俺の肉壁に攻撃しろ ~勇者に追放されたタンクは自分のスキルをさらに磨いて最強へと成り上がる~
私アーネスは、王女であるとともに
女神の信託に選ばれた勇者である。
魔女リリル、聖女ミハエラ、
そして、幼馴染の戦士マーゾとパーティを組んで魔王討伐の旅に出た。
盾役であるマーゾを追放してから
パーティーの動きが明らかに悪くなる。
それでも、あんな奴いなくなった方がマシ
そう言い聞かせて先へ進む。
あと少しで魔王城の最深部だ。
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ついに始まった魔王との決戦
私の認識は甘かった。
魔王の強さは想像の遥か上だった。
王家の家宝の装備でなんとか耐えしのぐものの
じりじりと追い込まれる私達
傷を負い、血を流して倒れそうになる仲間達
「アーネス!危ない!!」
私の体目掛けて黒い槍が飛来する。
走馬灯という奴だろうか
こんな時に昔の事を思い出す。
気の強い私はいつも周りに迷惑をかけて、叱られることが多かった。
そんな時いつもマーゾが私の傍にいたっけ・・・
「やめろ、アーネスに鞭を打つなら、むしろ俺にやれ!」
「泣くなよ、痛みが辛いなら、それを快楽だと思えばいい」
・・・あいつ、昔っからブレないな
・・・あんなでも昔は、ちょっとカッコいいと思ってい・・・ごにょごにょ
ザシュ!
胸を貫かれる。
だがそれは、アーネスではなく
「・・・マーゾ・・・どうしてここに・・・」
パンツ以外何も身に付けていない半裸の男がそこに立っていた。
無言、だがすごい威圧感だ。
私を仕留めそこなった事、
そして、目の前の冗談みたいな存在に魔王は怒り狂い、
マーゾに向けておぞましいほどに強大な魔法を連発する。
永久凍土に変える息吹
魂を侵す不浄なる呪い
文明を崩壊させる爆発
「うおおおおおおお!」
国ひとつ消し飛ばす威力の魔法
そのどれを喰らっても、マーゾは倒れない。
「なん・・・だと・・・ワシの攻撃が効いていないのか?」
「いいや、効いているさ・・・だから次の攻撃を・・・さぁ、こぉい!!」
魔王は明らかに困惑している。
マーゾは辛そうな顔をしながらも・・・ちょっと嬉しそうだ。
【スキル不屈の精神】
マーゾはダメージを受けるたびに防御力がどんどん上昇する。
あの様子だと追放されてから鎧を脱いでひたすら魔獣相手にダメージを受けまくったのだろうか
もはや固すぎて、ダメージがほとんど通らない体になっているように見える。
「くっ」
目の前の得体の知れない物体に
しびれを切らした魔王は攻撃の矛先を変える。
「お前は後回しだ、あの女どもから始末してやる!」
「リリル!ミハエラ!」
しまった、いくら防御が固くても、仲間まではカバーしきれない。
だが、マーゾは、魔女リリルと聖女ミハエラに放たれた攻撃の間に余裕で滑り込む。
「瞬間移動か?」
「違うな・・・これはただの反復横跳びなんだぜ?」
スススゥ
横移動するとマーゾの姿が陽炎の様に流麗に霞む。
「覚悟しろ・・・もうお前の攻撃は・・・『俺にしか当たらない』」
「ぐぬぬぬ」
狼狽する魔王
「リリル、ミハエラ!!行くよ!!」
私は叫んだ。
一転攻勢、
私たちは最後の力を振り絞って
魔王に攻撃を繰り出す。
途中、私の【勇者の極大魔法】を
魔王と一緒にマーゾも喰らいに行っていた気もするが無視することにした。
そして、私たちは魔王討伐を果たしたのだった。
感極まった私は、
涙を流してマーゾに抱き付く。
「マーゾごめんなさい、あなたを追放してしまって」
マーゾはニコリとほほ笑む。
「全然気にしてないさ、・・・むしろあの時の言葉攻め、最高だったぜ」
「ホント台無し!」
そう叫ばざる得なかった。