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アウター・ワールド  作者: キョウペイ
3/22

エピソード0-3

「……あの、そこのあなた」

 突然の背後からの声。ユイは体勢を変え、後ろを向いた。

 白く煌びやかな服を着た女性だった。優しそうで柔和な瞳。手入れのされた美しく長い金髪。背中には目を引く白い翼。しかし、左右でその翼の大きさが半分近く異なっている。けれど、その風貌は間違いなく、天界に住む天使の人だろう。

「私はアリアと申します」

「あたしはユイ。もしかして、あんたも……」

「はい。私も連れ去られた者です。私、いえ、私たちは、操縦者を引きつけておくように言われていました」

「私、たち?」

 複数いるのか。ユイはアリアの奥を覗き込んだ。

「……ここ」

「いつの間にっ」

 気づかないうちに、アリアの後ろにもう一人の人物がいた。黒いローブに身を包んだ、小柄な女の子だった。眠たそうな半開きの目。肩までの青い髪。そして頭には三角形の猫のような耳が付いていた。獣の部分を持つということは、魔界の人だろうか。

「……名前はファル。あなたはユイ」

「私はファル様と一緒に操縦者を引きつけていました」

 ユイは思い出す。最初にヘリに乗せられた時、男たちが会話していたことに。あれが操縦者なのだろう。そして、ナイフを持った男と対峙している際、その操縦者がこちらに関与してくることはなかった。

「その操縦者、今はどうなってる?」

「……こっち来て」

 とファルが答えたので、ユイは操縦席に近づいた。ファルが向かって左側の副操縦席にちょこんと座る。

「……視覚と聴覚、発声を塞いである」

「え?」

「……自分は一応魔術師だから」

 魔術師。魔術を扱う者のことを言う。魔術とは簡単に言えば、体内の魔素を目的に合わせて変換し、望む結果を引き起こす術のことだ。世界の事象を極小単位で操るのである。

 ユイは操縦者を見た。確かにこれだけ近くで会話しているのに、全く自分たちに気づく様子がない。そして口が動いているにも関わらす、その声は一つも聞こえてくることはなかった。

 ファルの言ったように、視覚と聴覚、発声が塞がれていた。

「……あ」

 ユイは一つ推測する。

「機体がすごく傾いたのって、もしかして……」

「……たぶん、視界を塞いだとき」

 そりゃあ視界がなくなったら驚くに決まってる。まともな操縦はできないだろう。むしろ今ちゃんと飛んでいることに驚きだ。

「これからどうするのですか?」

 アリアが肩越しに訊いてくる。ユイは少し考え、口を開いた。

「二人って、ヘリの操縦できる?」

「……自分はできない」

「私は……」

「? 何かあるの?」

「私、この……ヘリ? ……というものの操縦はしたことはありません。しかし、私――いえ、天使の能力として、物の使い方が直感で分かるというものがあります」

「つまり、操縦できる可能性があるということね?」

「はい」

 これは助かった。もし誰も操縦できなかったら、このあとの計画が全て終わるところだった。

「じゃあ、この男をポイッ、しましょうか」

 ファルとアリアが絶句する。ユイは二人の顔を交互に見る。

「あれ? 何かおかしなこと言った?」

「……発想が悪魔的」

「人としてそれは……」

「大丈夫、やるのはあたしだから」

 何はともあれ行動を開始。まずはファルが男に掛けていた魔術を解除する。

「あッ!? 見える!?」

「はい、動かないで」

 そう言って、ユイは男の頭に銃を突きつける。

「立て」

 男を操縦席から立たせ、ヘリ後部に進ませていく。男が操縦席を離れると、アリアがすぐさまそこに座った。ユイはちらりとアリアの様子を窺う。特に慌てた感じもない。おそらく操縦は大丈夫だろう。

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