オーランド=グリフィア

  年齢:9歳

 生命力:F

 持久力:E

  魔力:A

  筋力:D

  理力:B

  技力:F

   運:G-

 

  技能:四天の加護



 ふざけんな!なんでGより下の評価があるんだよ!



 ステータスはG、F、E、D、C、B、A、Sとあり、Gが最低でSが最高ランクになる。

普通に生きていればステータス評価はFからE、かなり鍛え上げている人間でようやくC評価のステータスに到達するといわれている。

 魔物を倒せばこれらのステータスが増加するといわれているが、何匹倒せばどれだけ能力が上がるのかはわからないし、同じ数の魔物を倒しても能力があがる者と上がらない者がいるので、どのような原理で能力が向上するかは未だに判然としていないらしい。

 しかし……普通に生きていればFかEあるはずのステータスが運だけGマイナスというのはどういうことだろうか?これはあれだろうか、オーランド=グリフィアの人生には不幸しかないとかそういうことだろうか?普通に生きているつもりなのに普通には生きていけないのだろうか……うーん……ステータスがバグってることにしておこう。


「お?おー??お前すげぇじゃねぇか!魔力Aランクなんて初めて見たわ。それに、なんだ?理力もBっつーことは、坊主はその歳で魔術が使えるのか?大したもんじゃねえか」


 冒険者登録説明会が終了し登録者の各々が思い思いに退室していく中、俺は真っ先にノインツ教官の下に駆け出していった。聞きたい事は山ほどあるし、憧れのノインツ教官と話す機会なんてきっとこの世界では少ないに違いないからな。


「あ、はい!教官!そういえば魔術のー」


「ッて!グリフィアって坊主お前ッ!?」


 名前を見るより先にステータスのほうに目がいっていたのか、能力を見たとき以上に驚きの声をあげてきた。


「い、言わなくていいです!そうです、僕はその……」


 しかし、まだ人が数人残っている状態であまり大声で言うのはやめてもらおう。いくら尊敬するノインツ教官であっても俺のプライバシーは守ってもらわねば困る。


「おっと…すまねえ、ステータスは仲間にも普通見せねぇもんだ、悪かった…だが、心配しなくともギルド職員は口外しねぇからそこだけは安心してくれ。いやー……ちょっと驚いたがまあそうか…ラーガルの貴族はどいつもこいつも遅かれ早かれ冒険者登録するからな。しかし坊主が…っとだめか、オーランド様がそうなのか」


「敬語はやめてください教官!」


「ん?そうか?ははは!そうだよな、冒険者はそうじゃねぇとな!しっかし、9歳で登録ってのは少々早いんじゃないか?学園に入るまでまだまだ時間だってあるだろ?こんなに早く登録してなにすんだ?」


「それはもちろん冒険であります!教官!」


「ははは、そりゃ勇ましいな。だが何度も言ってるが無茶はすんじゃねぇぞ?まずは装備を整え……る必要はねぇかもしれねえが、何事も一歩ずつだ。まずは下級クエストで戦闘のないものを狙っていけ、坊主にとっちゃ端金だろうが、ギルドはそういう小さなクエストもしっかりと評価対象に入れるからな」


「なるほどなるほど……僕も早くダンジョンに挑みたいのですが、ランクアップはどのようにして行われていくのですか?出来るだけはやく下級ダンジョンに入れるくらいには冒険者ランクをあげたいと考えているのですが……」


「冒険者連中はランクアップの評価基準を知らんやつばかりだしあまりでかい声では言えんが…………まあ、そうだな……ドレイク様のとこの(せがれ)だからちょっとだけ教えといてやるか」


「ありがとうございます!」


 そしてありがとう偉大なるお父様!


「あまりでかい声を出すなって……いいか?簡単だからとか金になるからってスライムを狩ったりオアーを狩ったりしても大した評価点にはならん。そりゃ数をこなせばいずれはランクがあがっていくが、時間が掛るのは間違いない」


「ふむふむ……ではやはり、受注フリーの難易度の高い魔物討伐クエストなどを受けるのがいいのですか?」


 冒険者ランクは今すぐにでも上げたい。

さっさとランクを上げてさっさとダンジョンに潜りさっさと魔物を狩りまくって能力を向上させたいからな。


「ははは、そりゃそう思うだろうな。俺だってギルド職員になるまではそう思ってたからな」


「え?違うのですか?」


 違うのか?受注フリーの難易度の高い魔物討伐クエストをやりまくればいいんじゃないのか?ゲームでは受注フリーなんてクエストはなかったから知らんが、強い魔物をぶっ殺しまくれば良いんだと思ってた………ふむ………


「お前らみたいな最底辺の<(ウングイス)>がそんなクエストを受けて仮に討伐を成功させた所で、ランク評価には反映されるどころか、寧ろ上級ランクにあがる際にマイナスの加点がつく」


 なんだと?


「はっ!不思議な顔をしているな。なーに簡単な話だ、例えば坊主みたいに今日冒険者になったばかりのヒヨコ共が受注フリーの討伐難易度AやBのクエストを受注したら、その時点でそいつの評価は一気に下がるからな」


「それは……何故ですか?」


「そりゃ当然だ。そいつは登録したばかりの最底辺の冒険者にも関わらず、俺や他のギルド職員の登録説明会の説明を何も聞いてなかったってことだからな。今日何度も何度も言ったろ?『身の丈にあったクエストをこなし、実績を積み上げろ』『引き際を間違えるな』ってな。仮にそいつが上級冒険者に肩を並べるような戦闘技術を持つような新人であったとしても、それを知っているのはそいつだけだ。俺達ギルド職員の下す判断は1つ『無謀な奴』だ」


 なるほど……本当に、聞いておいてよかった。


「おお…その顔、9歳にしては物分りがいいな。そうだ、そんな無謀な奴はいずれ死ぬだろうとギルドは判断する。そいつが死のうが生きようがそれ自体はどうでもいいし、実際に難易度の高い魔物を討伐して帰ってきたならその点はきっちり評価する。だが、冒険者ギルドが欲しいのはそういう危なっかしい自分勝手な人間じゃねえ。報告、連絡、相談、これをこなせる人間だ。仮に自分の腕に自信があるのであればそれを一言つげてくれれば良い、そのためにギルドの3階には戦闘訓練を行う為の場が設けられているんだからな。上級なり中級なりと手合わせして貰って適切な戦闘技術を評価して、そっから自分にあったフリークエストを受けりゃいい。それすらも出来ないような自分勝手な奴は冒険者ギルドには要らないんだとさ」


「でも強い人は欲しいですよね?」


「ああ?そりゃな、それこそドラゴンをバンバンぶっ殺せるような奴なら大歓迎だが………報告、連絡、相談ができない人間に貴族や国からの依頼を任せようだなんて普通考えないだろ?いくらそいつが強くても、そんな得体の知れない人間に貴族や国から預かった大事な情報を喋りたいとは思わねえだろ?」


「それは…その通りですね」


「だろ?だからそういう強いだけで好き放題クエストを受けたりダンジョンに潜る連中はそのまま好きにすればいいし、好きにクエストを受けてくれれば良い。ギルドだって何の文句もいわないし中級冒険者くらいまでは運が良けりゃ順調に上がるかもな。だが、国や貴族の依頼が入ってくる上級冒険者に上がる事は一生ない。それにそもそも、ギルドお抱えの最上級ランク<(オクルス)>の7人さえいればこなせないクエストは存在しないからな。腕っぷしが強いだけの連中なら中級冒険者辺りに留めて適当に好きにさせればいいんだとさ」


 最上級ランクの7人って、なんだそのヤバそうな奴らは……

 ゲームにそんな設定あったっけ?


「なるほど……では、担当ギルド職員との報告、連絡、相談をしっかりと守っていけばいい、と?それがもっともランクアップの近道であるということですか?」


「いやいや、ここからが重要な話だ。ていうか内緒の話だ、いいか?ドレイク様の倅だから教えてやってんだからな?親父さんに感謝しろよ?」


 そういいながらノインツ教官は教室に残っていたほかの冒険者に聞かれないように俺にもっと近くに来るよう手招きをしてきた。



「いいか?ランクアップの一番の近道は『誰もやりたがらないクエストを率先してこなす』ただこれだけだ」



 耳打ちされた内容はどうということはない普通の情報ではあったが、それと同時にこれ以上ないほどに大事な情報だった。

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