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酔っ払って作ったクソゲーの最弱ザコキャラな私  作者: くまのき
超スーパーウルトラバリア大作戦編
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予知夢(さいしょからしってた)

 破邪マッスィーン蹴り放題。

 今日はキックの大判振る舞い大サービスです。


 この中腰キック連打攻撃。

 つい最近も、同じ攻撃をオウムの像に繰り出しました。

 破邪マッスィーンはあの鳥さんより更に小さく、ちょっと蹴りづらいですね。


 しかし破邪マッスィーンもオウム像と同様に動かないので、避けられる心配も無く、単純な蹴りを放ち続ける事が出来ますよ。

 一秒間に十六回以上出てるらしい蹴りを、何度も何度も繰り返します。






 前回の幹部会議にて。

 博士さんは、サイサクさんを誘い出して捕まえる、という作戦を提示しました。

 幹部の皆さんも、「危険だけどやってみよう」という御意見。

 コケツにハイラズンバ……えーと、よく分かんないですけど、虎の穴に子供がいるからって事らしいです。


「バリアの弱点をわざと残す。そしてテレビ生中継する……けど、怪しまれないように宣伝はちょっとだけ。そしてわざとロボットを乗っ取らせて、スーちゃんが逆探知ギャクタン


 博士さんが、今回の作戦のおさらいを言いました。


「ここまで騙し合いをしても尚、サイサク君はわざと引っ掛かったフリして、逆にこちらを罠にはめる可能性もありますけど」


 サイサクさんの罠。

 反モンスター同盟の罠。  

 一体どんな罠が待ち構えているというのでしょうか……と考えた所で、はたと思い出しました。


 破邪マッスィーン。


 あれは反モ同、それも巨大ロボットさん乗っ取りマシンの製作者……つまりサイサクさんが作ったアイテムだったはずです。


「あ、あのぉ……すみません……」


 私はおずおずと手を挙げ、発言しました。

 破邪マッスィーンについて説明します。

 当然博士さん達は半信半疑。


「えっ、何々ミィちゃん。破邪マシン?」

「マッスィーンです……」

「その兵器情報、どこから入手したんスか?」

「あぅ、えっと、それはぁ……」


 私は情報の出所を聞かれ、困りました。

 前世の私が作ったからです、と言っても信じて貰えないでしょうし、変な子扱いされちゃうでしょう。

 実は以前に情報屋さんからリークして貰ってたのです。と言おうにも、私にそんなツテが無いのはバレバレですし。

 ツテがあったとしても、「どうしてそんな大事な情報、今まで黙ってたの?」ってなりますし。


 さあどうしましょうか。


「え、えっとぉ……夢で見て……」


 はい馬鹿。

 私の馬鹿。

 追い詰められて適当な事を言っちゃいました。

 言うに事欠いて「夢で見た」って。

 これじゃあ「私、未来が見えるのヨ」と言って皆の気を引く寂しがり屋さんじゃないですかぁ!


「なんと、予知夢であるか! さすがミィ君、桁外れた力を持っている! 先を見通せる能力者、吾輩これまで生きて来て実際に見たのはこれが初めてであり……」


 ちょっと長いので台詞を省略しますが。

 サンイ様だけは、迷い無く信じて頂けたようです。


 でも他の皆さんは、半信半疑なお顔です。

 当然ですよね。

 もっと別の理由を付けるべきだった……

 なんて後悔していると、モニター越しの魔王様が何故かお笑いになられました。


「なるほど……ふっふっふ。いや、失礼。しかし……そうですか」


 魔王様は、笑ってずれた白い仮面を、左手で押さえながら、


「ミィさんの言葉はおそらく真実ですよ。博士さん、スーさん。作戦に組み込んでください」


 と、おっしゃられました。


「はぁ……で、でも人狼って予知夢見るんスか?」


 そのスー様の言葉に、隣のサンイ様が立ち上がり、大声で言われます。


「スネキックは世界意思に選ばれし者のみ使いこなせる神技! ミィ君が予知夢を見ることが出来ても、何の不思議もない! いやむしろ必然と言える!」

「はぁ。そうなんスか?」


 一応皆さん納得してくれたようです。

 サンイ様が、何故かスネキックを極端に神聖視しているおかげで助かりました。

 まあスネキックでなくクリスタルレインボーなのですけどね!


 とにかく破邪マッスィーンの存在と、その危険性を皆さんにお伝えしました。


 そして破邪マッスィーンは人型ロボットなので、


「きっと私のスネキ、じゃなかったクリスタルレインボーで破壊できます……多分」


 という事も。






 そのような経緯があり、私はこうやって破邪マッスィーンを蹴り続けているというわけです。


 バリア内部に侵入し、巨大ロボットさんを操る。というサイサクさんの作戦。

 その裏をかき、サイサクさんをわざとおびき寄せ捕まえる。という博士さんの作戦。

 更にその裏をかき、博士さんをおびき寄せ、破邪マッスィーンで弱体化させ殺す。というサイサクさんの作戦。


 ここまで全て両者の作戦通り。


 そして破邪マッスィーンを破壊する。という私の作戦に帰結。



「いくら蹴っても無意味ですよ。四天王と言えど子供。しかも破邪術が掛けられた人狼ごときが、その強固なマシンを破壊出来るはずがありません」


 サイサクさんは、嘲笑交じりに言いました。

 マッスィーンを奪われた時に驚きこそしていましたが、すぐ冷静に戻ったようです。

 大した胆力です。さすが単身で魔王城にスパイ潜入していた人間さん。


 しかし私は、そんなサイサクさんの言葉を再度無視し、無言で蹴り続けます。


 ……と言っても、その連続蹴りもすぐに終わります。


 確率はたった二パーセントだけど。

 百回も繰り返し蹴れば、八十六パーセントの確率で成功するのです。

 この前、マリアンヌちゃんに計算して貰いました。


「いい加減にしなさい。兵士の皆さん、その子供を殺して……」



 ズジャジャジャジャン。

 と、軽快な効果音がどこからともなく鳴り響きました。



「……な、なあっ!?」


 破邪マッスィーンは、木っ端みじんに崩れちゃいました。

 さっきまで余裕も余裕の憎たらしい表情を浮かべていたサイサクさんの顔が、途端に変貌します。


 部屋中を照らしていた、破邪の光が消えました。

 これでマッスィーンの効果も消えるはずです。


「前にも言ったでしょサイサク君。このミィちゃんって、すんごく頼りになる子なんだよねえ」


 博士さんはそう言いながら、私の頭をポンポンと軽く叩きました。


「え? えへへえへ」


 私は照れて、ヘンテコな笑い声を出しちゃいます。

 そんなほのぼのとした私とは対照的に、人間さん達は大慌て。

 特に、部屋隅にいる人間軍のお偉いさんっぽい口ひげおじさんは、顔を真っ赤にして怒鳴っています。


「どういう事だね技術開発部長! キミが大丈夫だと言うから許可したというのに、このわしの面子を潰すつもりかね! 一台作るのに莫大な金がかかる貴重な破邪マッスィーンをこんな」

「……人狼のお嬢さん。どうして破邪の光を浴びながら、破邪マシンを砕く事が出来たのですか? あれは特殊合金と加護を纏っていて、例え力を奪われていなくとも、ちょっとやそっとでは壊せない代物です」


 偉そうなおじさんの言葉を意にも介さず、サイサクさんは椅子から立ち上がり、私に聞きました。


「も、元々私の力はちょっとしかありません。魔力に至っては全くありません。だから破邪マッスィーンの影響はそこまで無くて……さっきの蹴りは、腕力も魔力も関係無く繰り出せる技なのです」


 私はちょっと目を反らしながら答えました。

 相手は人間さんだけど、初対面の男性との会話は怖いのです。


「ほほう。そうかなるほど、以前私が操った巨大ロボを破壊したのも、その技だったのですね?」


 その問いに私が頷くと、サイサクさんは口に手を当て、軽く笑いました。


「素晴らしい。どうやら僕もまだまだ研究不足のようですね。魔王城に潜入捜査していた時も、そのようなタイプの技にはお目に掛かりませんでした」

「当然だよサイサク君。オジサンもミィちゃんに出会って初めて知ったからね、このスネキック」

「クリスタルレインボーですぅ……」


 そんな私の訂正は、偉そうな人間おじさんの大声でかき消されてしまいました。


「そんな子供の技などに、何を感心している暇がある! おい技術開発部長、ふざけるな! 情けないとは思わんのかね! 早くコイツらをどうにかしたまえキミィィ!」


 自分自身でどうにかするつもりはないのでしょうか。

 まあお偉い立場のお方は、自分から動いたらいけないのかもしれませんね。


「だってさ。サイサク君、まだやる気?」

「ウチも、今ならフルパワーの魔法を出せるッスよ! その肌、焦げ茶色に染めてやるッス!」


 スー様は指先から小さな炎を出し、脅します。

 どうやら破邪の光の効果が切れ、魔力と腕力が戻ったようです。

 私もさっきまで光の影響で気分が悪かったのですが、今はもうすっかり治っています。

 後ろにいたモンスター兵士さん達も、破邪の効果が切れて俄然元気になっています。


「スーちゃんの怖さ知ってるだろ? サイサクくん、素直に大人しく捕まってくれない?」

「……ふう、そうですね。この状況で戦っても、無駄死が目に見えていますからね」


 意外と悪あがきをしないサイサクさん。

 しかし上司のおじさんは許してくれないようで、


「ふ、ふ、ふざけるなぁぁあ!」


 唾をまき散らす勢いで……結構育ちが良いのか実際にはまき散らしていませんが、とにかく大迫力で怒鳴ります。


「何を言っているのかね技術開発部長! まだ何か兵器があるだろう! そんな醜いモンスター共、皆殺しに……」



「うっせーッスよ人間!」



 スー様が大きな火の玉を放ち、おじさんの顔に当てました。

 髪の毛が燃えてます。

 小太り口ひげおじさんは、小太り口ひげハゲおじさんになってしまいました。


「ひゃ、ひゃああああん髪があああああん」

「まったく、人の事を肩書だけで呼ぶなんて……ウチとキャラが被る!」


 あ、そこに怒ってたのですか?


 おじさんはすっかりと怯え、地面にへたり込みました。

 サイサクさんは冷ややかな目でそれを見た後、両手を挙げて言います。


「分かりましたよ博士。ここは素直に投降しましょう」

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