120. 魔物たちに襲撃されてみよう。①
やってまいりました、夜営場所へ。
時刻は夕方、俺はみんなの食事の準備に取り掛かっていた。
今回の勇者御一行に出会って獣人の国へ行こうの旅にはメイド達は同行していない、何でも収納空間の入り口が二つもあるのだからコミュニケーション今後の為に、ラカルノ王国を経済的にセンリョウするとかしないとか……
経済で千両ゲットするんですね、へ〜この世界の通貨は「両」だったのか知らなかったなぁ…… 頑張れラカルノ王国!と言う具合で今回は同行していないのだ。
夕飯の支度は相変わらず俺が行う。
基本的にはシュウから《望んだ料理を作る》で作り置きしてある物を取り出すだけという簡単なお仕事。
と、俺の練習用でそのほかに1品、少しずつだが確実に俺の腕は上達しているのだ・・・多分。
そんな忙しい時間にどうやら来客が来たようだ・・・主婦ならブチ切れて来客を追い返すほど忙しい時間帯に・・・
俺のマッピング画面の表示できる限界の範囲に赤い点が1つ、また1つと増えていく。
徐々に赤い点は増えていく、その増え方は異常なほど早い。
距離は500メートルほどか大森林の中から此方へ一直線に向かってきているようだ。
次から次へと赤いマークが増えていくが、移動速度に大きな違いがあるため後ろの集団と先頭集団では大きな開きがある。
そしてすばぬけて速い速度で移動している先頭の集団数およそ20匹の魔物が森から飛び出す!
俺達と森との距離はおよそ100mイコール魔物との距離・・・もう目と鼻の先。
咄嗟に「魔物だ!」と叫び皆に警戒を促す。
あらわれた魔物はジャガーウルフ、ハッキリ言って弱い魔物だ、俺がまだ剣を振り始めたぐらいの時によく相手をした魔物なのだ。
しかし俺の記憶にあるジャガーウルフとは明らかに移動速度が違う・・・?速いのだ・・・
そして数が多い・・・こいつらの奥からぞろぞろと俺達に向かってくる魔物の数が・・・気配的には俺の身知った魔物ばかりでジャガーウルフと変わらない程度の強さの魔物が大量に押し寄せている。
無数の魔物が俺のマッピング画面の範囲に入り画面が赤い点で埋め尽くされた時に会いたくない二つの気配を感じる・・・
名 前 ダニエラ=サンドストレム(悪魔族)
L V 39
スキル 偽装LvMAX 呪術Lv8・・・ 称号:魔族10将[偽]
名 前 ビセンテ=ボボネ(悪魔族)
L V 38
スキル 闇魔法Lv6、火魔法Lv3・・・ 称号:魔族10将[虚]
ダーリンさんと、精神崩壊者の二人・・・是非とも会いたくない!
先頭で現れたジャガーウルフはもうレイリーと剣聖さんに切刻まれている。
多少は能力が高まっている様だが、俺達には誤差の範囲だ。
第二陣の魔物の数は500〜600くらいか?スタンピードとしては何となく中途半端な感じが否めない・・・
まぁダーリンさんの手引きだろうな・・・だってあの人ポンコツぶりが半端ないから・・・。
徐々にだがダーリンさんと、精神崩壊者の気配が近づいてくる、二人の後からも魔物の群れはどんどん増えている・・・
第二陣の先頭が森から出始めたようだ。
さてどうしよう?数が多いが弱いので面倒臭い、一気にかたずけてしまいたいものだが・・・
「お兄ちゃん、魔物が来る方向に深い穴掘れる?」
ん?どうしたジュリア?そんな事は朝飯前だが・・・いや今は夕飯前だけど?
「じゃー私がその穴に誘導するから、お兄ちゃんお願い。名付けて!滑って転んでヒューズドン作戦だよ!」
うんうん、微妙な名前だが俺は全然大丈夫だから、ジュリアは可愛いな〜
なんだよ?微妙って顔で見ないでよ!ジュリアはこれでいいの!
微妙って顔してる人たちはほかっておいて、二人の初めての共同作業しましょうね〜ケーキ入刀ではなく地面に入刀だけどまぁ細かいことは気にしない。
俺は大森林から50メートル程離れた場所に、長さ200メートル、幅5メートル、深さ100メートルほどの空間の座標を指定しシュウの中へ収納する。
念のため地表5センチメートル程は残してあるので、あそこに穴が開いているとは誰にも気付かれることは無いだろう。
そして念には念を入れて、魔物たちから見て穴の対岸側、俺達側に見えない透明の壁を空気を圧縮し並べておく。
「アイスベッド」ジュリアが魔法を唱える・・・
ベッドだと!?共同作業中にいきなりベッドだと!?
ジュリアさん流石に早すぎますよ?俺がお巡りさんに捕まってしまうでしょうが!そういうことは、もう少し大人になってからにしましょうね?
「ガゴッ」何処からともなく氷の塊が飛んできて俺の頭に命中する・・・。痛い・・・。
ジュリアの魔法によって魔物側の地面が凍り付きつるつるすべすべの地面に変わる。
こんなことで穴に落とせるのは精々先頭の方に居る魔物数十匹くらいかと思っていたのでジュリアには悪いが次の手は考えてある・・・
考えてあるのだが魔物の様子がおかしい?
魔物は次から次へと進んでくる・・・そして滑って転びそして落ちる・・穴に向かってかなりの傾斜をつけているので滑ったら止まらない。
魔物を鑑定すると皆呪いの影響を受けている、どうやらダーリンさんことダニエラの呪いによって多少強化している様なのだが、魔物自身に意識が無いのか?魔物が滑ろうが転ぼうが、俺達にまっすぐ向かってくる。
呪いの影響で魔物の意識を刈り取り、扇動しているということか・・・?
呪い恐るべしだが・・・今回は裏目に出ている。ダニエラとビセンテをも後ろから来ている魔物にどんどん押されて穴へ向かっている。
「ダーリン会いたかったよ〜」と遠くから聞こえるが、このまま穴に落ちてもらいたいものだ・・・
あっ、ダニエラもビセンテも周りの魔物もこけた!
おっ!これは!と思ったが、穴に落ちた二人は何やら黒いもくもくに乗って中を浮いて穴から戻ってきた・・・
「ダーリンこれが愛の試練なのね〜」
「ビックリしましたね〜、あぁ〜驚きの感情で心が満たされていく〜」
うん、二人とも頭が弱そうだ・・・なら心配いらないな。
そして当然見えない壁に激突して再び穴に落ちる・・・
ふっ、さようなら。「もう二度と出てこないでね」の思いを込めてシュウに収納した地面をもとの場所へすぽっと戻す。
しかし魔物の行進はいぜんとどまる気配がない・・・森の中からどんどん沸いてくる・・・二人を倒せば止まると思っていたが・・・
群れの後ろの方にはドラゴンの気配も感じるようになった、後ろの方が強い魔物が多いみたいだ。
しまった!俺の口から出たドラゴンという言葉により剣聖さんがおかしなことを言い出す・・・
「勇者殿、儂ちょっと用事を思い出したから先に帰るね、後よろしく!」
と言って、目がドラゴンになっている剣聖さんが一人で森の中に走って行ってしまった・・・
どんな用事なのか後からきっちり問いただすとしよう。
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