107.家出をしてみよう。1日目
家出1日目、さて何処へ行こうか?
ふっ、そんな決まり切ったことを聞かれても困る。
当然、あの不動産屋だ!
俺は眩しい部屋で瞑想し自分のこれからを考えると皆に伝え一人部屋に閉じ籠った。
そして、部屋の中から、眩しいのに耐えながらも鍵をかけ、速攻で転移、もう不動産屋にいるのである。
この速度ならばさすがのマエリスさんでも追いつくことはできまい!ふはははは。
メイド達め思い知るがよい、俺の偉大さをな!
そして、前にラヴィーニャにガン無視された物件を契約!速攻で購入したのである。
不動産屋がああでもないこうでもないと言うので札束で・・・いやこの世界に札は無かった・・・金貨で殴りつけ・・・これはこれで何とも・・・
何でも、購入を検討している人が他にもいるからってゴネやがるから金貨を積んで説得しただけの話なんだが・・・
金貨を山盛りにして説得したら、余計にああでもないこうでもないと・・・
購入特典でこれもあれも付けれますのでとか、これはサービスですとかで・・・結構時間がかかった。
ふっ少し時間をロスしたが俺の行動は読めまい!
だが念には念を入れ、直接購入した建物の前ではなく、購入した建物が監視できる場所へ転移で飛ぶ。
それも人の家の屋根の上にだ。調度いい場所に、陸屋根のお家があったからな、ふふふ。
なぜ転移できるかというと、当然物件の偵察が済んでるからさ!
あれは、シュウが誘拐された時、そうノウに案内させていた時にワザとこの物件の前を通ったのだ!
ノウの声はどうせ俺にしか聞えないから、誘導したのだよ!
ふははは、もうその時からこの作戦は始まっていたのだよ!
知っているかい?自分の願望はな、あらゆる危険を冒してでも、自分の力で奪い取るものなんだよ。他人から与えられるものではないんだよ。
クサレメイドめ!この俺を侮るからこんなことになるんだ!
いつもいつも煮え湯を飲まされ続けた俺の怒りを思い知るがいい!
ぐわはははは。
では行こうか、夢の世界へ。
俺は人の家の屋根の上の座標を指定し転移で飛ぶ。
俺の視界の空間がグニャリとなり、視界が真っ暗になる。
そっと目を開けると・・・
「きゃっ!!」
という女の子の声が・・・?
転移した屋根の上で、偶然屋根の上を移動中だった女の子とぶつかる・・・
そんなありふれたシチュエーションでおこることはただ一つ。
俺は移動中の女の子に押し倒される形になり、そして唇に何かがあたる・・・。
どうやらキスをしてしまったようだ。
ふっ。ありふれた日常の1ページで、ありがちな体験をしてしまった。
一度はやってみたいシリーズの内の「転移した先で偶然女の子とぶつかりキスをしてしまう」をどうやら達成してしまったようだ。
ふふ、ありがとう、マエリスさん。
・・・ん?マエリスさん?んん?
んんんんんんんんん?
ど、どうしてここに?な、何をしているんですか?
「もごもご・・・。」
どうやら話すことが出来ない様だ。
恥ずかしそうに、俺から唇を離し起き上がマエリスさん。
「い、い、移動中です・・・・キ、キ、キ、キ、キスしてます。」
真っ赤に燃える太陽のごとく真っ赤な顔、そして頭から湯気がシューシューと立ち上がる。
まって!まってよ!少し整理しよう。
真っ赤な顔で湯気を出し、向かい風に湯気が流されている、そして可愛い・・・まぁここまでは良しとしておこう。
キスの約束もはたせた・・・。俺も何だかとっても恥ずかしくなってきた。
で、何で偶然ここを通る用事が?それも屋根の上を移動中って?
転移で現れた俺にぶつかり、押し倒し、キス?
もう一度同じことやってよと言われても絶対にできないよ?
全然ありふれたシチュエーションじゃないからね?
「うふふふふふ。ありがとうイオリ君!」
と言って走り去っていくマエリスさんの向かった先は・・・
なんで?
なんで?なんで?なんで?なんでなんだーーーーー?
俺がさっき買ったばかりの家に入って行く・・・?
えっ?鍵かかってなかったの?
不動産屋め管理がなってないぞ・・・?という問題か?
俺は、恐る恐る自分の家に近づき中の様子を探る・・・。
「お帰りなのじゃ、旦那様。」
・・・。よし屋敷に帰ろうかな。
今日も色々あって疲れたし・・・。
「今日偶然、この家を見学する話になっておってのぉ。見学しておったら、不動産屋の使いが来て旦那様が購入したというではないか。なので待っておったのじゃ。」
色々意味が分からない。
お前らこの物件見せた時ガン無視だったじゃないか!
なのに・・・どうして・・・?
「簡単なことじゃ、貴族達を相手にするのはあの女帝に任せておけばよい、じゃが市民の相手となると旦那様の感覚の方がしっくりくると思ってのぉ」
だから、ここを購入しようと?
「うむ、旦那様を驚かせてやろうと思っておったのじゃが、先を越されてしまったとはのぉ。」
な、な、なんだってーーー!?
先回りされたわけでもなく?本当に偶然の産物?
ぐわはははは、や、ふはははは、と笑っていた俺は何?
「この家は二階に4部屋と台所などの水回りがあり、1階に店舗と倉庫ともう1部屋あるのじゃ。」
知ってるよ、間取りは見てるし。俺の家だし・・・
「でじゃ、2階はわらは達が使うので、1階の部屋が旦那様の部屋となっておるのじゃ。くれぐれも覗いたりせんようにな。」
・・・。へ〜。
覗くことは無いと思うけど、襲わないでね・・・。
「うむ、それは約束できんが、明日から犬猫どもを用意したり忙しくなりそうじゃのぉ、では今日は休むとするかの、旦那様。」
・・・。
「そういえばマエリスはどうしたのじゃ?真っ赤な顔して入って来たが?」
・・・。
話す気力が出てこない・・・トボトボと自分の部屋へ行き引き籠ることにした。
「ふぅ〜旦那様もコリんのぉ〜、まぁ今回は浮気ではなかったので、とやかくは言うまいが・・・。」
「お兄ちゃんも色々がんばってるし、明日はモフモフを沢山してもらおうよ。」
「そうですね、イオリ様は最近どうも考え事をしている時間が増えたように感じますし、たまには休息も必要かと。」
「・・・・・・・・・・。ぽっ」
俺の1日目の家出は・・・一日目も何もまだ、家出してから二、三時間しかたってないよ・・・
トボトボと自分の部屋へいき、涙で枕を濡らした・・・。
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