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第一話:連発式災難

ハロー。皆さん。

うん―――今日はこんな話をしに来ました。

あるところに少年がいた。

少年は所謂、トラブルメーカーだった。


きょとん。って。

そんな顔をしないでくれよ。

きっと面白いお話だから聞いておくれ。


さて。続きを話そう。

少年はトラブルメーカーだった。

しかも。彼は並のトラブルメーカーじゃあ、無かった。


常識の“内“で生きているヤツらも、“外“で生きているヤツらも巻き込んで大問題を発生させてしまうような少年だったのさ。


それは災害。天災。

あらゆる存在に災いを降り懸けた。


少年は自分の“才能“を呪った。

そして悩んだ。

悩んで悩んで悩んで、私は世の苦悩を全て背負い込んだのかと思うほどだった。


そして少年は思いついたんだ。

『自分で解決してしまえ』


―――笑えるだろう?

意思とは逆に勝手に招いてしまう災いを、少年は自らの労力で解決しようとしたんだ。なんて。

なんて不幸な存在だ、少年よ。


私は笑った。

少年の不幸を笑いとばしたよ。

そうしたら少年は少し怒ったんだ。

私には“災いは降り懸からない“し、どうでもいいんだけどね。

私は《証拠隠滅》と《ルーシー》以外には苦手な者は無いから。


お詫びに私は助言をしてあげたのさ。

『君の招く災いで、困ってる人達を助けてあげなよ。そして金をふんだくってやればいい。』


――ぷっ。

あはは。

まさに自給自足。正真正銘、エコロジイだ。

なんて地球に優しい金儲けだろう。

人間たちが吐き出す二酸化炭素も出さないし、ゴミも出ない。ああ愉快愉快、っと。


そうして出来たのが私たちの会社トラブルメーカー

創立160年の老舗だよ。



――――え?どうして私達にそんな話をって?


そりゃあ、今からここに“災い“が降り懸かるからさ。


ウチの社訓は《お客様には安心のご説明を!》だからね。


――――おっと。

社長のご到着だ。


さあさ、皆さん。

こちらがさっき話した初代トラブルメーカーの曾孫。

そしてウチの社長さ。


今からあなたたちに“災い“を招いて頂く。


おっと。

呪うなら私を呪ってくれ。

でも本名は教えられないな。

そっちは呪われたくない。

祟られたらたまったもんじゃないからね。


そうだな―――こっちでの名前なら教えてもいいよ。

《副社長》って名前さ。

呪うならこっちをよろしくね。


――――呪われれば呪われるほど、磨かれる名前もあるものさ。


そしてあなたたちを助けるのも私たち《トラブルメーカー》。


金をふんだくるのも《トラブルメーカー》。

呪われても仕方ないな。はは。さあ来たようだ。


―――只今午前11時2分。


●●県●●地区に震度7の地震が発生するまで…

3、2、1――――――――――――。 






――――――その日、●●県●●地区を震度7強の地震が襲った―――――。



      ※


――――何が起きた?


ぼんやりと霞む頭で思い出そうとするが、少女の思考は目の前の闇に溶けて消えてゆく。


―――私は確か、お昼の支度をしようと台所に――――そして?


そうだ。グラッと。

床が跳ね上がって――――そして私、そのまま―――。

こんな光景を前にTVで見た気がする。私は頭を柱に挟まれていた。


ん?これ、屋根?


普段は跳んでも跳ねても手の届かない屋根に、楽に手が触れた。

つまり――――家、潰れてる?


…。

あわわ。やばいよやばいよ。

留守番中に私、家潰しちゃったのね。

あわわわわ。

なーんて呑気に慌ててる才賀悠希。

ちなみに17歳。


ってセルフ自己紹介してる場合じゃないみたい。

本格的にヤバイね、こりゃ。


とりあえずヤバイらしい少女、才賀悠希は自分の頭をガッチリ掴んでいる柱に手をかけた。


…んーむ。

ちっとも動かんね。

だみだこりゃ。


んん。一旦整理しよう。

これが地震だとして、家が潰れて、私は下敷きになって――――――。




ってひいい!

やばいやばいやばいやばいやばい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃうっ!


なんて焦っても仕方ないか。

幸い怪我は無いみたいだし、のんびりまったりレスキューでも待ちますか。


んふふ。

海猿みたいなワイルドでイケメンなお兄様が助けに来ないかな。


ん、ごほん。

悠希ちゃん!助けに来たよ!

んー…似てる?


彼女の中笑いな物真似は、素人漫才の観客席よりも冷たく、悲しい闇へと吸い込まれていった。



      ※


『ん。今声が聞こえた。』


瓦礫と炎で惨々たる情景を晒している町――――彩雅堂町は、大地震に襲われた●●県の中心的な町である。


2時間前までは、江戸時代からの旧家の建ち並ぶ風光明媚な町であった。


今では旧家は炎を煽る薪と化し、時代の流れに建設されたマンション群は瓦礫の山と化している。


炎が跋扈し、累々たる死屍が地面を埋める地獄の惨状に、まるで場違いな連中がいた。まるで奇妙をぎゅっと凝縮したような―――――間違い探しの“間違い“のような――――。



『ぼう、ぼーう♪ほーのーおがもーえーる♪』


混沌とした世界で、底抜けに明るい声で唄っている少女。

周囲は地獄の有様だというのに、赤いワンピースという状況にそぐわぬ出で立ち。



歳は6、7歳だろう。

少女は右によろよろ、左にふらふらと転げそうに踊る。

場をわきまえぬ歌と踊りに“外“の者特有の―――奇妙。


『ルーシー、転びますよ』

と、燕尾服を来た大柄の老人が声をかけた。

彼もまた――――奇妙。


身長は、そう。

3mくらいだろうか。

先程の少女が燕尾服の裾あたりでころころ走っている。

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