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酔っ払って作ったクソゲーの最弱ザコキャラな私  作者: くまのき
走るのは嫌いだけどなるべく走れ編
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大食い鬼さん(ふーどふぁいたー)

 超・鬼喫茶ホトケ。


 鬼なのか仏なのか分からない名称ですが、鬼人の里にある人気スポットです。

 鬼人の里に行く事をお友達に言ったら、情報通のマリアンヌちゃんが、


「あの店の『超・鬼クレープパフェサンデー』が絶品ですの……ああ、食べたい……パフェと言わずパンでも氷砂糖でも……はっ、何でもありませんわ。何でも……」


 と、食事制限でゲッソリした顔で教えてくれました。


「ずいぶん甘いモノに餓えてるみたいだけど。この前くれたお菓子、返そうか?」

「いいんですのよヨシエさん。あれはあなたがお太り……いえ、お食べになって……」

「ふーん。でもアタシ甘いモノそんなに食べないから、まだほとんど手を付けてないんだけど」


 と言って、マリアンヌちゃんに恨めしそうな目で睨まれていたヨシエちゃん。

 そのヨシエちゃんはお土産として、鬼の肉で作った、ビーフジャーキーならぬ鬼ジャーキーをご所望でした。

 そんなものは多分無いと思うのですが……一応探してみますか。

 無いなら、普通のビーフで作ったビーフジャーキーでも良いそうです。



 で私は今、その超・鬼喫茶ホトケにいます。

 予定より早く鬼人の里に到着してしまい、少し時間が余ったので、ミズノちゃんと二人で観光がてら来てみたのです。

 ちなみに、ここに来る前にちょっとだけ立ち寄ってみたお土産屋さんに、鬼ジャーキーはありました。

 名称が『鬼ジャーキー』なだけで、材料は牛肉でしたが……一応買っておきました。


「このクレープパフェサンデー美味し~い」


 さっそくミズノちゃんが、例のパフェだかサンデーだか分からない料理を、満面の笑顔で食べています。

 クレープ生地を器として、ソフトクリームが特盛に。その中や上にフルーツやチョコがたくさんトッピング。そしてクッキー生地の細長いお菓子がズドン。

 美味しそうです。実際ミズノちゃんは美味しいと言って食べてますし。

 そして私は……


「お姉ちゃんはお茶だけでいいの?」

「は、はい……食欲が無くて……」


 嘘です。滅っっ茶苦茶、食欲あります。

 今すぐ私も同じものを頼んで、むっしゃむっしゃと食べたいです。


「ああ、お茶が美味しいですぅぅ……うぅぅ……」


 私はお茶だけを注文しました。

 お店に入り、メニューに載っている写真を見てから気付いたのです。

 ダイエット中の私は、こんなカロリーの化け物を食べる事なんて出来ません!

 うう、来る前に気付いておけば……


「でもこれ、大盛り過ぎて食べれな~い。お姉ちゃん、食べるの手伝ってくれる?」


 ミズノちゃんは、女の子一人で大盛りパフェを食べるのがちょっと恥ずかしいのでしょうか、頬を染め、上目遣いで訴えてきました。

 なんと可愛らしい仕草。美少女過ぎます。

 私もこんな可愛らしい女の子になるため、ダイエットを頑張らないと……

 でも、食べ物を残すのは駄目ですよね。バチが当たります。これはどうにもこうにも仕方ないです。

 ここはクレープパフェサンデーを頂きましょう。


「あ甘ぁぁぁぁいいいい……うううぅぅぅ……」


 自分の意思の弱さに打ちひしがれつつも、久々に口の中に広がる甘味の世界に浸ります。

 悲しいような嬉しいような。

 あ、涙が出て来た。


「な、泣くほど? そこまで美味しかったの?」


 ミズノちゃんは若干引いちゃってます。

 でもしょうがないんです。数日ぶりのオヤツなのですから。

 私はしばしの間恍惚の表情を浮かべ、パフェの美味しさを堪能しました。


 そして数十秒後にやっと我に返り、涙まで流しちゃった事が少し気恥ずかしくなって、周りの様子を気にします。

 するとふと、隣のテーブルの会話が聞こえてきました。


「これ、二十個。追加。くださいな」

「にじゅ……? お、お客様。当店の超・鬼クレープパフェサンデーは一つ一つが大盛りでして。大柄な鬼でも一度に五杯が限界で」

「知ってる。さっきもう、十個。食べたし」


 何だか気になり隣を見ると、テーブル上に、大きめのお皿が山積みになっていました。

 ミズノちゃんが頼んだパフェが乗っているものと、同じお皿のようです。

 そのテーブルには、一人の女性が座っています。

 前髪から、二本のツノが控えめにちょこんと伸びています。鬼のお姉さんみたいです。

 真っ白な長い髪に、真っ白な肌。真っ赤な瞳。

 薄桃の地に、赤い花の柄を散りばめた浴衣を着ています。

 そしてこれは羨ましいとしか言いようが無いのですが……厚地な浴衣の上からでも分かる程、大きな大きな胸が。


「早く。お腹、空いちゃった」


 鬼お姉さんは無表情のまま言いました。

 カタコトというわけでは無く、単語単語は流暢なのですが、妙な所で息継ぎをする喋り方です。

 困惑するウェイターさんに、先輩らしき別のウェイターさんが駆け足で近づき、耳打ちしました。


「おい、言う通りにするんだ新人。この方は、竜の胃袋(ドラゴストマック)だ……!」

「竜の……? あ、あの伝説のフードファイター!? 失礼致しました!」


 よく分かんないけど凄い人みたいです。

 ウェイターさんは慌てて厨房に戻り、一分も経たない内に、とりあえず三つのパフェを持ってきました。


「いただき、ます」


 表情を崩さずにそう言って……直後、三つのパフェが見る見る間に無くなりました。

 尋常でない速さで食べきってしまったのです。

 パフェが次々と運ばれ、そして次々とお姉さんの口の中に消えていきます。

 あれよと言う間に、二十食を完食。合計三十食。

 私は唖然としながらその様子を眺めていました。


「ふう。太らないよう、腹八分目に、しておこう」


 あれで八分目なのですか……!?

 胸以外は痩せておられる、スタイルの良いお姉さんなのですが。

 一体どこにあんな量のパフェが入ったのでしょうか……? やっぱり胸ですか?

 などと驚いていると、鬼お姉さんがくるりとこちらを向き、目が合いました。


「おお、人狼だ。ここいらでは、珍しい。しかも子供の。もっと珍しい」


 鬼お姉さんが立ち上がり、こちらへ近づいて来ました。

 知らない人に話しかけられるのは、気まずいのですが。

 しかしこのお姉さん、どこかで見たような顔つきです。それに歩くたびに胸が凄い揺れてて、迫力あるやら羨ましいやらで。

 私はなんとなく目を背ける事もせず、ボケっとお姉さんの様子を見ていました。


「飴。食べる?」


 お姉さんは懐から飴を取り出しました。


「い、いただきます……」


 私がそう返事をすると、鬼お姉さんは私とミズノちゃんに飴を渡し、


「おー。よしよし。いい子だ。わんわん」

「あぅぅ……」


 私の頭を力強く撫でました。

 わんわんって……犬じゃなくて狼なんですけど……


「お姉さん、さっき店員さんに竜の胃袋(ドラゴストマック)なんて呼ばれてたね。ふふっ、面白いニックネームだね」


 ミズノちゃんが、貰った飴を舐めながら言いました。

 鬼お姉さんは、私の頭を撫で続けながら返事をします。


「ドラゴン。そのあだ名。単にあたしが、ドラゴンの血を、引いているから。それだけよ」


 返事をしながらお姉さんはやっと私の頭から手を離し、懐からもう一つ飴を取りだし口に入れました。

 どうやら自分も食べたくなったみたいです。


「あたし、クォーターなの。鬼と。エルフと」


 お姉さんは、指を折って数えます。


「それに、ドラゴン。あと人間」

「うわぁ凄い。珍しい組み合わせですね……あれ?」


 鬼人、エルフ、ドラゴン、人間のクォーター。

 そんな設定、どこかで聞いたような?


 それにこの白い髪、白い肌、赤い瞳。常に無表情。


 います。身近にいます。これとまったく同じ設定のお方が……



「こんな所にいたのか、探したぞ姉上」



 背後から、聞きなれた声がしました。

 振り向くと、ヴァンデ様のお姿が。


「おおー。弟。お久しぶり、ね」 


 姉上……弟……?

 ヴァンデ様の、お姉さん?

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