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100/193

100.褒められるために頑張ってみよう。

ついに100話です。

やってきました、闘技場へ。


武術大会も4日目です。大会も残すところあと1試合のみとなり、盛り上がりは最高潮をむかえている・・・、ところなんですがね普通なら。


先ほどの試合の異常さにより、会場は静まり返っている。


次の試合も同じ結果になるのでは?そんな空気が流れているからだ。


そんな空気のなかでも、俺はレイリーの勝利を疑わなかったよ・・・バチロウを鑑定するまでは・・・。



名 前  バチロウ=ノイベルト (魔族)(31歳)

L V  40 

スキル  剣術Lv9・気配察知Lv3 ・・・・称号:魔族10将[悪]

状態異常 なし



名前が偽名だったのはいいが、もうちょっと捻れよ!


ってのはどうでもいい、剣術レベルがレイリーと同じ9になっている。そ、そこも嘘だったのか!



や、やばい・・・もしかしたら


「あきらめたらそこで、試合終了ですよ・・・?」が出てしまうかもしれない。


一度は言ってみたいセリフだが・・・レイリーが無意味に傷つく姿は見たくない・・・。



傷つく姿は見たくないので、一応こっちもやれることはやっている。


先ほど控室で「先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つべき」と孫子さんのありがたい言葉をレイリーに伝えてみたが・・・。


頭の上にでっかい「?」が浮かんでいたが、きっと伝わったことだろう。


一応かみ砕いて説明したよ、勝つぞって思うのではなく、負けないぞって思って戦えと、負けない準備をしてから戦おうねと、でも「?」が消えなかったから・・・。


結局最後は「バンと来てもバンとやらずに、キンってやるってことですね?」と言っていたのでまず間違いなく伝わっている。


伝わっているといいな・・・。




時間はいくらあっても足りないが、当然時間になれば試合は始まる。


開始早々レイリーさんが・・・


「スラッシュ!!」と先制の攻撃を行う。


俺の考えは伝わっていなかったか・・・?


それを受けてバチロウも同じことをする。


「スラッシュ!!」


二人が激しくぶつかり合う斬撃・・・どうやら互角のようだ。


二人は「ニィー」と同じ顔で笑う・・・何が嬉しいのかは分からないが・・・。


激しく打ち合う二人・・・剣を打ち合う音だけが虚しく響き渡る。


それを見守る観客、重い空気が漂う。


そんな掛け合いにも終わりはくる。


どれくらい打ち合ったのだろうか?


多分だが・・・徐々にだがレイリーが押されるようになっている・・・?




(ふふふ、イオリ様の言ってることの意味が分かったかもしれない。)


「どうやら、私の方が、少しばかり速いようですね。」


いや、違うか?押されるように仕向けてる?


(まず自分と相手の力の差を感じ、その後相手をよく見て勝ち筋を探すってこと・・・だよね?)


「力も私の方が上のようだな!」


完全に押され始め防戦一方に見えるが・・・?


(前のめりに力いっぱい戦うのではなく、力を抜いて心を落ち着かせて戦うってこと。)


「どうした、お前はこんなものなのか?」


(さすがイオリ様だな・・・。私の事をよく見てくれてる。ふふ、何だか嬉しいな。)


「私の方が剣聖の技を引継ぐにあたいするようだな。」


切傷が増え防戦一方なのに笑っている・・・?


(ん〜私、イオリ様を守れるようになったかな?強くなれたかな?どうだろ?わかんないな。ふふふ、戦いの最中にこんなこと考えちゃうなんてね。)


「なにを、笑っている。戦いの最中に笑うなどとは!」


バチロウは狂ったようにレイリーに襲い掛かる・・・


(ふふふ、イオリ様にいいところ見せて褒めてもらえるように、頑張らなくっちゃ!)


「シュッ・・・」


「ぐはっ!な、なに!?」


今まで俺の眼にも見えていた剣筋が急に見えなくなる・・・俺だってなんだかんだでレベルが上がって剣筋が見えるようになっていたのに・・・。


レイリーが剣を振る動作をするたびにバチロウの声が漏れる。


「ぐはっ!?」「な、なにがおこっている?」「ど、どうして・・・?」


「あなたは力み過ぎです!それでは本当力は発揮できませんよ?」


「私が力んでいるだと?!バカなことを言うなーーー!」



「イオリ様に褒めてもらわなければならないので、そろそろ終わりにしますね。 コンサントレイト・ディカピィテェイト!」


一瞬だがレイリーの体が大きくなり、エルザも太く長くなり、美しい一筋の線が現れる。


その美しい線がバチロウを飲み込むように襲い掛かり、そして血まみれのバチロウが吹き飛び舞台から落ちる・・・。


「まだだ、まだやれる!わたしは・・・」


「もう、終わりじゃよ。お主の負けじゃ。」


突然剣聖さんが舞台に舞い降りる。


「わ、私は、剣聖の剣をーーー!技をーーーー!」


剣聖さんに襲い掛かる・・・


「真面目なのもいいが、お主は求め過ぎじゃの〜。それに相手は儂じゃないじゃろ?」


レイリーが二人の間に入り、バチロウを弾き飛ばす。


「まだ続けるのか?これでは試合ではなく死合になってしまうがの?」


「最初からそのつもりだーーーー!」


バチロウはもう動けそうにない・・・。


「ほっほっほ、すまんの侮辱したようじゃな・・・。仕方あるまい、では、レイリー止めを。」


「ま、待て!せめて剣聖お前が・・・」


「ふはははは、お主も見る目がない輩じゃったか?安心せい、レイリーはもうすぐ剣聖になる。それも儂の届かなかった場所へ届くやもしれん。」


剣聖さんは笑いながらそんなこと言ってるが、俺も同じ意見だからね!


「レイリー止めを・・・。」


「はい・・・。」


騎士道と言うのか武士の情けと言うのか知らないが、傷だらけで動けない者に止めを刺すことは俺にはできないだろうな・・・。


そんな、俺の思いとは裏腹にバチロウの顔はとても晴れやかなものだった・・・。



バチロウは、剣の道をこよなく愛した結果、悪に取りつかれてしまったのだろうか・・・?その答えを知るものはもういない。



−−−−−−−−−−−−




騒然とした観客席から歓声が聞こえる。


剣聖さんとレイリーの試合が始まるようだ。先ほどまでのどんよりした空気はどこへ?と尋ねたくなるが、これでいいのだろう。


数年に一度のお祭りなのだから・・・。


そんなことを思いながら俺は、会場を後にする。


・・・・・・賭け屋へ行くために!


あかん!本当に鼻血が止まらん!興奮しすぎで、鼻血がーーーー!


連日の鼻血で血が足らん!真面目にこのままじゃ出血多量で死ぬーーーー!


思わず喜びの叫び声をあげてしまう・・・。



俺の手持ちの金貨は1000枚を超えてしまうのだから。



−−−−−−−−−−−−−


場所は変わって獣人の国コツェルン、ラヴィーニャの故郷。


そこで一人の獣人が獣人の国の首都サイナルの貴族街のある屋敷でたたずむ。彼の名はギャビン狼の獣人だ。


「第一王女体制もいよいよ終焉を迎える様だな・・・。」


「あぁ、そうだな。あそこまで狂ってしまってはもうどうにもならない・・・。」


「取り敢えずは幽閉しておくということで上の者たちとは話がついているが・・・。」


「次はどうするんだい?」


「そうだな・・・この隙を付いて良からぬことを考える愚か者も現れるだろうから、手は打っておかねばなるまい。」


「で、どうするんだい・・・?」


「まずは、第1王女に近かった者の処刑からだな・・・」


「そうだねぇ・・・。」


「気が乗らんのも分かるが、今はこうするしかあるまい。なるべく早く姫が来てくれればいいが・・・。」


「そうだねぇ・・・。そう言えば、その姫さんの偽物、何でも最後に現れたときに、やっとダーリンに・・・とかなんとか言ってたらしいぜ。」


「ダーリン?なんだ?」


「あたいにもわかんね。変な口癖に巨乳の姫さんか、一度会ってみたかったぜ。」


「ふっそうだな。まぁ実際の姫が巨乳ってことはありえんがな!」


「あぁ。そうだな・・・(またハッキリ断言しやがった・・・こんなこと言ってるのがバレたら首が飛ぶぞ・・・?)」



しばしの沈黙の後「クシュン」と遠くから聞えたような気がした二人だった。


その様子を見てまたまた、「子供は見ちゃだメェー」といいながら蹄の間からバッチリと見るカルル。



この山羊いい加減にしろよ!そんな声が聞こえたよう気がした・・・?




こうしてラヴィーニャの知らないところで獣人の国は平穏を取り戻そうとしていた。



当事者はだれも魔王の手による国崩壊の危機だったとは知らない。


これでいいのか魔王さん?大丈夫なのか魔王さん・・・?




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