174.スキルを旅に出してみよう。
やってきました、アンタルシアの街へ。
千尋さんの家で思わぬ強敵千尋さんに出会ってしまい、ぶすっと不機嫌なニーナさん…… そしてニーナさんの本性を知らない夏希さんとマリーアも不機嫌ときている。
一方の千尋さん、マエリス、ラヴィーニャはニコニコと楽しそうに会話をしている。
その様子を「?」と顔に書いてある状態で覗くソフィアさん……
「イオリ君この状態なに?」
まぁ〜えっと…… 不幸な勘違い?といいますか、プリンだと思って食べたら茶椀蒸しだった感じかな?
「プリンは分かるけど茶碗蒸し?」
「あはっ、イオリ君それあるあるだよね!」
いや、ないし! 千尋さんは明るい感じの子なのか? よくわからない系なのか?
俺の中のイメージでは凄く真面目な感じだったんだがどうやら勝手に決めてつけていたようだ。
「チヒロそれよりもイオリ君見ても問題ないの? 変な発作起きない?」
「う〜〜ん、大丈夫みたい。イオリ君からは何も感じないというか、何も意識しない感じ?」
OK! 分かったよ千尋さん俺に泣けと言ってるんだね? 早い話が男を感じないってことじゃんか!
「嫌悪感がないというだけで好きとか言う訳じゃないから安心してニーナ。 だって私はニーナのことが大好きだから……。」
ぶほっ! この二人相思相愛かよ? 勝手に百合百合してればいいじゃん!
ニーナさん何ニヤニヤしてるんだよ?
「ん? 別に……」
……。
「そんな事よりも、今日は何をしに来たのかな?」
今日は久しぶりにアンタルシアで遊ぶ時間が出来たから、お世話になった人の所へ顔をだそうかと思ってね。
「そうなんだ、じゃ今日は私に手料理を作ってもらおうかな?」
あ〜そんな約束したよね? じゃ腕によりをかけて……
《望んだ料理を作る》さんよ、千尋さんは最高級食べれるのか?
「可能です、勇者と呼ばれる召喚されし人ならば問題なく食べることが出来ます。」
ほう、そうなのか? 最高級品質の料理は何がおこるかわからないから注意が必要だが《望んだ料理を作る》がいうなら間違いないだろう。
では最高級は俺が作るから、他の人の分は良で作ってね《望んだ料理を作る》。
「ふっ、料理勝負はしないのですか?」
お前にはもう負けないと分かったからな、勝負する意味がないんだよ?
「…… レベル上がって、より美味しい料理できるようになったんですけど?」
はは、お前には分からない事があるんだよ。 お前には出来ないことがな。
「ぐぬぬ、ちょっとエリクシア様の所行ってきていいですか?」
ん? スキルが俺から離れることができるのか? 不思議なことを言うよな……? しかしスキルに変なプライドがあるのも問題のような?
別にエリクシアの所へ行くのは構わないけど、料理作ってからにしてほしいな。
「はい! 収納空間にドラゴンハンバーグ入れておきましたので少し行ってきますね。」
……?
フットワークの軽いスキルか…… 何か新しいな……?
「どうしたのイオリ君? 黙り込んで?」
「はは、旦那様はスキルと話しておったのじゃろう、そうじゃろ旦那様?」
なんでわかったんだ? 恐ろしい子!
「あはは、旦那様は分かりやすいからのぉ」
千尋さんの家でワイワイ俺達がやっていたそのころ、王宮にある騎士団の訓練場ではレイリーさんが大暴れ出来ずにぶすっとしていた。
一方で魔法騎士団長のイヴィアンさんの顎は完全に外れてしまっていた。
「ジュリアさん…… その魔法の名前は……? いや何属性の魔法なんだ!」
どうやら6属性の魔法を組み合わせた、魔法アトミックキャノンをお披露目したようだ。
魔法のレベルを合わせれば歪な交わりもなく規則正しい魔力の塊になるとわかったジュリアさんは努力で魔法を完成させていたのだ。
もうこの世界を全て更地にできるほどの威力とまではいかないが、その一歩手前といった威力の魔法を見せられている魔方騎士団長の心中察してあげてほしい。
「もうジュリアが団長でいいよね? どうかな、みんな?」
「「「「「意義なし!」」」」」
少しばかり涙目のイヴィアンさんがジュリアに団長の座を譲ってくれたようで…… いやせめて国王の許可とろうよ……?
レイリーがぶすっとしている理由だが、どうやらレイリーの前にあの黒髪の美人が騎士達相手に訓練を行っていたようで、騎士のみなさんはお疲れのようで……
いや、体のいい言訳だな…… みんないい汗かいたって感じのようだし。 助かったって感じに見える。
「皆さん向上心が足りません! 剣聖様は今この国で伝説となっている古代竜様の所で修行をしているんですよ! あの剣聖様ですらまだ上を目指しているんですよ!」
「レイリー言いたいことは分かるが……」
「ですので、その剣聖様に認めて頂いたこの世界最強の剣士である私が稽古を…… にや〜〜〜」
「ま、ま、待て! レイリーいつの間に世界最強の称号を? あの剣聖様より強いだと? ありえんぞ……!」
「団長…… うふふふふふふふふ……」
「皆の者!!! イオリ殿を大至急見つけてこい!!! その間は何とかこの魔物を私が食い止める!」
「「「「だんちょう〜〜〜!!!」」」」
こうして騎士団長ディランは皆の尊敬の眼差しを浴びながら、魔獣レイリーとの壮絶な訓練をすることになったのであった。
その様子を関心の目をもって見つめる姿があったことは誰も気付いていなかった。




