165.なんのこっちゃと言ってみよう。
やってまいりました。獣人の国へ。
レイリーが剣神の称号を得たその日の夜……
「さて、今回集まってもらったのは、最近の旦那様に付いて意見を交換しようと思い集まってもらった訳なのじゃが……」
ん? 皆どうした? もう寝るの?
「メイド部隊よ排除じゃ!」
ちょ、ちょっと……? 何で俺の部屋へ俺が入るのを邪魔するの? ね、ねぇ?もう寝るんでしょ?
どこへ連れてくつもりだ、メイド共め〜〜〜!
「最近の旦那様の様子をどう思うのじゃ?」(ラヴィーニャ)
「イオリ様は最近考え事をする時間が増えたように感じるかな?」(レイリー)
「そうだね、相変わらず私達にバレないように気を使ってるみたいだよね?」(ジュリア)
「イオリ君らしいですよね」(マエリス)
「そ、そうなんだ? イオリ君考え事してるんだ?」(夏希)
「ふふふ、それがわからぬようではまだまだなのじゃナツキよ!」(ラヴィーニャ)
「イオリ様はエッチなだけじゃないってことなんですね?」(マリーア)
「そうです、イオリ様は私達の事をいつも一番に考えていてくれるのです。」(レイリー)
……。
そうなんです、イオリ様は私達の事を一番に考えてくれているのですが、考えすぎていて私達の気持ちを置き去りにしてしまっているのです。
例えば私の場合は、イオリ様をお守りするのを使命としてお仕えして来ました。
しかしイオリ様は魔王と初めて出会ったとき自らを犠牲にし私達を守りました。その後の古代竜様との戦いの時も私達が傷を負わないようにといつも考え行動しています。多分これからもずっと……。
これはこれで嬉しいことです。私はイオリ様が大好きなのです、大好きな男性から守ってもらえるのは何よりも嬉しい事です。でも、私は騎士なのです! 主を守るのが仕事なのに肝心なときには守られてばかり……
もう主従の関係ではないとイオリ様は仰いますし、私には感謝してると仰います、ですが私としては納得行きません。
どうやら私は、この世界で一番剣術に優れた存在になれたようなので、これからはしっかりとお守りしますねイオリ様! ふふ。
そして、どうも怪しい事考えてそうですが、簡単には離れませんからね! ずっとイオリ様の横を歩くのは私なんですからね!
……。
私、ジュリアはお兄ちゃんが大好きです。
初めのうちは家の為と思っていたところもあったけど、お兄ちゃんと触れ合う内にどんどんお兄ちゃんに引かれてしまいました。
お兄ちゃんはズルいです!
私にエッチな事をするぞーと言うだけで、絶対に何もしないし、私が戦闘で失敗しても何事もなかったように手伝ってくれたり…… いつも私を褒めてくれるし……いつも私を気にかけてくれてるし……
どれもこれも、私を元気付けるためにやっているってもうバレてるんだからね! 私の親があんなのだから、気を使っているって知ってるんだからね! でも、そんな気遣いがスッゴク嬉しいの!
だから私は大好きなお兄ちゃんのために頑張るの! なのにお兄ちゃんは私達を頼ろうとしない……
お兄ちゃんに聞けば頼りっぱなしだよって言うけど、全然頼ってない! お兄ちゃんはすぐに私達を傷付けたくないって言うけど、私達だってお兄ちゃんに傷付いて欲しくないのに!
むぅー! 何だかお兄ちゃんにお説教がしたくなってきた! ちょっとお兄ちゃんにお説教してくるね!
……。
わらは、ラヴィーニャは旦那様の嫁の中で残念ながら一番役にたっておらん…… 勇者の従者としても最近加入したばかりのマリーアよりも役にたてないでおる……
じゃが旦那様はわらはに政治経済の話は全部お任せできるのが助かると言う……
そして皆俺より凄いから、俺より強いからとあっけらかんといいおる……
獣人の国では、俺は強い! 誰かよりも強い!と皆が言って回る…… 強さこそがすべて、それが当たり前の国で育ったわらはとしては旦那様は不思議でならない。
本気を出せばこの世界の全てを手に入れることが出来る力と知識を持ちながら無闇にその力を使わない、自慢しない…… なぜなのじゃ?
旦那様の強さは、初めて会ったときに感じたものより今はもっと強くなっておるのに…… 初めて出会ったとき感じた強さと優しさに心奪われたと言うのに、今はその時以上に強く優しい。
そんな強さと優しさを兼ね備えた旦那様がまた悩んでいる……
今回もわらは達は役にはたてないのかのぉ? どうにかして旦那様の本心を悩みを吐き出させることは出来んもんかのぉ? 人を仲間を頼れない弱い旦那様をどうにかできないものかのぉ?
……。
はぁ〜 みんな何を悩んでいるのかな? お姉さんに教えてね?
「マエリス、お主は旦那様の事が心配ではないのかのぁ?」
「ん? 全然心配してないけど?」
「なぜなのじゃ?」
「えっ?! イオリ君って王妃様……いえお義母様にそっくりだからね。昔からお義母様で慣れているからか私は全然気にならないよ?」
「例えばどういったところなのじゃ?」
「え〜っと、何を考えているのかわからないところ、突然行動に移すところ、勝てない戦いはしないところかな。」
「はは、確かに言われてみれば義母上と同じ行動をしておるな。」
「でね言いにくいんだけどイオリ君もお義母様も、私達普通の人間には考えも及ばないことを考えてるんだから私達が口をはさむべきじゃないと思うんだ。」
「じゃが、心配する気持ちも分かってほしいのじゃが?」
「ふふ、その気持ちはイオリ君も分かってるから。だから私達はイオリ君に出来ないことを頑張ればいいの。それがイオリ君が喜ぶことだから。」
「ふっ、旦那様と同じことを言われるとはのぉ……」
「でも私だって何も考えていないわけじゃないから…… 私の命はイオリ君とお義母様の為に…… イオリ君は嫌がるだろうけど、これだけは絶対に譲らない…… 譲らないけど…… イオリ君にはバレてるみたいだから無茶はさせてもらえないかな?」
「ふふ、そうじゃのぉ…… レイリーもブツブツいっておったし、どうも旦那様はわらは達が傷つくのを極端に嫌っておるからのぉ」
「私達もイオリ君が傷つくのは嫌なのにね。」
「その通りじゃ! むぅ〜 だんだん腹が立ってきたからジュリアと一緒にお説教でもしてくるのじゃ!」
「ふふ、程々にね。」
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メイドどもめ何だよ急に! ブツブツ…… 俺が何したっていうんだよ?
……。
うぉっ?! どうしたレイリー?
……。
レイリーさんブツブツ言いながら腕にしがみつくの止めてもらえますか? 少しイガイガするんですよ……
で、なんで俺怒られてるの? もう寝るんでしょ?
えっ? なんでジュリアさん怒ってるの? もっと私達を頼れって? いや頼ってるじゃん! これ以上頼ったら俺の立場がないでしょうが!
あとから来てラヴィーニャさんガチギレはちょっと…… いやレイリーさんに腕決められてて力が逃がせれないからパンチしないで……
ねぇ、マエリスさん笑ってないで助けてよ……
「ふふ、みんなイオリ君のことが好きなんですよ! 知ってますか?」
いや…… なんて答えればいいの?
「さ〜? 答えは知ってますから必要ないですよ。 ふふ。」
な、な、なんのこっちゃ〜〜〜!




