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酔っ払って作ったクソゲーの最弱ザコキャラな私  作者: くまのき
超スーパーウルトラバリア大作戦編
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求人(あるばいとじょうほう)

 ある晴れた昼下がり。

 私は、お城の廊下を一人でぶらぶらしていました。

 お城の改装工事の進み具合を確認して回っていたのです。

 結局初期内装案そのままを採用したのですが、体裁としては私が案を出したって事になっていますから、一応の責任があるのです。


「ミィ様、お久しぶりです!」


 見回り途中に、女性の妖精さんに話しかけられました。

 手の平に乗れそうなくらい小さな、若い妖精さんです。


「私今月から、正式に魔王軍に入隊したんですよ!」

「あ、はい。それはおめでとうございます。お久しぶりで……えっとぉ……」


 私は言葉に詰まります。

 大変失礼な話なのですが。

 この妖精さん、どなたでしたっけ?


 以前お城を案内し、一緒に迷子になっちゃった妖精さん……とは違います。

 中華スープを運んでくれた妖精さん達は、全員男性でした。この方は女性。つまり違う。

 いつも城内清掃してる妖精さんでもありませんし。


 他に妖精さんのお知り合いは……うーん……?


 なんて私が冷や汗を掻いていると、妖精さんは、


「あっ、すみません。この姿で話すのは始めてでしたね」


 と苦笑いしました。

 ええと、「この姿で」という事は、別の姿でお知り合いだという事でしょうか。

 変装の術とか使う忍者妖精さん?


「以前、兵器開発局で巨大ロボットを動かすバイトしてたんですよ私。数か月前、城の外庭でお会いしましたよね!」

「……えー……あ、ああ! あの時の!」


 それは、私が初めてこのお城に来た時の事です。

 ヨシエちゃんと一緒に迷子になっちゃって、偶然出会ったミズノちゃんに出口まで案内して貰って。

 無事お庭に出た後、これまた偶然巨大ロボットさんに出会い、私とヨシエちゃんは高い高いをされたのでした。


「いやああの時は、『子供を見たらとりあえず抱っこしろ』ってマニュアル通りにやったんですけどね。黒髪の子を持ち上げた後に気付いたのですが、お隣にいるのが四天王のミズノ様。ちょービビりましたよマジ実際」


 そう言えば巨大ロボットさんは、私とヨシエちゃんを抱っこした後、露骨にミズノちゃんだけはスルーしてましたね。


「何日か後にテレビ見てたら、あの抱え上げた子が新四天王だって発表してて。もうビックリするやら怖いやら。何故かバイトも廃業になるし。いやーあの時は申し訳ございませんでした!」

「あ、いえ……あはは。気にしていませんから」


 謝られ慣れしていない私は、どう言葉を返せばいいのか分からず、とりあえず笑って誤魔化します。


 しかし、ちょっと気になる事が。


 アルバイトが巨大ロボットさんを動かすのは、ヒーローショーなどのボランティア活動時。

 そして戦闘任務では、博士さんが直々に操縦していた。と、聞いています。


 外庭で出会った時、ロボットさんは戦闘任務から帰還した直後だったはずです。

 つまり操縦していたのは、博士さん……だと思っていたのですが。

 まあ博士さんは、あの出会いを全く覚えていないと言っていましたが。


 その疑問を口にすると、妖精さんが答えてくれました。


「あの時、局長は『眠いから代わりに操縦して。後はもうお城に帰るだけだから』って言って私にコントロールを託して、机に突っ伏してさっさと寝ちゃったんですよ」


 ああ……博士さんが言いそうな台詞ですね。

 ちなみに局長とは、博士さんの肩書である『兵器開発局長』の事です。


 あのおじさんはいくつかの肩書を持っていますが、主に兵器開発局長という名称を使っています。

 博士さんは実質の四天王なのですが、それは軍の一部のお偉いさん達以外は知らない事。

 対外的には巨大ロボットさんが四天王という事になっています。

 博士さん自身は戦闘が不得意なので、襲われたりしないように正体を隠しておきたいのです。

 そのため博士さんは、『精鋭部隊長』という四天王の正式な肩書をほぼ使いません。


 そんな機密を抱えているわりに、正式な軍従事者ではないアルバイトを研究室に入れてロボット操縦させてたりと、何だか適当な事をやっていますが。

 あの器用なおじさんの事なので、バイトさんを上手く誤魔化していたのでしょうね。


「それでは、局長にもよろしくお伝えくださいね!」


 妖精さんは元気よく挨拶し、廊下の先へと飛んで行きました。

 私は「あっはい、さようならぁ」と手を振ります。


「しかし、アルバイトですかぁ……」


 私達四天王は、部下を自由にスカウトして良いという人事権を持っています。

 その人事権を使えば、簡単にアルバイトを雇えるのです。

 私は自分の部隊編成を断念した苦い過去があるのですが、戦闘要員ではなく事務等担当のアルバイトやパートさんなら雇えるかもしれません。

 そうすれば私は上司。一国一城の主……とまでは言えませんけど、憧れのキャリアウーマンっぽいカンジになれます!


 良いですね。

 出来る上司、私。

 うぇへへへへへ……


 とは言え、別にバイトさんに任せるような雑務は無いんですけど。

 私、基本的にはヴァンデ様の言う通りに黙々と戦場で踊ってるだけですから。


 そう言えば最初ヴァンデ様が「お前の能力は大勢を鎮圧するのには向かない。戦場の前線に行かせることは無いだろう」なんて言われてましたが。

 いやあ、結局バンバン行ってますね。戦場。

 当時の私はスネキック、いやクリスタルレインボーを使えるという一点のみを評価されていました。

 なので当初の予定任務は……これは博士さんが内緒で教えてくれたのですが……実は暗殺任務だったそうです。


 暗殺!


 無理!


 怖い!


 が、その後に防御力も評価されちゃいまして。

 結局今のように、戦場で人間さんの攻撃に耐えながら呪いのダンスを披露する、という任務に落ち着いたのです。

 今の任務と、暗殺任務。どっちの方がマシだったのかは定かではありませんが。





 なんてぐだぐだと考えながら廊下を歩いていると、前方からガヤガヤと騒ぎ声が聞こえてきました。

 どうやら食堂前の廊下で、誰かが大声でスピーチしているようです。

 しかもミュージック付き。

 そのスピーチをしているお方の周りに、軍のモンスターさん達が大勢集まっています。


 私は気になり、早足で近づいてみました。


『B! A! R! R! I! ER! バリア!』


 なにやら軽快な音楽に乗せ、歌っています。

 私は背が低い……いいえ、あの、チビではないのですよ。

 言い直します。

 私は背が歳相応なせいで、集まっているモンスターさん達が邪魔で、歌っているお方を見ることが出来ません。


『バーリア! バリア! バーリア求人!』

「す、すみませぇぇん……私も通してぇぇ……」


 モンスター込みの中を縫うように進み、前に出ます。

 そこには大きな立て看板がありました。


 有志求ム。

 バリア発生の動力確保のため。

 発電機を回してくれる、チカラ自慢の荒くれモンスター募集中。

 特別ボーナス有り。

 希望者、及び詳細確認したい方は兵器開発局まで。


 ……と、書いてあります。


 そしてその看板の横には、謎の歌声の正体が。


『バーリア! バリア! 高収入!』


 私もよく知っているお方で……いや正確にはちょっと違いますね。

 本来は全長二十メートルあるはずが、今は一メートル半程度のミニサイズ。


『バーリアバリアでアルバイトー!』


 なんとそれは、四天王の一角。

 巨大ロボットさんでした。

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