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魔法師リディアとゆかいで怖い仲間たち  作者: 高瀬さくら


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Ep.14ー1 星降る聖夜に約束を

久々です。12月25日はディアンの誕生日です(ヒロインのは決めていない)

なので恒例の誕生日話を書きました。

5話ぐらいでクリスマスまでの連載になるので(もう書き上げました)、まだまだ思い出して読んで下さる方がいたら嬉しいです。

 その闖入者の気配は突然だった。

 感じたのは、本当に直前。迷ったのは全く魔力がなかったから。


 なのになぜか、誰にも塞がれずに止められもせずに、こちらへと進んでくる。


 ただ、入口付近での多少の騒ぎだけがある。


 ブリーフィングの最中だった。

 まずディックががたんと椅子をひっくり返し立ち上がる。闖入者に対しての戦闘モードじゃない、むしろ顔色が悪い。その中腰になった手を、ディアンが、がしっと掴む。


「――離せよ、俺はご免だ」

「お前が止めろ」


「やだよ。お前が自分で――」


 その間にも、どんどんその気配は進んでくる。リディアはその光景とその人物が迷わずにここに来ることに内心首を傾げた。

 シリルは面白そうに片頬をついているし、ディックはマジで手を外そうとしているし、ディアンが一番引きつった顔をしているし。


 そう、ディアンが――団長の顔がヤバいと言っているのだ。


 そして、バンっと派手な音がしてドアが開かれた。

 機密情報の会議じゃないから、今日は施錠していない。ただ、この基地には部外者が入れないし、ここまで誰にも見咎められないで来ることも不可能。


 なのに、その人はここまでこれたのだ。


 その女性の背後は、引き気味な男性団員数名が壁際に張り付いていた。


「入ってくんな、カロリーヌ」


 そしてディアンが唸るように、その女性に告げた。


 体型は中肉中背。整った顔をしているが、ディアンがいつも付き合っていたような腰がくびれて、胸元が見える自信満々なお姉さまタイプとは違う。


 けれどその女性は言った。


「カロリーヌ、じゃなくて、お ね え 様」

「……」


「お・ね・え・様」


 ディアンが押し黙る。そして凍った場の中で、ディアンも唸り声一つあげず、文句も言わず、ただその女性を睨むだけ。


反撃、もとい反論一つ、ない。


(え、まさか)


 黒髪のボブ、茶色ががった瞳、威圧的な態度。――ディアンほどではないし、魔力も放っていない。

 けれど、ディアンに向けるその迫力は全く負けていない。


 誰にでも丸わかりだった。


 彼女が――ディアンのお姉さまだということが。


「出てけ」


 お姉さま呼びを強調されたディアンだが、それには応えず一言だけ放つ。


「用が済んだら出ていくわよ」


 そして、お姉さまは、そう呼ばれなかったことに、そこまで強要しなかった。代わりに顎をくいとあげて、まさにお姉さまのいでたちでディアンに向き直る。


 ――彼女は、これまでディアンを呼び出しする女性の中では割合、まともだった。

 机に見せびらかすように捻って腰を置くわけでも、胸元を強調して肘をつくわけでもない。


 ただ立ったままディアンを糾弾するように、腰に手を当てている。ホントにお姉さま、だ。


 そしてちらりと、周囲を見渡した。


「あ、これ。手土産(てみやげ)です。冥土(めいど)の月。皆さんでお召し上がりください」


 いきなりの丁寧なお言葉。

 

 そして、どんと置かれたのは、紙袋二つに入った箱。確か、中央諸国連盟のバルディアの上のほうのドット国の名物だったような。カスタードクリームの入った月を模した有名菓子。


 冷やして食べた方が美味しいそれは、リディアも大好きだ。


 皆が大好きな名物お菓子、ただしここはブリーフィング中で、しかも傲岸不遜な態度で姉弟喧嘩をふっかけ、その喧嘩を売られているここのボスは超不機嫌。

 

 やったあ! と冥土土産を喜べる雰囲気はまったくない。

 

 ありがとうございます、と誰も手が出せない。

 人数分なさそうだし、リディアはこの後外勤だから、できれば今のうちに確保しておきたいのに。


「てめ、今は会議中なんだよ」

「あら。今までそういう気づかいをしたことがないでしょ、あなた」 


 そう言って彼女はいきなり笑顔で自分たちに頭を軽くさげる。


「皆さん、不肖な弟がお世話になっております。俺様に育ててしまってすみません」

「お前に育ててもらった覚えもねーし、そもそも紙袋二つとか中途半端――」


「あ。リディアさんね! お話は聞いていたけど、本人が照れちゃって、全然っ連れてこないからお会いすることができなくて、ごめんなさいね」


 そしていきなりリディアの手をがしっと掴んでくる。冥土の月の数を考えている場合じゃなかった。


 慌ててリディアも立ち上がり、頭を下げる。


 なんか、会話にたまに変な言葉が入るから、難しい。あっちでは、解放されたディアンが叫んでいる。


「ていうか、ディック、シリルっ。漏らすなよ」

「俺に止められるかよっ」


 ディックがじりじりと壁際に去ろうとしているけど、シリルは余裕で不敵な笑みで椅子に座って傍観している。


「すみません! ご挨拶が遅れまして」


 あっちで揉めている男たちを無視して、リディアはぴょこんと頭を下げる。会話の流れがおかしいとかではない、それは重要ではないのだ。


(やばい、やばい、やばい)


 もっと早く挨拶に行くべきだったのに――!!


 いきなりあちらから挨拶をされに来てしまった。


 着ている服は、師団支給のジャンバー、伸びかけた髪はひとくくりで上にあげているだけ。化粧だって落ちかけている。


 この後、紛争地域の討伐魔獣の残渣確認に行くからと作業着でいたのがまずかった。


 いいや、格好じゃない。問題は、あちらから足を向けさせてしまった、ということ。


「いいの、いいの。それでね、うちのバカ弟のことなんだけど」


 バカ弟。ディアンをそういうことを言える人種がいるとは思えなかった、これまでは。


 そしてくるりとカロリーヌはディアンに向き直る。


「いい加減、母さんがしびれを切らしているの。アンタ、全然帰ってこないでしょ」


 まだがっしりリディアの両手をホールドしながら、彼女の首だけがぐるんと横を向いている。固まっているディアンにまっすぐな目が、獲物を狙う猛禽類のようでちょっと怖い。


「今度の“もみの木祭りホリデー”。絶対帰って来なさいよ。リディアさんを連れて」

「いや、こっちは業務を詰め込んでるんだ、穴をあけられるかよ――」


 彼女の目は猛禽類じゃなかった。間近で見ていたリディアにはわかった。シャーと牙をむいた蛇だった。


「アンタ、一番偉いんでしょ。休み作れなくてどうすんのよ、無能」


 “無能”、呼ばわり。その場がもはやフリーザー。

 姉弟喧嘩って怖い。リディアも兄妹喧嘩で全く敵わなかったけど、ディアンもやっぱり姉には敵わないのか。通常ならその毒舌か、魔力で瞬殺しているのに。


「それに、アンタなんてどうでもいいの。”リディアさん”を呼んでるのよ、母さんが」


ちなみに「天球の海を渡る魔法少女」という新作も書いています。

お試しで読んでやってもいいか、という方がいたら読んで下さったら嬉しいです。

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ありがとうございます。楽しんで、いただけますように。


*スマホでは動作が遅くて読めないようです、可能であればPCにて御覧ください。申し訳ありません!
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