表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酔っ払って作ったクソゲーの最弱ザコキャラな私  作者: くまのき
第645回チキチキ誰が魔王様を一番愛しているか大会編
76/138

最高幹部の居ぬ間に(きょうこうさいけつ)

 博士さんの実験室から出て、会議室へと向かいます。

 今日は、お昼休み前に幹部会議です。


「ふふっ。おはよう、お姉ちゃん」

「おはようございますミズノちゃん」


 会議室の前でミズノちゃんと出会いました。

 ミズノちゃんはいつも、二番目に部屋に入るようにしています。

 つまりどうやら、今日は私が一番乗りみたいですね。


「そうだミズノちゃん、アルバムが出来上がったんです。一冊どうぞ」

「あら、アルバム?」


 私はバッグから一冊の本を取り出しました。かなり分厚いです。

 二週間前にあった、私のお誕生日パーティーの様子をまとめたアルバムです。

 マリアンヌちゃん家お付きの写真家さんに作って頂きました。


「ありがとうお姉ちゃん……でも結婚式ならともかく、バースデイパーティーってアルバム作るものなの?」

「さあ? でもマリアンヌちゃんはいつも作ってるそうです」

「……さすがマリーお姉ちゃん。お金持ちって凄いね」


 可愛らしく微笑みながら、ミズノちゃんが言います。

 ミズノちゃんとマリアンヌちゃんはパーティーで初対面でしたが、どちらも優雅な物腰という事で通ずる部分があったのか。

 すぐに意気投合し、お友達になっていました。



 あの落とし穴事件のすぐ後、私はパーティー会場に向かうためミズノちゃんと合流しました。

 髪も服も泥だらけだったのですが、偶然廊下で出会ったスー様から魔法で綺麗にして頂きました。

 スー様が指先でちょこんと私に触れると、あっと言う間に全身の泥が消えちゃったのです。

 魔法って便利です。お風呂入らなくても大丈夫じゃないですか!

 なんて事を言ったら、


「ウ、ウチはちゃんと毎日入ってるッスよ!」


 という言葉を残し、去って行かれました。

 とにもかくにも私は時間通りパーティーに行くことが出来て、皆と楽しく遊んだのです。


 結局私は鑑定機の試運転用の小物は持っていきませんでしたが、ヨシエちゃんが持ってきたビーフジャーキーの鑑定結果は見ました。

 定価通りでした。



「ほらこの写真。ヨシエちゃんとマリアンヌちゃん二人ともお皿に料理をたくさん盛って来て、お兄ちゃんが困っちゃってます」

「ふふっ。この後喧嘩してたね」

「ヨシエちゃんとマリアンヌちゃんはすぐ喧嘩しちゃうんです。どうしてでしょうか……」

「……ミィお姉ちゃん、ホントに理由分かってないの?」


 アルバムを見ながら思い出話をしていると、他の幹部の方々が続々と入室されました。

 出張中であるサンイ様を除く全ての参加者が揃い、時間丁度に魔王様との映像中継も繋がり、幹部会議の開催です。

 いつものように四天王、そして軍師の皆さんの業務報告がつつがなく行われました。


「以上。本日の議題全て終わったッスけど。他に何か言い忘れた事など有る人は……」


 進行役のスー様が、私の顔を見ながら言います。


「挙手!」

「は、はいぃ!」

「はいミィさんどうぞッス!」


 私はすかさず手を挙げ、テンポ良く指名されました。

 立ち上がり、魔王様が映っておられるモニターに向かって発言します。


「じょ、城内の改装工事について、せんえつながら意見申し上げたくぅぅ……!」

「はい。どのような意見でしょうか」


 私はガチガチです。

 業務報告は資料を読みながら話すので慣れましたが、このようなカンニングペーパー無しの進言は緊張するのです。


「じ、実は城内の工事のせいで、私も含めた新人さん達が迷子になる事が多くてぇ……このままじゃ業務にも支障が」


 何故私が急にこんな事を言っているのか。

 それは先程実験室で、大人達に「やれ」と言われたからです。


 いや実際は命令されたわけではないのですけど。

 他の方々はディーノ様サンイ様に遠慮する立場上、「さっさと工事再開しろ」とは言いづらいのです。

 幹部の中でそのようなしがらみが無いのは、大ニワトリのトサカさんだけなのですが、喋れませんし……


 しかし魔王軍に入って日の浅い私なら、知らないフリしてずけずけと議題に上げて大丈夫かも。

 それに今なら、争いの元となっているサンイ様が長期出張中なので、いない間にさっさと決めてしまおうという腹積もりです。


「なにーそれは大変ッス! あーでも内装をどうするか決まってないからなー。あっそうだ、今すぐどんな内装にするか、この場のメンバーだけで採決取ったらいいと思うッスよ!」

「スーちゃん、ちょっとわざとらしいよ……」


 スー様のどこか不自然な台詞に、博士さんがボソッと言いました。

 この内装工事問題をさっさと片付けてしまいたいと、一番切実に思っているのはスー様みたいです。

 スー様はサンイ様の補佐官ですが、だからこそサンイ様が帰って来てまた問題を引っ掻き回す前に終わらせておきたいとの事。


「迷子になるのは困りものですね。内装については幹部の皆さんに一任しています。早急に決める必要があるのなら、この場の皆さんで採決を取ってください」


 という魔王様のお言葉に、スー様の眼鏡が光りました。


「分かりましたッス! 洋風和風中華風、どの内装にするか揉めてたんスけど、迷子問題を早く解消するために工事期間が短い初期案の『他の部屋と同じ内装』にするって事で! 反対の人は挙手!」


 スー様は、我が意を得たりとばかりに活き活きと仕切っておられます。

 私はディーノ様の顔をチラリと見ました。無表情で、微動だにされていません。

 元々ディーノ様とサンイ様が、各自の意見を譲らないせいで揉めていた問題だと聞いています。

 ここで初期案に戻して強行採決するとなると、ディーノ様から反対意見が出ると思っていたのですが……意外にも何も言われませんね。


「よし、反対が無いようなので初期案に決定ッス。さっそく設備技術部に連絡を……」


「待ちたまえ!」


 突然、会議参加者のものではない声が聞こえました。

 若い男性の声です。

 私はきょろきょろと周りを見回しました。

 しかし、会議参加者が増えているわけでもなく、声の元が誰なのか分からない……いや、いました。

 スー様のお隣、不参加席。霧のようなものが揺ら揺ら漂っています。


「げっ……」


 スー様が露骨に嫌そうな顔を。


 霧は半透明の状態から、ハッキリと見える人型に変わっていきます。

 見た目は二十歳そこそこくらいで、背が高い、灰色の瞳を持つ男の人です。

 黒い髪を男性にしては少し長めに揃え、ケープや手袋などで顔以外の肌を覆い隠すような服装。

 腕を組み、自信満々な顔で座っています。

 完全に人型に変わり終わると、指の長い右手をスッと挙げました。


「吾輩は反対であるぞ!」


 良く通るお声。

 そして喋ると、口の中から鋭い牙を覗かせます。


 このお方、テレビで何度も見たことがあります。

 スー様とミズノちゃんの上司で、魔王軍最高幹部の一人。

 ゲーム中最強のモンスターで……


「サンイ様、いつの間に帰って来てたんスか! あーもう、ウチに連絡くらいしといて欲しいんスけど!」


 そんなスー様の抗議を無視し、サンイ様は席から立ち上がりました。

 そしてモニターの魔王様に向かって、深い礼をされます。


「おお我が偉大なる神。魔王様。不肖サンイめが任務を完遂し、ただいま帰還致しました」

「はい。サンイさんご苦労様です」

「なんと、なんと勿体なきお言葉! 不佞ふねいを労って頂けるとは感激の極み!」


 ふね……何?

 サンイ様は難しい言葉で、魔王様に頭を下げています。

 あれ? テレビでこんなキャラでしたっけ?


「我が身遠き地にあれど、我が魂は常に御身と共にあり。この世界を主のものとせんがため……いや元よりこの世界は魔王様の所有物。つまりこの戦は奪還のための聖戦。たとい我が身が滅び光の元で塵芥と化そうとも魔王様の……」


 このちょっと意味が分からないお話は、五分程続きました。


「……という決意を新たに致した所存!」

「はい。よろしくお願いしますね」


 魔王様のご返事を聞き、サンイ様は満足げな顔で座りました。

 やっと終わりました。

 お隣のスー様がげんなりされています。


「要約すると『褒められちゃった。嬉しい。これからも頑張ります』ってトコね」


 ミズノちゃんが私に耳打ちしてくれました。

 場が静まります。

 やっと会議が終わる……


「あの。ところで内装工事の件はどうすんです?」


 博士さんがおずおずと発言しました。

 サンイ様の長い話で、皆すっかりその事を忘れちゃっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ